6 真っ暗な夜の中

 真っ暗な夜の中


 ……落ちる。

 ……とても、深い真っ暗な穴の中に。

 真っ逆さまに落ちていく。

 君を追って。

 ……どこまでも、落ちていく。 


 本田星の気持ち


 今、星は真っ暗な世界の中にいた。そんな見知らぬ不思議な世界の中で不思議な相棒(パートナー)と一緒に旅をしていた。(それはいなくなった海を探す旅だった)


 ……海。あなた知らないでしょ?

 私がどれくらいあなたに憧れているか。

 私がどれくらい、あなたのことが大好きなのか、あなたは絶対に知らないでしょ?


 それが私の自信なんだよ。

 絶対にあなたに追いついてみせる。あなたの横に並んでみせる。私はそれができる。その自信が私にはある。

 だって私は、こんなにも、海。あなたのことを大切に思っているから。

 あなたに本当に憧れているから。

 あなたのことが、本当に大好きだから。


 私の手の振りかたも、足の動かしかたも、私の呼吸の仕方も、私の走るフォームは全部(ううん。もしかしたら、生活の全てかもしれないけれど)あなたの真似なんだよ。

 私はあなたの偽物なの。

 でも、ただの偽物じゃない。


 ……本物になりたいって思っている偽物。

 いや、違うな。


 いつか、本物を超えたいって思っている野心的な偽物なの。


 それが私の目標なんだ。どう? すごいでしょ? 私も成長したんだよ。いつまでも泣いてばかりいる私じゃないんだよ、海。私ね、あなたみたいに強くなりたいの。本当に強い人間になりたいんだ。そばにいる人を、手の届く場所にいる人を、本当に助けて、ううん、救ってあげることができるようになるくらい、海、あなたみたいに強くなりたい。私をあのとても深い場所にある絶望の世界から救ってくれた、あなたのように。私はもっともっと、強い自分でありたいと思うんだ。

 そしてそれが私をこんなにも大きく、強くしてくれたあなたに対する恩返しなんだよ。海。


 海。絶対に負けないよ。

 私は絶対に、あなたに勝ってみせる。

 正々堂々と勝負をして、必ずあなたを追い抜いてみせる。あなたよりも、『速く走ってみせる』。

 

 そして、今度は私があなたを助けられるような、そんな立派な人間になってみせるよ。海。どう? すごく素敵な目標じゃない? 私、立派な大人になりたいって表いるんだよ。それってさ、すごいことだと思わない? すごい形の変化。心の変化。私に中に起こった革命。あるいは、嵐のあとの晴れ渡った(ちょっと地形は変わってしまっているかもしれないけれど)新しい命の溢れる世界。風景。景色。まあそんな感じかな? (ごめん。あんまりうまく言えないや。やっぱり難しいね。大人になるってことはさ。本当に難しいよ)


 でもね、諦めないよ。

 私は絶対に私自身を諦めない。


 それが海とした『絶対の約束』だもんね。

 私は私を信じている。(そして、今も信じることができる)


 だから、海。


 私を信じて。(ちょっと頼りないかもしれないけどさ)


 絶対に、海が世界のどんな場所にいても必ず助けに行くから、絶対に自分のことを諦めないでね、待っていてね。海。


 星は走る。いつものように全力で。迷いもなく。ただ、まっすぐに。いつものように明るい、まるで本物の太陽のような笑顔で。(……あなたの元へ)

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