2.4 そのままむちゅっとされました
校門の少し先、屋外のバレーコートがある手前あたりはフェンスがおおざっぱになります。巻くんはフェンスをしゃっと乗り越えて、そのあとのてー、っと私を待っています。
私もよじよじと昇ります。フェンスの上部にまたがって、足をおそるおそるフェンスにかけながら、最後巻くんに支えてもらって着地します。
部室棟と校舎の渡り廊下、その脇の非常用の出入口から校舎に入ります。ここはいつも開いているのです。
普通なら夜の校舎は怖いのですが、巻くんもいるので大丈夫。うきうきです。さんざん通った自分のクラスに入り込み、窓際の席につきます。
「ついたぞ。これでいいか」
「うん。……早く帰りたいの?」
「いや、おまえが満足しているならそれでいい。それにもう下校しきれるような時間は残ってない」
23時53分。
「本当に大丈夫だな。したいことは残ってないな?」
「うーん。強いて言えば……」
言いかけてからしまった、と思います。
つい妄想をほとばしらせかけてしまいました。
「強いていえば?」
「なんでもないです」
「言え」
「言えません」
「なんだ」
「……できればそちらで察して頂きたいなー、と」
無意識に唇をくりっと袖で拭いてしまいます。
「キスか」
「そういう直接的な物言いはどうかと」
「キスだな」
「こちらに言わせるのもいかがなものかと」
私の両耳の脇、窓に巻くんが両ひじを置きます。
顔ちかい。えらくちかい。
そのままむちゅっとされました。
ためらいないな、おい。
きゃー、舌入ってきた。……でもって止まった。
しょうがないのでくるくる舐めてたら抱きしめられました。
そのままぎゅーっとされます。
ああ、これはまずい。
いやまずくないんだけど。巻くんが予想外に力強いのです。
ちょっと痛い。いやでも痛いとかいったら離されちゃう。それもやだからもうちょっと我慢。大丈夫、ゆっくり呼吸すればもうちょい耐えられる。
しばらくはどうにか耐えていたのですが限界がきてしまいます。
「ちょっと痛い」
唇を離してこそっとつぶやきます。
「ああ、すまん」
巻くんが体を離してしまいます。
あー、やっぱそう来るよなぁ。少し力を抜いてくれればよかっただけなのに。まあでもいっか。
巻くんが時計を気にします。
「23時59分。やることはやった」
ちょっと微妙な物言いですね。
この辺は今後改善を望みたいところです。
でも好き。
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