第4話 あいどる②
結果的に言うとわかりやすくハマった。よくよく考えたら可愛い女の子が面白い芸人さんと全力でバラエティーをしているのが面白くないはずなかったのだ。そして暇な僕は番組を全て見直してしまった。
さて、売れているアイドルというのは素材がもともといい上に売り方もうまい。ふとYouTubeのおすすめ欄を見ると僕がハマっている某坂46さんのドキュメンタリー映画の予告が目に入り、見てみた。その動画はたった1分半のものだったのだが、驚いたことに僕は泣いてしまった。僕は諸々のものに感動はする方なのだが、なんか恥ずかしくてあまり泣かなかったのにその1分半の動画は僕の涙腺を本気で殴りにきたのだ。
一通り泣いた後に涙の理由を考えてみた。
「何かの作品を見て泣く」という行為を小学校時代の「火垂るの墓」でしか経験してこなかった僕は自分に少し困惑していた。
そんな僕が出した結論は「同世代だから」という単純明快な答えだった。
彼女たちの多くは理由は様々であるが「憧れたもの」になるための権利を「勝ち取りに」オーディションを受け、そして受かっているわけである。その時点でおおきな「アクション」を起こしているわけである。
そしてその後も受かったことに甘えるでもなく、可愛さ、歌唱力、ダンスの能力等を他人に比較されながらもファンの前ではそんな悩んでる素振りを見せずにパフォーマンスをするのである。とんだプロッフェッショナル集団である。それも同世代の人たちが、である。
その後も色々調べてみた。ある子は先輩を差し置いてセンターに選ばれたことを申し訳なく思い自分と向き合い、ある子は自分の性格が嫌だと告白し、ある子は自分のポジションに居心地の良さを感じていることを自分で恥じ、そしてこれらの悩みをメンバー同士で共有し、そして支え合う。
その時、なんていうんだろう、「好き」というよりは確実に尊敬が強くなってしまった。まあまあ厄介なオタクの誕生である。
このアイドルということに関わらず、本気で何かに打ち込み、本気で悩む人はかっこいいと明確に思った。そういう人が流す涙は清らかで美しいことを知った。
今まで僕はこんなに綺麗な涙を流したことがあっただろうか。僕のものは大体は自分を守るためか、自己憐憫に陥っている時のものだった。
なんて虚しい人生なのだろうと、そう思ってしまった。僕は今まで大きなアクションを自分から起こしたことはあっただろうか。今までに無いのならこれから起こすしかない。このまま家にいてはダメだ、何か動かなければ。そう思って僕は家のドアを開けた。
しかし世はまさに大自粛時代。コンビニでカルピスを買って家に帰った。
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