2 とても深い青色の海の中へ
とても深い青色の海の中へ
冬の季節
太陽の見えない、曇り空の日。
二人は今、学校帰りの駅のホームの上にいる。
星はホームに設置された椅子の上に座っている。海はその隣に立ったままで星と話をしている。
学校帰りに二人がこうして駅で会話をすることは、珍しいことではない。それは、とてもよくあることだった。
ホームの上にはたくさんの人たちがいる。
ホームに止まった電車の中からもたくさんの人たちがホームの上に降りてくる。そんな大きな人たちの流れの中で星と海は動かない。
まるで流れに逆らうようにして、ただ黙って、二人ともその場所にじっととどまり続けていた。
「どこか寄っていく?」と海は言った。
「うん。あったかいコーヒーが飲みたい」とにっこりと笑って星は言った。
「わかった。そうしよう」とにっこりと笑って海は言った。
それから二人は、駅前にあるおしゃれな喫茶店のところまで笑顔で二人で、ゆっくりと歩いて移動をする。
二人が駅のホームでじっと動きを止めている間に、灰色の空からは真っ白な雪が降り出した。
「綺麗」
その雪を見て、まるで本当の子供みたいな顔をして本田星はそう言った。でも海は、その雪を綺麗だとか、美しいとかそんなことはちっとも思わなかった。雪は雪だ。ただの自然現象でしかない。「本当だ。綺麗だね」と笑顔で星にそう言いながら、そんなことを心の中で山田海は思っていた。
駅前にある喫茶店『ほしぞら』
……ねえ、知ってる、星。
私ね、あなたにずっと救われてきたんだよ。本当に、本当にたくさん救われてきたんだよ。あなたはきっと気がついていないとおもけどね、私、あなたと友達になれて、本当に、本当によかったって、そう思っているんだよ。
二人で一緒にコーヒーを飲みながら、海は自分の前の席に座っている星を見て、そんなことを心の中で思っていた。
私は弱いの。あなたが思っているほど、強い人間じゃないんだよ。本当だよ。全然弱い。すごく弱虫なの。夜になるとね、よくないちゃうんだ。星には内緒にしているけどさ、毎晩のように私、泣いているの。変でしょ? まるで、小さな子供みたい。……ううん。違うな。私は本当に『小さな子供のまま』なんだ。
体は大きくなったけど、きっと心は小さいころのままなんだよ。星。あなたと出会ったときと同じくらいのとき。あのときからきっと、私の成長は止まっているんだと思う。
……だめだめだね。私は。
「海、今、なに考えているの?」
にっこりと笑って、めがねの奥から、本当に迷いのないまっすぐな瞳で、海のことを見ている星が、コーヒーカップを両手で持ちながら、そう言った。
その笑顔は本当に、ただ眩しかった。
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