勇者パーティーの末路と冒険者ランク

魔法陣の先は見知った森バオルの森だった。どうやら割と街に近いところに着いたようで安堵する。


これが全く知らないところだったらまた苦労することになっていた。


奈落のダンジョンを攻略中滞在していた街リスートの街に向かうことにした。俺たちがどういう扱いになってるか気になっているし久しぶりにゆっくり休みたいというのもあった。


「どうやらバオルの森みたいだな。」


「そうだね。よかったよ。浅いところみたいだしここからならすぐにリスートに着くね!」


「だね。それに帰りはフィルに乗って帰ろうかと思ってる。いいか?フィル」


「うぉん!」


フィルは肯定し腰を落として乗りやすいようにしてくれた。


先に俺が飛び乗りフィリアをエスコートしてフィルに乗せる。


「それじゃフィル早くなくていいから街に向かってくれ」


「うぉん!」


フィルはそこまで早くないペースではしりだす。


それでもそこまで遠くないのですぐにリスートの街の門が見えた。


「ねぇアスト門に人が集まってない?しかも冒険者っぽいよ?」


「え?あっ本当だもしかして魔物の襲撃と勘違いされてる?俺たちが見えてないのかもしれないな。」


俺は立ち上がり声を出す。


「おーい俺たちは人だー攻撃しないでくれ~」


どうやら俺の存在に気づいたのか馬に持った人が一人近づいてくる。


「冒険者の方ですか?」


おそらく駐在騎士であろう人が声をかけてくる。


「あぁ冒険者アストです。こっちがフィリアでこっちが従魔のフィンです。」


「そうでしたか。安心しました。しかしちょっとその大きさは入れないかもしれません。」


「あっそれなら大丈夫ですよ。門まで行けば小さくなるんで。」


「「え?」」 


騎士だけではなくフィリアも疑問を上げる。


「フィンは大きさをある程度自由に帰れるので子犬くらいの大きさならなれるんですよ。なフィル。」


「ウォン」


「そうなんですねなら大丈夫です。では自分についてきて頂けますか?それで問題なく街に入れます。」


「わかりました。」


騎士は街の方向へ進み俺たちもそれについていく。


門に着きフィンには小さくなってもらう。


その小さな姿にフィリアは


「か、かわいい!」


メロメロになっていた。


「えーとアストさんはこれからどうされるんですか?」


騎士が問う。


「冒険者ギルドに行くつもりですよ。」


「そうなんですねわかりました。身分証だけ拝見させてください。」


「はい。」と冒険者カードを見せる。

メロメロになっているフィリアも我に返してカードを出させる。


「はい。ありがとうございます。」


門の近くの大きな建物。それが冒険者ギルドだ。


俺と小さくなったフィンを抱えたフィリアは中に入る。



冒険者ギルドに入ると真っ昼間というのに酒場には人が溢れていた。その分今から依頼をこなそうとするものはほとんどおらず空いていたのでちょうどいい。


幸いにも俺たちのことに気付いてないのか騒ぎになることは無かった。


俺たちはすぐに受付カウンターまで進んだ。


「いらっしゃいませ。どのようなご用件でしょ・・う・か?・・・」


受付嬢の彼女は幽霊でも見るように信じられないと顔にする。


「おーい大丈夫か?」


「あっすいません。本物なんですか?」


「本物ってなんだよ」


俺は分かっているが疑問という形で問いかける。まぁどうせ俺たちは死んだことにでもなってるんだろうな。


「いえアストさんとフィリアさんが亡くなられたと報告がありましたので・・それにしても生きていて良かったです。」


彼女は涙ぐみよかったと口にする。


後ろからは「おいあのガキユリちゃんのこと泣かしてやがるぜ締めるか」などと物騒な声が聞こえる。


この場はさっさと離れるに限る。


「色々話も聞きたいしギルドマスターと話せるかな?」


「わかりました。ぐず。ギルドとしてもお話を聞きたいので個室に案内します。」


そう言われ彼女ユリについていく。


冒険者ギルドには機密性のあるものや貴族からの依頼の時などのために個室が用意されている。普段は表で行うがまれにこちらを使うこともある。


「ではギルドマスターを呼んで来ますので少々お待ち下さい。」




小さくなったフィンを両手に抱えたフィリアと共に三人がけのソファーに座る。


少し待つとガタイのゴツい男性が入ってくる。その後ろにはお茶を人数分持ったユリの姿もあった。


ガタイのいい男性はガリッツ、かつて鉄城と呼ばれた元Aランクの冒険者であり冒険者ギルドリスート支部のギルドマスターだ。


「久しぶりだなアストにフィリアの嬢ちゃん。まずはよく無事に戻ったな。」


「まぁ、色々あったがなんとか、な。」



「それで結局何があったんだ?あいつらからはお前らが51層で戦闘中に奈落に落ちたため生存は絶望的だって報告を受けてたんだかな。」


やっぱりそんなところだろうとは思った。


勇者にパーティーを追放すると言われ切り捨てられ奈落に落とされたこと。


