第12話崩壊の足音

対峙する4人のもと、


「遅れてすみませーん。」


「遅れました。申し訳ない。」


葛城と晴人がやってきた。


「丁度アグノを炙り出してこちらに誘導する作戦思いついたんですよ…」


と言いかけた時、晴人は目の前の光景に愕然とした。


「ってなんでアグノさんここにいるの?一体どうして!どうやってここに連れてきたのぉぉぉ」


「私が公園でこの人見かけたから声をかけたら着いてきてくれましたよ」


「なんでそんな簡単に成功したのぉぉぉ。俺らの努力が台無しだぁぁぁ。」


「騒がしいな」


アグノは晴人に視線を移した。


「私と晴人が共同で炙り出す作戦を考えていたというのにいとも簡単に連れてくるとは…紅音さん侮れない。」


「いえいえ運が良かっただけだね」


「葛城恵子と言ったな?もしやそのオレを炙り出す作戦とやらはこの前のカラスが関係あるのか?」


「私が手引きした。カラスを巨大化させて、襲わせ、その隙にこちらの晴人の能力で一網打尽にしようとしたが、中々射程内に収まらなかったことと、家に入ったお陰で能力が使えなかったから諦めて撤退した。」


「しかし、アグノさんここに連れてこれたってことは俺らの役目はとりあえず終わったな」


「間抜けと馬鹿だな。」


「「なっ何を」」


葛城と晴人は同時に声を上げた。


「そんなガバガバの作戦でオレを炙り出す暇があったらとっととオレをシャロンに紹介してくれ。回りくどいんだよ。」


【そうだそうだー。】


「ふふふ。葛城と晴人はご苦労さま。ところでアグノ。私は死者蘇生の能力をこの手中に収めたよ。こちらの方がその能力者よ。」


ミイラのような竜人は応えた。


「何度も何度も言うけど私は能力に関しては使いません。」


「強情!石頭!わからず屋!」


「いくらでも罵って構いませんよ。私は動じない。」


「だそうだが、シャロン様。あなたは第9の世界に来る前から理想郷を作りたいという理想を掲げていたが、それをどうやって実現させる気なんだ?。死者蘇生の能力をどう利用するつもりなんだ?」


「〔失われた王〕を復活させるの!」


「そんな眉唾物のことまだ信じていたのか。失われた王の文献自体少ない上に信ぴょう性がないものばかりだ。オレはシャロンが定期的にそのことを言ってたから、自分独自で調べさせてもらったが、99%そんな存在は架空の人物でしかないと思っている。ザクトにたぶらかされたんだよ。良いようにいってはシャロンを説得し、こちらの世界に無理矢理連れてきた。そうとしか考えられない。」


「私はあの文献に希望をもったの。これしか方法がないとね。

サキお願いだから今この場で失われた王が存在していたことを証明して!」


サキは首を横に振る。


「能力を発動させる前にまず、復活させる人物が過去にいたのか検索することが出来る。それだけでもいいからして。復活させる前にまず存在していたことを証明してほしいの!」


「まあそれだけならいいですけど…」


「早くして!アグノを説得させる必要がある!」


「わかったよ。」


サキは両手を構えて、サキの目の前に現れる緑色のスクリーンに目を通した。


そのスクリーンはサキだけが認識できるものであった。


そして


「検索しましたが、失われた王及びその名称を過去にもっていた人物。本名での検索全てを行いましたが一切見つかりませんでした。過去に存在していた人物ではありません。」


「嘘よ…もう一度お願い!信じられない」


「もう一度?いいけど」


サキはもう一度行った。


「何も見つからない」


「そんな!いないとか信じられないんだから!」


「所詮眉唾物だ。いい加減目を覚ませ!シャロン様。」


「嫌だ。ここまでやってきたのだから諦める訳には行かない。」


次の瞬間、アグノはシャロンの頬を平手打ちした。


そして3度繰り返した。


葛城はアグノに殴りかかろうとしたが晴人が制止した。


「いいか!そもそも元いた世界から逃げ出して、自分の故郷を捨てて、他の世界に干渉して、君の勝手な理想を押し付けることが、幸せに繋がると思うのか?人様に迷惑かける真似するんじゃない。そして、オレ達がするべきことはオレ達の故郷をオレ達で改善することだ!ゴッデスファイトに関してもオレは参加する手段を手に入れることができた。竜子のお陰でな!だから元の世界に戻って、2人でゴッデスファイトに参加しよう!そして勝つんだよ。そしたら願いが何か叶えられる。ゴッデスファイトを撤廃して自由な世界を作る!とかでもいいじゃないか?失われた王とかいう叶えられない理想を手にするより、自分達で変えていくべきだろ。ずっと言いたかったことだけどようやく言えたよ!」


シャロンは、放心状態だった。


これからどうするか。


アグノの言う通り、現に失われた王の存在が虚構だとしたら、私はザクトを許さない。


現に能力者に頼っても成果が得られない。


ならばもう大人しく引き下がるべきか


「降参するわ。元いた世界に戻りましょうか。」


「まだ3週間くらい待たないといけない。」


「そう…。ポータルの場所はあの公園かしら?」


「恐らくな。それまでこの世界を満喫しよう。な?」


「私は行方不明のザクトを追います。あの方だけは許すことが出来ない。」


「私も協力します!」


「俺も」


「私も」


「私は知り合いとして手を貸すわ」


「みんなありがとう!」


こうして交渉はシャロンの敗北という形で終わった。

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