勇者パーティーの末路と冒険者ランク2

脱出後のはじめての夜を迎える。

今まで寝袋があったとはいえ洞窟で寝ていたためちゃんとしたベットで寝るのは久しぶりだ。


選んだ宿屋は以前勇者パーティーとして泊まっていた宿屋ではなくちょっと離れにある癒しの雨という宿屋にした。

別に前のところが嫌だったというわけではなく単に満室だったので別の宿屋に泊まるしかなかったのだ。


一泊分の料金を支払い各自部屋に向かう。その後の記憶はなく。今までの疲れから解放られるように泥様にベットに沈んでいた。


目が覚める。やたらに外が明るい気がする。


とりあえず朝食をと下に降りることにした。


「おぅ。遅かったじゃねぇか。かなり疲れてたみたいだししっかり休めたか?」


「ん?あ、あー大分休めた感じがするな。それはそうと朝食はそっちの食堂でいいんだっけか?」


宿屋の親父の顔がこいつ何言ってんだって顔になる。


「何言ってんだお前。もう昼過ぎだぜ?


「え?」


少しの間だったが時が止まっていたと思う。親父の顔を見つめて俺は固まっていた。


過ぎてしまったものは仕方がないので朝食兼昼食を食べることにする。


「親父さん昼食ってどこで食えば良いんだ?」


「それなら目の前の定食屋に行ってやってくれ。あそこなら安くてうまいからな満足できると思うぞ。」


「そうかありがとな。」


そこでもう一つ疑問を思い出す。


「それとなんだがフィリア・・・俺の連れは見てないか?」


「ん?あの嬢ちゃんは見てないな。朝からずっとここにいるから多分まだ部屋に居るんじゃないか?」


珍しいなフィリアが俺より遅いなんて。

それも仕方がないか。


「わかった。」


俺はフィリアを起こしに部屋に向かう。


部屋につきノックをするが返事がない。


もう一度ノックをし声を掛ける。


「フィリア俺だ。もう昼だぞ。飯食いに行こう。」


しかし返事はない・・・と思ったらとことことこと足音。そしてガチャっと鍵が開いた。


扉を開けるとそこにはフィンがいる。


「お前が開けてくれたのか?」


「きゃん!」


どうやらそうらしい。その小さな手と足でどうやって開けたのやら。


俺は悪いと思いながらも部屋に入りフィリアを起こすことにした。


「フィリア、昼だぞ起きろ。」


俺はそう言い体を揺らすがいっこうに起きる気がしない。

余程疲れが溜まってたんだろうな。


休ませてやりたい気もするけど起こさなかったら絶対怒ってくるだよな。以前そうだったし。


しょうがないので頑張って起こすことに。


しかしいくら揺すったりしたところで起きる気配はないしどうしたものか。


「きゃん!」


フィンの鳴き声がするのでそちらを向くとフィンは何か紙を加えて尻尾を振っている。


「ん?これを読めば良いのか?」


「きゃん!」


どうやらそうらしい。


なになに・・・どうやらフィリアの日記?の様なものらしい。

いやこれ読んじゃダメじゃね?

けど気になる。最後だけ読んでみるか?


ごくり。


喉を鳴らす。

一度フィリアを見て起きてない事を確認する。うん。大丈夫。


俺はそっと日記をめくった。



5月12日


ようやく奈落のダンジョンから脱出することができた。勇者にアストが突き落とされた時はいつの間にか体が動いてたけどあの時の私を本当に褒めてやりたい。

あの時のアストがいなくなってたらきっと私は死んでいたと思う。アストのいない世界。アストの隣にいれない瞬間。アストを助けれなかった自分。もしそうなっていたらと思うと私ってそうなんだと思う。うん。好きなんだ。私はアストが居ないと生きていけない。愛してる。けどまだ言えない。女のわがままかもしれないけどやっぱりアストに好きって言われたい自分がいる。だからこの想いは秘めておく。でももしアストも同じ気持ちだったら嬉しいな。