それから奈落に落ちたが結界術でフィリアが助けてくれたこと。


スキルのことは隠してたまたま見つけた武器が強力で身体能力の強化が起こりダンジョンの魔物を倒せたこと。


そのおかげでダンジョンを攻略して脱出出来たことを教えた。


「そうかそのようなことがあったのか」


強面なギルドマスターがむむむと唸る。


「あいつらは勇者の器じゃねぇこの事はしっかりギルド本部の方にも伝えておく。」


真剣な顔つきだったガリッツだがふと表情が緩む。


「まぁすでにあいつらAランクに降格してるけどながっはっはっは!」


「どういうことだ?」


「ん?あいつらお前らが居なくなって新たにメンバーを入れたはいいがなその後三回連続のクエスト失敗をしてな、Sランクに相応しくないってなってな、本部から降格が言い渡されたって話だ。」


なんと俺はともかく守りの要で回復のスペシャリストであるフィリアが抜けた穴はデカかったのだろう。


まぁ俺からしたらざまぁーみろって感じなんだけどな。


「それからさっきの奈落のダンジョン攻略の話本部に伝えておくからお前たちはSSランクに昇格するだろうな。」


SSランクだと!Sランクですら限られた天才しか慣れないと言われSSランクになるには圧倒的に実力を見せないといけないと言われるあのSSランクか!その上にSSSランクというのもあるが今の時代にはおらずその昔異世界から召喚された勇者が圧倒的な力を持っていてSSランクを軽く凌駕していたことからこのランクが作られたそうだ。


「本当にいいのか?」


「問題ないだろう。それにその奈落の魔物の素材を買い取りたいって言うのもあるんだな。」


確かに奈落の魔物の素材は地上や他のダンジョンの魔物に比べてかなり上質な素材だろう。


俺にはいらないし売ってしまっても問題ない。それにこれを機に冒険者のレベルが上がってくれると嬉しいしな。


「わかった後で売れる分を解体場の方に持っていくよ。」


「おっそうか!ありがとな!話は以上だ。下でユリからギルドカードの更新と解体場で素材を渡してくれ。」


「わかった。」


これでギルドが潤うぜ!と廊下で喜びを表しながら自分の部屋に戻っていった。それを俺たちに聞こえるように、ユリはそれを聞いてはははっと気まずそうな愛想笑いをしていた。


「では私たちも向かいましょう。」


そういうユリについて行きしたの受付で処理をこなすを


「こちらが新しいギルドカードになります。」



そう言って渡されたのはオリハルコンで作られたギルドカードだった。

オリハルコンはカードの大きさでも相当な額するだろうにそれだけSSランクには期待しているのだろうな。


カードを受け取り懐にしまう。

フィリアはどこか申し訳なさそうにしているが二人でなったSSだ納得してもらうしかない。


「カードありがとうな。解体場に行ってくるよ。」


「はい!ありがとうございました!」


笑顔のユリに見送られて解体場に向かう。


解体場はギルドの裏手にあるギルドとほとんど大きさが変わらない倉庫全体だ。

大きな魔物はここに直接運ばれて解体される。

解体された魔物は鑑定されて金額が決まり冒険者に支払われる形になる。


解体場に入ると少し血の匂いと生臭さがある。ダンジョン等で慣れてるとはいえあまり長く痛いとは思えない。


「ベルモルさんいる?」


入ってすぐの場所にいた若い解体師に声をかける。


「お頭なら奥で休憩中ですよ。」


「ありがとう。」


そのまま進み奥の休憩室に入る。


「こんにちは~。ベルモルさんいる?」


「お!オメェアストじゃねぇか!生きてたってさっき聞いてたがまた会えて嬉しいぜ!それでここにきたって事は解体なんだろ?任せてくれ!」


ベルモルは近寄ってきてバシバシと肩を叩く。


「ベルモルさん暑苦しい。」


「おっとすまんすまんつい嬉しくてな!」


悪い人ではないんだがいかんせん暑苦しいからなこの人。


「よしそれじゃ早速魔物を出してくれるか?」


「わかった。」


そう言って次々と魔物を取り出す。


「相変わらずすげ~量が入るスキルだよな。・・・てまじでどんだけいんだよ。ちょっストップストップ!溢れちまう!」


ベルモルは悲鳴を上げて留めてくる。出しすぎたか?


目の前には山積みになった魔物の死体があった。


「出しすぎたぜ。流石にこの量を今日中はむりだ明日の夕方には終わらせるからまたそん時代金を取りきてクレねぇか?」


「いいよ。流石に量が多いからね。遅すぎなければ全然待つから。」


「すまねぇな。」


よし!と気合を入れてベルモルは部下たちに激励を飛ばす。


「オメェら!このギルド始まって以来高品質!そしてこの量の解体だ!気合入れていくぞ!」


「「「うぉーー!」」」


解体師達が一致団結する。


解体師達はほんと冒険者より熱血だと改めて認識させられた。


そんな事をそそくさと解体場を出て行った。

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