「大人は気持ち悪い」
父が家にいる時間が少ない理由は、中学に上がるころにやっと理解できた。
きっかけは父の一言だ。
「お前たちにお母さんが出来る。そして妹が二人もできるぞ」
その一言は私の頭の中をぐちゃぐちゃにするには十分すぎる一言だった。
父に紹介された母親(仮)は父よりもはるかに若く、そして明るく笑顔がよく似合う女性だった。
女性は私たち兄弟に微笑みかけると
「お母さんって呼んでいいからね。一緒に幸せになろう」
そう一言だけ言ってあとは父と二人で談笑を始めた。
私と姉は豆鉄砲を食らったような顔をしてお互い黙ったままだった。
だっておかしいじゃないか。
急に連れてきた女性が母親になるということは再婚したということになる。
そして妹が二人ということは相手には娘がいて、さらに妊娠しているということになる。
姉はどう思ったか知らないが、私はただただ気持ち悪いと思った。
いくら何でも子供ができる仕組みくらい私にもわかる。
当時の私からしたらその行為はとても気持ちが悪いもので、しかもそれを自分の父がしていると考えると・・・吐かなかっただけ褒めてほしい。
父は母親(仮)と長い時間ずっと楽し気に談笑をしていた。
祖父母は二人の再婚に対し反対したが、全くと言っていいほど聞き入れない。
私たち兄弟も二人の再婚に対し反対することなんてできなかった。
大人になると子供を作る行為をする。
男女が二人でいるということは、子供を作る行為をしているのだ。
自分自身もその行為から誕生した気持ち悪い人間なのだ。
「大人は気持ち悪い」
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