ここで日記は終わっていた。


俺はふとストレージから指輪を取り出す。


親愛の指輪。

愛の指輪。対の指輪を持つものと念話が使える様になる。又本体の所有者のファーストスキルの劣化スキルを対の指輪の持ち主は使えるようになる。

愛の絆の出来た異性に指輪を複製する。

愛が消えれば複製の指輪は消滅する。


堕天使討伐の際に出てきた指輪だ。

あの時にはすでに二つになっている。


つまりそういう事だろう。


その時ふと背中に冷気が流れる。

その気配は堕天使すら超えている。

目の前にいたフィンもかなり怯え震えている。ガクブルだ。

俺は恐る恐る振り返る。


そこにはベットで寝ていたはずのフィリアが立っていた。


「嫌な感じがして起きてみれば人の日記を勝手に!」


「いやこれは違うんだ!そ、そう!フィンが勝手に持ってきたんだよ!」


「きゃ、きゃん!?」


嘘だろご主人!とでも良いだけな目で見てくるが俺はすまないと心の中で謝るだけだ。俺は助かりたいからな。


「それとこれとは関係ないわ!持ってきたからと言って読まなければ良いでしょ!」


いやぁごもっとです。


俺は指輪をそっとポケットにしまいこれから起こるであろう地獄を受け入れることにした。


・・

・・・

・・・・


俺はあの地獄を乗り越えて定食屋に来ていた。


何があったかは聞かないほうが身のためだ。君たちのためにも言わない方がいいだろう。君たちってだれか知らないけど。


そしてすでに朝食を超えさらに遅い昼食を食べている。

親父さんの勧めもあって来たが二人分銀貨2枚でかなりの量がやってきてさらに味も美味しかった。安くてうまくてガッツリ食えるいい店だと言える。


食べ終わると次は冒険者ギルドへ向かう。代金の受け取りだ。相当な量があったから大変だったろうな。


と思いつつギルドまで歩く。その最中まだフィリアはご機嫌斜めだ。


「フィリア俺が悪かったよ。謝るから機嫌直してくれ。」


「・・・ふん。」


いっこうに話は聞いてくれないが着いては来るのでそのままギルドについてしまった。


中に入りユリのところが丁度空いてるので彼女の元にむかう。


「こんにちはユリ。」


「あっアストさんこんにちは。もしかして代金の受け取りですか?」


「うんそうだよ。」


「ちょうどよかったです。先程計算が終えてお金の準備が出来たところだったんですよ!」


ちょうどいい時に来た様だ。


「それでですね。アストさんが良ければギルドの口座の方に入れるという方向でどうでしょうか?かなりの量になるんで」


ストレージ持ちの俺にはあんまり関係ないんだけどまぁ冒険者ギルドには世話になってるしいいかな。


「いいよ。けど8.2で分けて2の方を現金でくれるかな?」


「わかりました。その様に手配しますね。それで金額なんですけど。10億リムになりました!それでは少々お待ちください。」


つまりきんか10万枚さらに言えば虹金貨が十枚もってことか!

かなり高額になったな。


作ろを携えたユリが戻ってくる。かなり重そうではある。


「よいしょっと。ではカードをお預かりしますね。」


俺はフィリアからもカードを受け取り二枚渡す。


「半々で入れてくれ。」


「わかりました。」


・・・


「ではカードを返却します。それでこちらが虹金貨一枚と金貨1万枚です。」


俺はカードを受け取りお金をストレージに取り込む。


「確かに。」


俺はストレージで枚数を数えてちゃんとある事を伝える。



金も受け取ったので帰ろうとした時にユリに声をかけられる。


「あっアストさん。そういえばもう新しくパーティーは組まれないんですか?」


パーティー・・あんなことがあって俺は少しびびってしまっている。また裏切られるんじゃないのか?と


「パーティーか・・増やした方がいいんだろうけどあんなことがあったからな。」


「やっぱりそうですよね・・・あっ!そうだ!」


ユリは何かを閃き両手を合わせる。


「もしよかったらなんですけど奴隷なんてどうでしょうか?奴隷なら裏切られる心配もありません。」


奴隷がでも奴隷はこの国では結構法律がしっかりしてるから数自体少ないんだよな。それこそ王都でしか売られていない。


「けど買うにも資格?がいるんじゃなかったっけ?」


「推薦状ですね。それなら冒険者ギルドが出しますので王都にさえ行ければ買うことは可能だと思います。」


「いいのか?そんなこと決めて。」


「大丈夫です!私がここで書きますけど、名義はギルドマスターにしときますんで何かあったら責任はギルドマスターが取ります!」


いやいや大丈夫じゃない気がする。


「いや、一応確認して来てくれ。可哀想だろ。」


「わかりました。」


彼女は「ちぇー絶対大丈夫なのにな~」と言いながら執務室に向かって行き5分ほどで戻ってきた。


「お待たせしました!こちらが推薦状です。ちゃんとギルドマスターに書いてもらいましたので問題ありませんよ!」


どうやらあの短時間で書いてもらったらしい。


「ありがとう。早速王都に行ってみようと思うよ。」


「わかりました。では馬車などが必要になりますね。」


そういうと彼女は紙に何かを書き出す。


「ではこちらがコルトン商会への紹介状とこちらが北門外にあるホーリエ牧場への紹介状になります。」


「なにから何まで済まないな。」


「どういたしまして。リーストの街としてはいつでも歓迎しますのてまたいらしてくださいね?」

 

「あぁまたいずれくるよ。」


「ありがとうございました。」 


「きゃん!」


俺とフィリアそれとフィンはギルドを後にして買い出しに向かった。

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