「本当の地獄」

地獄から解放されたことは嬉しかったが、私は知らなかった。

本当の地獄はこれからだと・・・。


退院してすぐに以前までのように学校生活に戻って気づいた。

私は勉強に追いつけていないこと。

皆が私を無視していること。

私は完全に悪役になってしまったこと。

周りの視線が冷たい。

こればかりはどうしようもなかった。

退院してからもいろんな悩みに精神的にも追い込まれ、薬の作用で日中も常に眠たい状態が続いた。

早退や遅刻がどんどん増えていった。

とても苦しかった。

とても悔しかった。

情けなくてどうしようもなかった。

誰かにわかってほしくて、誰かに助けてほしかった。

でも、救いなんかなかった。


家族からは


「お前が悪いんだろ。自業自得だ。逃げるな。学校に行け。」


誰も味方になんかなってくれなかった。

私は姉だけを頼りにしていた。

姉は昔から体も弱く、精神的にも弱かった。今までも何度も入退院を繰り返していた。

しかし、姉にも助けてもらえなかった。

家族の気持ちもわからないわけではなかった。

姉が体が弱い分、私にはいい子であり、立派であってほしかったのだろう。

姉は自分が思い通りに生活を送れず辛かったのだろう。そのため私が怠けているように見えて情けなかったのだろう。

私は小学生まではずっと「いい子」「優等生」として生きてきた。

「親に褒めてほしい。認めてほしい」その一心で勉強もお手伝いも習い事もたくさん頑張った。

自分の苦手なところは得意なところで補った。

そのかいあって小学五年生の時、全国の将来の夢という作文で最優秀賞をもらった。

友達の親も先生も近所の大人もたくさん褒めてくれた。

でも、肝心の親は私に対して無関心だった。

昔からそうなのだ。

姉や弟の体調が悪ければ運動会も文化祭も何もかも来てもらえない。

授業参観なんか1度も来てもらえなかった。


そんな私は昔からきっと誰にも愛されていなかったのだろう。

高校生にもなって周りからの無視に耐えられず学校にいけない自分をひどく嫌った。

ついにその日


「出ていけ」


父から告げられた一言は16歳の私にはひどく残酷な言葉だった。

私は無我夢中で走った。

裸足で何も持たずにただただ走り続けた。

悔しくて悲しくて情けなくて涙が止まらなかった。

呼吸がうまくできていないことに気づいたときには遅かった。

私はその場に倒れこんだ。

いつもはキラキラ輝いているはずの星々がその日はやけに小さくて儚いものだった。

私は周りのみんなに馬鹿にされている気がして涙をぬぐってもぬぐっても止まることはなかった。


「本当の地獄」

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