第9話積み上げられる罪

それからその場は記者だのオカルトマニアだの警察だの消防隊だの生物学者だのでごった返した。

無論、1番最初に民衆に向けてこの異様な事態を知らしめたのは大久保である。

体長5mはあろうかと思われるカラスが燃えている。

新種の発見かと思われたり、誰かが仕掛けたものなのではないか?など様々な憶測が飛びあっていた。


「取材するよりも大きな収穫だったわ(笑)」


「怪我もしてないみたいだし、元気そうでなによりだ。ボディーガードの初仕事として役に立てたと思う。」


「うん!ありがとう!最初はあなたの能力怖かったけど今となっては心強いと思ってるわ」


「大したことないよ。まあこれからも見に危険が及んだら知らせてくれよな。何時でも駆けつける。」


「うん!じゃあ、ちょっくら家の前の様子見てくるわ」


「火が燃え移らないか心配だが。」


「もうとっくに消火されてるみたいだよ!」


窓を指さしながら大久保は言う。


「ならよかった。オレらはあまり干渉しないでおこうか。」


【うん。】


アグノは漫画を手に取り腰掛けた。


夕刻。


葛城と晴人は丘まで来ていた。


シャロンと紅音も遅れてきた。


「シャロン様。申し訳ございませんが、アグノの確保には失敗しました。」


「まあ、アグノがいないからそれくらいは分かるよ。」


「ですが、アグノの居場所を突き止めることには成功しました。」


「おお、お手柄!お見事!」


「そちらはどうでしたか?」


「私は久しぶりに耳が聞こえる環境に慣れることから始めたし、まだ何も出来てないや。ごめんなさい」


紅音は弱々しく答えた。


「私も死者蘇生の能力者を見つけることが出来なかったわ。その過程で今日だけで3人も命を落としてしまったわ。弔ってあげることも出来なかった…。申し訳ない。」


「その〔創造〕の能力って2割で失敗するんだったな。。。運が無かったなそいつらも」


「しかし、ここまで来て引き下がる訳には行けません。」


シャロンは腕をクイッとあげた。


「死者蘇生の能力さえあれば、過去の歴史書に名を残している、名を呼んではいけない、通称〔失われた王〕をこの世界で復活させ、森羅万象あらゆるものを統べることができる。問題は復活させたとして言うことを聞くかどうかだけど…」


「そのさ。全てを支配する的なことして具体的にどうしたいの?」


「私の元いた世界の故郷は第792の世界で2年に1度開かれるゴッデスファイトというものに参加して勝ったことが1番最初の年だけで、このゴッデスファイトに負けるとあらゆる国の物資が接収され、勝った国に奪われてしまう仕組みになっていていることから、国力は衰退の一途を辿っていて国民はもちろん、王女の私でさえ苦しい生活を送っているの。そして毎年優秀な国の男子と女子がそのゴッデスファイトに送り込まれては死亡している。悲しみの連鎖が終わらない。そんな縛りのある世界から解放されたくて異世界で最も第792の世界に近いとされるここにきて、この世界で自由を手に入れたいって思ったからかな。そして、豊かな生活を送りたい!その為には強大な力で支配下に置くことを考えているのよ。〔家族〕である、あなたたちは当然好待遇でいられるよ。」


「苦しい生活から解放されたくて遥々ここまで来たってのは尋常ではないな。」


何としてでも死者蘇生の能力者を見つけ出し、アグノを説得して邪魔者は減らし、

行方不明になったザクトは探し出さないといけない。

第1優先なのは死者蘇生の能力者!なので私はこれから能力者探しに明け暮れる予定よ。アグノとザクトのことはあなた達に任せるわ!」


「かしこまりました」


「了解っす。」


「分かりました。久しぶりの感覚取り戻せてきたかな。」


3人は同時にそう応え


「今日はこれにて解散、ではまた明日!」


4人は3方に散らばっていった。


紅音は家に着いた。

母親は手話で会話をしてくる。

紅音もそれに手話で応える。

しかし、それももはや必要ないことだった。

至って健全な体になっていたことから無駄だと思いつつも耳が治った代償に竜人になってしまったなんて言えるはずもない。

父親も帰ってきた。


「あなたおかえりなさい。夕飯出来てるわよ。」


「あぁ、いつもありがとう。」

たわいない両親の会話を耳にするのも久しぶりだ。ただただ紅音は仲間はずれの気分にいつも以上に感じてしまった。


翌朝、朝早くから紅音は起きた。

学校にいく時間である。

学校といっても聴覚障害のある子のいく特別支援学校である。

学校を行く通学路の途中に公園がある。


公園に差し掛かるとふと気になる者が目に映った。

頬に焔の痣がある。

パッと見女子大生だろうか?。

ベンチに腰掛けている。

鳩に餌をやって座っていた。


この特徴にふと思い当たる節があった、そうアグノという人物である。

今、アグノは女子大生と融合しており、女子大生の姿でこの世界にいる。そして、焔の痣があるのが目印であるとされているが、まさかと思った。


まだ登校時間に余裕があったので思い切って話しかけてみることにした。


「あのぉ」


その人物は鳩に餌をやる手を止めて、こちらに視線を移した。


「お名前はアグノさん…ですか?」


その人物は驚いた様子で手を口に当てた。


そして


「なんでおっ私の名前を知ってるんだ?誰から聞いたの?」


「シャロンという人からです。」


アグノは喜んでいた。


おお、待ってた甲斐があったぞ!


「詳しく話を聞かせてくれ」





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