第8話激突!家族たち!③
アグノは公園のベンチで青空を見上げていた。
「今日もこの調子だと収穫はなさそうだな。」
【ひとつ疑問だったんだけどさ。】
「ん?どうした?」
【この前言ってたゴッデスファイトってやつ、わざわざ私に変身した上で私に譲渡させる必要なんて発想があって尚且つ記憶の改竄やデータをいじることも出来るならその第792の世界の人と融合してやればよかったんじゃないの?って思ったんだけど】
「実はだな…」
【うん。】
「オレ、人間と融合出来ないんだよ」
竜子は耳を疑った。
は?…
ならどうして私とこの世界に来た早々融合なんてしたのか意味が分からない。
【人間と融合できないとはどういうこと?私は普通の人なんだけど?】
「オレにもさっぱりだ。第9の世界だからできたのか。第792の世界だから出来なかったのか、それとも竜子が人間じゃないのか。どれかさっぱり分からない。
そもそも竜人は人間とも融合自体はできる。しかし、オレは出来なかった。オレはクウェル漏洩病という病を抱えているがその副次的効果と医師は判断しているが、正確な原因は不明なままだ。あっあとこの世界にきた時は直感的に君と融合するべきだと判断したからだ。人間だとパッと見分からなかったけどね。そしたらまさかの融合成功しちゃったってやつ。んでしばらく君寝転んでたからその隙にマインドスキャンさせて頂きました笑。」
【人の思考勝手に読むなー。てか原因諸々あるのだろうけど少なくとも私は人間の子だぞ!】
あれ。なんで人間の子って言い方したんだろ。人間って言えばいいのに…まあいいか。
竜子は疑問をぶつけた結果さらに疑問が増えて頭を抱えている。(物理的には出来てない)
夕刻。
「では、行って参る。」
「ちょっと葛城さん。置いてかないで」
晴人は葛城を追いかけて外に出た。葛城は忍者のような動きで町を静かに爆走していた。
晴人は翼を生やして後を追いかけていった。
「まっ待ってくれ。あの丘までだろ?急がなくてもいいだろ。」
「時は金なり。」
「待てー」
間もなくして丘に辿り着いた。
「ふぅ。あっという間に着いた。」
「静かに。お見えになるぞ。」
シャロンがゆったりと歩いてきた。傍に1人の少女を携えてきた。
「新しい〔家族〕ですわ。ようこそ。そしてよろしく。」
「名前は西野紅音と言います。よろしくお願い致します。」
「おっ新しい仲間っすか。よろしくな。俺は晴人。」
「私は葛城恵子。よろしく。」
「2人ともよろしくお願いします。」
「この子の能力は変わりもんでね。歌を歌った時にその歌に様々な能力を付加することができるの。例えば睡眠を促す能力や誘惑する能力などをね。」
「ふと、気になったんですけど」
晴人は手を挙げながら言った。
「俺たちみたいな〔家族〕ってどうやって決めてるんですか?」
「私の左の首筋から生えてる黒龍の「解析」はありとあらゆる能力を数値化して、はじき出すことが出来るんだけどそのうち、幸福度30未満かつ、竜人適正80以上の人に対してだけ見つけたら声掛けするようにしてるの」
「へぇ、数値化かぁ。ゲームのパラメータのようなものかな。」
妙に納得した佇まいだった、晴人は腕を後ろでクロスに組んだ。
「ひとつ提案があるの。今日から3チームで行動することにしましょう。」
「3チーム?どう言う内訳」
「まず、あなたと葛城は明日、予定通りアグノを炙り出して生きたままの状態で確保してください。紅音さんは妖術師ザクトの容姿を言い渡すのでザクトの捜索をお願いしたいのです。その間、私は次なる段階である、〔求めている能力者〕の発掘に向かいます。」
「求めている能力というのは?」
「死者蘇生の能力を持つ者のこと。」
ウッソだろお前と言った感じで晴人は動揺した。
死者蘇生って死者を馬鹿にしているのか?そんな常識ハズレの能力ありかよ…と思ったけど俺既に人外だったわ…常識ハズレの存在なのには変わんねぇ。
「ということで各班、手分けして協力お願いします。」
シャロンと愉快な仲間たちといった様子でしばらく話した後、解散した。
翌朝、大久保は家を出ようとしていた。
「今日、取材のお仕事あるから留守番お願いね!」
「あぁ任せとけって!」
「じゃあ、行ってきます」
張り切って飛び出して行った。玄関までいってアグノは大久保を送り出した。
次の瞬間、目の前をものすごい勢いで風がきった。
ビュゥゥゥゥゥン。
なんだこれは?
アグノはそれが自然発生したものではなく、何者かによって作り出されたものだとわかった。一瞬目の前を何かが横切ったのが見えたからだ。
「大久保さん大丈夫か?」
「いててててて、転んじゃったよ」
「家の中に隠れて!」
「はっはいぃぃ」
速やかに大久保は家の中に入って中から外の様子を眺めている。
「くそっどこ行きやがった」
【アグノあれじゃない?上よ上!】
「ん?なんだありゃ。」
上空には体長5mはあろうかというカラスが飛んでいた。
アグノは翼を生やして大空へ舞った。
「ドラゴニックアーツ第68の技、プロミネンスキック」
宙返りしながら、相手に向かって突進し、猛烈な連続キックを叩き込んだ!
カラスは体毛ごと燃えており、苦しそうな鳴き声を出していた。
その頃地上では。
「えぇとここか…」。
晴人は位置調整しながら近づいていき、
「よし!ここだ!」
晴人の能力の射程圏内に収めたのはアグノだった。
やつのクウェル粒子の密度が黄色で表されている…
ここで引き絞ればやつの息の根を止めることも難しいことではない。
ただ調整が難しいみたいだし、どうしたものか。
そうこうしてるうちにアグノはさらに大空に飛び上がった!
なにっ。射程圏内から外れただと?
くそっ障害物のない絶好の機会だというのに取り逃した。
飛んでしまったら位置がバレてしまうし、動かずにただその時を待つんだ!俺!
そう晴人は言い聞かせた。
一方、アグノはそらに飛び上がって
「もういっぱぁぁぁつ。プロミネンスキック!!!」
ドゴォォォォ。
激しい肉と肉のぶつかり合いで勝利したのはアグノだった。
力尽きたカラスは力なく地上に落ちていった。
アグノは地上に降り立った。そして家に入ろうとした。
晴人は今だ!と言わんばかりに能力を発動させた。
クウェル粒子を内包する対象だけ黄色く写るがアグノを視界に捉えた。
しかし、次の瞬間、アグノは家に入ってしまった。
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙。取り逃したァァァァ。
晴人は内心そう呟きながら膝カックンした。
そんな晴人の元に葛城が寄ってきた。
「プランBに移行するぞ。」
「んなもんなかっただろうが!何する気だよ」
「戦略的撤退だ。」
「ここまでやって撤退かよ。」
「居場所を突き止めただけでも大きな収穫だ。次もこちらから仕掛けることができる。」
「それもそうだが、はぁ」
納得しない様子だったが晴人と葛城は撤退した。
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