弥生さんの日常part2
学生としての本文である勉学に励んだ後、昼休みになるといつもの五人で二つの机を囲んで各々弁当や購買部で買ったパンを持ち出しては食べながら話し始めた。
「そう言えばバスケ部はどうなの?今度大会でしょ?」
「バッチシ!俺らの部活、部員は少ないが精鋭だからな!そうだろ南雲」
「その通りです!」
弥生から振られた話題を大翔と南雲が答えてそのままどんどん話題を膨らませていく。
ちなみに川城高校は女子高校一校と普通高校の二校が合併して出来た為、幾分か女性の方が比率的には多く、合併後も女子高の名残からか入学者の七割が女子である。
「前の大会では確か県大会までいったんだよね、今回はどこまで目指すきだい?」
「勿論全国準優勝!」
「優勝じゃねえんか!」
べったりとスライムの様に机にへばりつきながらコッペパンを齧る茜の会話のパスに食いついた南雲の言葉に大翔がツッコんだ。
「部活で言えば弥生ちゃんの方はどうなんだい~」
「え?私?」
「とぼけてたって無駄さね~相談部さんよ~」
「何故それを?!」
「「「「「お前が言ったんだろ」」」」です」
「そうでした」
弥生はわざとらしくそう口にしてから下に隠していたファイルから紙の束を取り出す。
「うわ、なんだこれ。・・・・・・全部相談依頼か?」
「そう、そんで今は選別中ですよ~」
百枚を優に超える大量の相談の依頼書でできた束であり、弥生はこの中から毎週水曜日に相談を受ける相手を選別しているのだ。
「こんなに依頼が来てるってさすがやね弥生ちゃん」
少し前までは皆にも隠していた相談部についてだが二年に上がると同時に理事長に信頼できる仲間になら見せても良いかと聞いた際に「問題にならない程度にならいい」と言われたのでこうしてみんなの前で依頼者の紙の束を見せている。
校舎の至る所に設置された相談箱の中に入っていた相談依頼の紙の束。
その束をペラペラと捲りながら目を通していき先ずは早急か早急でないかで選別してから早急だけを纏めて次に誰かからの相談が必要か必要でないかで選別し、誰かからの相談が必要である者を纏めて最後にその中から相談する相手を選ぶといった作業を新しいのが来るたび毎度毎度繰り返している。
「凄い手際だね。弥生ちゃん専務とか向いてそう」
「そうかな~」
今日は時間が無いのでこのまま皆の前でも構わず選別していき十分が経った頃には残り三枚になっていた。
「今更だけどさ。私らに見せちゃって本当に良いの?一応部外者だよ?」
「まあ口に出さなければ大丈夫だよ。それに君たちに見せたって事は後々手伝ってもらう為でもあるしねククク」
「どこまで考えてるんだこの弥生は!」
「弥生さんは中立の立場に立つのが上手いですからね、尊敬します」
「尊敬されても困るんだが・・・・・・」
ブーイング混じりの言葉と共に音色がそう口にして少々戸惑いながらも手元の三つの紙を眺めては決まらずに悩んでいた。
「早速だが皆に聞きたい」
「うわ、尊敬されてから数秒後に頼み事はねえぜ女将さん」
「誰が女将さんじゃ巴瑞季!――まあそれは置いといて、皆だったらどの悩みを優先するか聞いた後に手を上げてほしい」
「おう、まかせな」
五人がそれぞれ頷いて冗談文句を垂らしながらも協力してくれる事になった。
「まず最初に恋愛について、次に学校生活についてで詳しく言うと勉強系、最後に人生について・・・・・・」
「最後だけ重くね?」
全員聞き終わると各々考えてから
「それじゃあせーのでこの紙を指さしてほしい、せーの!」
相談依頼の紙の裏にざっと恋愛相談、学校相談、人生相談と書いて机に置いた。
弥生の合図と共に皆が思い思いに優先する相談が書かれた紙に指を指した。
恋愛相談 巴瑞季、茜、南雲。
学校相談 無し。
人生相談 音色、大翔。
「おぉ~、こうなったか。それじゃあ右からこの相談にした理由を聞いていっていいか?」
結果が出てから弥生のその言葉で右に居る巴瑞季から順にどうしてこの相談にしたのかを答えていく。
【巴瑞季】
「恋愛は学校の花形と言っても過言じゃないからね!それに弥生がこれを残したって事は難しい感じの恋愛相談だと思うからこれ!」
「お~巴瑞季にしては中々考えてるな、次」
【大翔】
「やっぱ重いけど人生でしょ!人生に詰まればそこで試合終了だと俺は思うね!」
「こっちは脳筋人生論かよ・・・・・・次」
【茜】
「勉強は端的に言えば自分との闘いだから無しとしてもう一つの人生を人に相談するのはちと身勝手すぎるとあたしは思うしそこまでの事を弥生が抱えきれるわけがねえって事で消去法で恋愛相談」
「私そんなに頼りないかな・・・・・・次」
【南雲】
「茜さんと同意見です」
「うん、お前らしいよ・・・・・・次」
【音色】
「恋愛も大事ですし勉強も大事です。けれどやはり一番大事なのはこれからの未来に繋がる人生だと思うのです。弥生さんには荷が重いかも知れませんがしっかりと答えを導き出して相談者の助けになると信じています」
「真面目にそう言われるとなんか照れるな・・・・・・」
全員の意見を聴いたうえで黙考する。
「そんで?当の相談役本人はどうするんだ?」
大翔の言葉と同時に決心がつき弥生は答えた。
「今週を恋愛相談。来週を人生相談に回す。この間にも相談箱に沢山の依頼書が放り込まれているだろうけど先着順という事で今回はこれにするよ皆ありがとうね」
机に置いた紙の束の一番上に相談決定した紙を持ってきてからファイルにしまってそう口にすると
「やっぱそうなったか」
「ですね」
「せやね~」
「そやね~」
「弥生さんらしいです」
それぞれ弥生の出した答えに頷きながら誰も否定することなく納得していた。
「時間もちょうどいいしこれにて解散!皆私の用事に手伝ってくれて有難う」
「いつでも頼んで来い!その都度真剣に考えてやる」
「脳筋回答はごめんだ・・・・・・」
「弥生のくせに生意気だぞ!」
一つの事が終わるとシーンが切り替わったように無邪気な高校生に皆が一斉に移り変わり弥生と大翔のじゃれあいにケラケラと笑いながら絡んできて学生生活そのものを現したような昼休みが終わった。
仲間についての事があれば真剣に考えて答えを出す。そんな優しい人達で集まった煌びやかなグループで弥生は一生過ごしていたいなんて思うぐらいには今の現状が好きであった。
この服に付いても決着をつける日がいずれ訪れるだろう、その時皆は納得してくれるだろうか、笑って済ませてくれるだろうか・・・・・・そんな心配もまた、こみ上げてくる弥生なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます