5.3 お見合い写真

 ベルちゃんの見立ては当たりました。

 

 翌日、ルーフェ村の使者と称する男がお見合い写真を持ってきました。


「わたしどもとしてはできるだけ友好的にお話を進めさせて頂きたい」


 いけしゃあしゃあと口上を一方的に述べ、また改めて、と帰っていきます。


 世の中に気の乗らないお見合い話というのも多々あるのでしょうが、軍隊で恫喝されるのは比較的レアな気がします。


「エル・ノフケ・イーメン。ルーフェ村の村長の息子だな」


 相手が何者か、巻くんが説明してくれます。

 

「承諾すると村に閉じ込められて4年後に世界滅亡?」

「ああ」


「拒否した場合は?」

「村に閉じ込められて4年後に世界滅亡だな」


 こぴぺだ。結果は一緒なのですね。


「と、いうわけでまずなんとしても包囲を突破して逃げねばならない」

「難しそうだねぇ」


 ぴら。

 とりあえずお見合い写真を開きます。


「どうした?」


 固まる私にけげんな顔をみせる巻くん。

 横からのぞき込んだベルちゃんが揃えた手を口にあててほあー、って顔をします。


「ナガイ様、なんですかこれ。……すさまじくイケメンですね」


「イケメンだね、ベルちゃん。アイドルみたい」

「あいどる……ですか?」


「あまりにもイケメン過ぎて握手するだけでいっぱいお金がもらえちゃう人たちのことだよ」

「なんと! 一生食うに困りませんね。そんなオプションまでついているんですか……」


「……」

「……」


 ため息をつく女子ふたりの横でイケメン巻くん(※一般人たる私の交友範囲に限定された上での、あくまで個人の感想です)が私を見ます。

 

「……なんか嬉しそうだな?」


「そんなことない……ともいえるようないえないような?」

「おまえが竜を倒さないとどっちみち世界ごと滅ぶんだぞ?」


「でも4年は持つんだよね? 太く短く生きるならこれはこれで……ねえ、ベルちゃん?」

「アリですよね、ナガイ様」


 ベルちゃんが同意してくれます。

 

「……ベル、おまえまで何を言ってる」


「だってさー。どうせ巻くん私のこと好きにならないしー」

「確かにマキ様、馬鹿にしてるんじゃないかってぐらい色事に疎いですからねー」


「苦労してもどうせ手に入らない巻くんより、こっちのが手っ取り早くていいよね。 ベルちゃんどう?」

「しかも握手するだけで生活に困らないんですよ。夢のようじゃないですか。マキ様はもうナガイ様に差し上げますからがんばって竜倒してきて下さい。その間わたしはこのイケメンといちゃいちゃしてます」


「えー、ベルちゃんずるいよ。だいたい指名相手は私だよ?」

「そんなの適当にごまかせますよ。血行がよくなる紋章でも見えるところに貼っておけば十分それっぽいじゃないですか。私がナガイ様のかわりをやります」


「おまえら……」


 巻くんが呆れています。いつもと立場が逆になったのはわりと珍しいような気がします。

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