第2話 ドラゴンの古城

 腹が膨れたお陰か、久々にベッドで寝るお陰かいつもよりも意識が漕ぎ始めるのが早い。

 布団、気持ち良い……。

 グロウディの前ではああ言ったが実はかなり楽しみだ。あのドラゴンの元ではあるが住処。しかもその地下深くに城があったなんて。こんなあまり見ないシチュエーションにテンションが上がらない魔術師はまず居ないだろう。


「……楽しみ。」




『おーい、師匠。まだ寝てるのか?朝飯だぞー。』


 ……朝っぱらからうるさいなぁ。

 一応時計を確認するとまだ5時だった為、未だに扉を強く叩いて起こそうとするグロウディを驚かせようと排気口の中を使って火球ファイアーボールを運び、廊下で弾く。

 予想よりも音は大きかったが、まぁ俺の弟子だし、大丈夫だろう。

 服を着替え、廊下に出るとグロウディの姿はなく、廊下は案の定真っ黒になっていた為、水魔法で掃除してから食堂に顔を出す。


「フィウルーティ、あの返事の仕方は酷いだろ……。」

「喧しい。まだ5時なのにドンドン扉を叩くお前が悪い。……大体、この城は海底にあるから音も響き易い故にお前が思っている以上に俺の耳に届くノック音はかなりうるさい。」

「ひっでぇ……。相変わらず容赦ないな。」

「……お前なら簡単に弾けるはずだが。」


 愚痴を垂れるグロウディを放ったらかし、パクパクと料理を食べてしまう。


「ご馳走様でした。……ほら、行くぞ。」

「おう。何があるかな~♪」




「おおー!予想以上に中広いんだな!」


 グロウディは罠が多いと言っていたが、まぁ簡単な話、そこまで興味をそそられなかったので動力源ごと爆破すれば丸く収まった。

 ……何故かグロウディは避けなかったが。何で避けなかったんだお前。

 今は例の城のホールにまで潜入し、しばらく放置されていたにも関わらず、綺麗なその内装に少々感動している。


「おお……。何百年と経っているのにこれ程までに美しいとは。何とも―――」

「今お前が魔法で時間巻き戻して綺麗にしたんだろうが……。」

「俺は右の通路を行く。この先に図書室があるんだ。価値があるない関係なく全て掻っ攫い、不要であればシルヴァスの地下にある競りにでも掛けてしまおう。」

「なあ、キッチンは何処らへんにあるんだ?」

「左の通路を真っ直ぐ行って突き当り。」


 それだけ答えて足早に図書室の扉を開ける。

 ここに住んでいた者が几帳面だったのか、綺麗に整頓され、タイトル順に並べられているので一気に異空間へと収容する。

 これだけあれば1つくらいは新しい発見があるだろう。

 読むのが楽しみだな。

 新たな知識にわくわくしながら今度は宝物庫へ向かうと丁度逆側の通路からグロウディが走ってくる。


「グロウディ。」

「なぁフィウルーティ!聞いてくれよ、ドラゴンの肉を使ったレシピが沢山見つかったんだ!ここに住んでた連中、何者なんだろうな!ドラゴンなんて、俺でも滅多に獲れないのに、凄いな!」


 ドラゴンの肉……?


「……そういやドラゴンの関する本が多かったな。」

「俺も後で読んで良いか?」

「傷付けたら許さん。……それよりも。」

「おう!フィウルーティは何割欲しい?」

「……別に宝物に興味はないからな。魔道具と売却用に幾つか、って所か。だがまあ、ここでやるより我が家でやった方が良いだろうな、選別は。……いつの間にかお前の帰る場所にもなってるが。」

「しょ、食事作ってるし情報も知識も共有してるから良いだろ💦質問にも全部答えてるし💦」

「別に責めてはいない。事実と結果を並べただけの戯言だ。……では、私が回収する……と言う事で良いのだな?」

「ああ!フィウルーティの異次元に転送する魔法、まだ習得出来ないからな!」

「……低脳。」

「だって理屈が分かんねぇんだよ……。」

「とりあえず、開けてくれ。」

「おう!」


 グロウディは嬉しそうに、楽しそうに笑ってから扉を開ける。


「……おお。これは。」

「凄い量だな!俺、こんなに沢山宝物の詰まった宝物殿見た事ないぞ!」


 グロウディの言う通り、宝物殿は異空間を利用して作られているらしく、城の構造上ありえないくらいに広い空間だった。

 ……国1つが入っていてもおかしくないな、これは。


「……売り捌くのも、整理するのも一苦労だな、これは。……しかし、何が出るか分からんからそれも一興、か。」

「フィウルーティ、早く早く!」

「分かっている。」


 先程展開した転送魔法を展開し、言葉の通り、山のようにある財宝を異空間へと収納する。

 どうやら数が増えればそれに合わせて空間が増える物だったらしく、財宝を全て収納し終えるとただの何もない一室へと変化している。

 ……ふむ。


「素晴らしいな、この魔術は。これは……竜の魔術だな。」

「人間じゃないのか?ほら、エルフとか……。」

「あの壁に描かれている模様は全て竜の言葉だ。……どうやら、大昔にここには竜が住んでいたらしいな。だが、何らかの自然現象によって城ごと山の中に埋まってしまったか、何らかの現象により城を覆うように山が出来てしまったんだろう。」

「……?なら、何でドラゴンの肉を使ったレシピが?」

「ドラゴンは誇り高く、気高い種族が故に飛べない者、魔法が使えない者、言葉を理解出来ない者、とその当時の王の基準に達しない同胞を食べる習性がある。……プライドが高いが故に欠陥品は許せないんだろうな。さっき時間を巻き戻した時に見えたがこの城の地下に大きな巨大空間があって、白骨化したドラゴンの骸が転がっていた。……後で回収して武器でも作ればそこそこの値段で飛ぶように売れるだろうな。」

「おお!フィウルーティは武器も作れるのか?」

「まあ、不可能ではないが好きでもない。ただの暇潰し程度だ。……そうそう、大分時は経っていたが時間を戻せば良い出汁が取れるぞ。」

「ドラゴンの出汁か……。それでラーメンでも作るか!」

「料理はお前の分野だ。勝手に使え。……さて、帰るか。」

「そうだな。骨、忘れないでくれよ?」

「ああ、分かってる分かってる。」

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