深海千

エリー.ファー

深海千

 海の底には誰もが知らない生き物たちが住んでいます。

 その多くは、人間の目に触れることもなく静かにその生涯を終えますが、昨今の研究の成果により深海の生物たちの発見や生体の研究は驚くべきスピードで進んでいます。

 それは、人間にとって深海という場所が未だすべてを理解するには遠く及ばない深みを持つことの証明であり、またロマンを抱かせる存在であると言う事ができるのではないでしょうか。

 この海の生物かがく博物館では、大人から子供まで、海の生き物が好きな方から、まだよく分からないよ、という人のために分かりやすく説明をしていきます。

 すべての資料映像や解説、アクティビティを体験し終えた頃にはきっと海の生物たちのことが好きになっていることと思います。

 ですので今日は一日、どうぞよろしくお願いいたします。


 海の底には誰もが知らない新島さんが住んでいます。

 新島さんには多くの秘密があります。結婚しているのかどうか、子供はいるのかどうか、何の仕事をしているのか、など謎のままです。

 多くの研究者たちが寝る間を惜しんでその解決に乗り出しています。これは、日本だけの問題ではなくアメリカや中国、ロシアの研究機関も非常に興味を示しており、そこから分かるであろうことは今後の地球規模の問題を解決するにあたって必要な要素とることは言うまでもありません。

 完全な非日常的バイアスから始まる緩衝材としての役割を足された文化的、もしくは社会的な階層を多次元とした場合による気温、もしくは湿度の上昇から始まる始点、起点、終点の違いを詳細に記録するべきと感じています。


 海の底には誰もが知らないお前の仲間が住んでいます。

 分かってるだろ。

 もうおせぇんだよ。

 てめぇのことなんざ誰も見てねぇよこのクソ野郎。

 金盗んで、女連れて、嘘ばっかつきやがって、それで何か変化があるとでも思ってんのかこの野郎。ぶち殺すぞ、このクソ野郎が。

 いいか、もうお前は死ぬ。

 必ずここで命を落とすんだよ。

 分かるだろ。

 分かってるだろ。

 いいな。

 ここで終わりだ。

 お前は終わるんだ。

 諦めろ。

 てめぇのために多くの人間が動き回り、その上で全部が無駄になったんだよ。

 てめぇの頭で分かるか。

 次はないかもしれねぇ、とかじゃねぇんだよ。

 もう、ねぇんだよ。

 分かれ、バカ。

 いいか、このままここで口を割らないなんていう選択肢はお前にはない。あそこで呻いている何かがいるだろ。

 あれ、お前の母親だからな。

 分かってると思うが、こうなった以上、もうこっちも本気にならなくちゃいけなくなるわけだ。

 な、しょうがねぇよな。

 それは。

 もう、しょうがねぇんだよ。

 残念だけどな。

 俺だってお前のことを大事にしてやりたかったさ。なぁ、あの日の夜も同じベッドで寝たもんなぁ。お前ああいう時はそういう声になるんだな。


 海の底には誰もが知らない貴方が住んでいます。

 これ以上の会話はありません。

 えぇ、気づいていらっしゃらないかもしれませんが、今、貴方は自白なさいました。

 えぇ、事件についてです。

 連続幼女殺害事件。

 その犯人であると自供されました。

 録画していましたので問題なく証拠として機能することと思います。

 はい。

 何か一言御座いますでしょうか。

 え。

 海の底に、何かがいると。

 何かが住んでいる、ということですか。

 そんなことは誰も言っていませんね。

 おそらく、妄想を見ていたんでしょう。

 ご承知かと思いますが、私はあくまでプログラムされているだけですので間もなく、担当者が参ります。

 もうしばらくお待ちください。

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