6.1 おい美少女、その顔もだめだ

 まあそうは言っても現実問題としてはナシですね。

 せめて10年とかだったら……まあいいや、とりあえずこの話は置いておきましょう。

 

 表向きはお見合いまでつつがなくこなした上で、逃亡はその返事をする頃合いに時期を見計らって、ということになっています。


 そのお見合いの日。

 

「なんかおまえら……気合い入ってるな?」


 私とベルちゃんは朝念入りに体を洗い、アロエの葉を剥がして顔にぺっとりはりつけたあと、手元にある中で一番かわいい服を奪い合ってこの場に臨んでいます。


 あ、服の奪い合いはきちんと平和的に解決しました。着てみたら胸がきつい、とベルちゃんが諦めてくれたので。けっ。


 イケメンも楽しみですが、少し機嫌が悪い巻くん可愛い。ベルちゃんもわりと同じ気持ちだと思います。


 巻くん、君はいろいろ足りていないのだ。いい加減分かれ。


 約束は午前11時。


 その10分ほど前でしょうか。おつきの人たちとともに本日のお見合い相手であるエルさんがいらっしゃいました。


「本日はどうぞ宜しくお願いします」


 おつきの人が丁寧に挨拶してくれます。

 

 あちらさまも今のところは紳士的です。

 冒頭から全開で脅されたらどうしよう、と少し警戒していたので安心します。


 お見合いはエルさんの紹介から始まります。ルーフェの村がいかにすばらしいかとか、父上の功績がすごいとか、エルさんの高い知性がどうだとかなんか言っていた気がしますがどうでもいいです。


(クオリティたかっ! 写真どころじゃないんですけどっ! なにこのイケメンほんとに生きてるの!? あ、今動いた! ほら、今動いたよベルちゃん!)

(あああっ! あああああああぁっ!)


 女子2人大興奮。

 ……か、かかかかっこいい。


(サインとか握手とかしてもらえるのかな……あ、こういうかんじか。アイドルとか今までちょっと馬鹿にしててごめんなさい。これはしょうがない、全力で推すしかない。ねぇ、ベルちゃん聞いてる?)

(はあぁぁ! あああああぁっ!)


 私も相当アレだけどベルちゃんはもう原型を保っていません。

 おい美少女、その顔もだめだ。昼間っから18禁の顔をするな。よだれふけ。

 

 エルさんのおつきの方が少し困った顔をします。

 

「あの。聞いてます?」


 もちろん聞いてません。

 ちょっと黙っててもらえませんか。


 エルさんが遠慮がちに口を出します。


「もし宜しければ2人で少しお話しませんか?」


(しゃべった! イケメンがしゃべった! 動くだけじゃないよ、これしゃべるよ! どうしようベルちゃん!)

(ほあっ! ほあああぁっ!)


 いつまでも返事が返ってこないことに不安を感じたのか、丁寧に確認を求めてくるエルさん。


「あの……いかがでしょうか?」


「はい」

「はい」


 今度は二人の返事が綺麗に揃いました。


 いやいや、ベルちゃんは関係ないよ?

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