最終話

その後の夏休みを、俺は彼女にこの世界のことを教えながら、楽しく過ごした。

宿題を早くやってしまったおかげで、時間はたくさんあったので、彼女と一緒に買い物に行ったり、映画を見たりした。カップルがやるにしては何気ないことだったけれど、そんな普通の楽しさを、好きな人と一緒に感じられることが、とても幸せだった。

夏休みが終わる頃には、彼女もだいぶこの世界になれたようで、スマホを使いこなしたり、もう現代の女子高生になっていた。



九月一日

全国の学生にとって、一年で最も憂鬱な日であろうこの日、俺と彼女は一緒に学校に行く準備をしていた。俺が彼女を連れてくるとわかっていた親父は、俺を信じ、もう入学手続きを済ましていたのだ。

「それじゃ、行こっか?」

「うん」


こうして彼女は、俺と一緒に第二の人生を歩み始めた。


「うおっ!何だよ海斗、その可愛い子は?」

久しぶりに登校した学校で、最初に声をかけてきたのは、イギリスに行ってすっかり日焼けした遥希だった。過去で俺と関わっていないので、俺が過去に行ったことは知らないようだったが、何かの本を貸したことだけは覚えているらしい。ギリギリまで俺と関わっていたので、少しだけ彼女のいない世界の記憶があるのかもしれないが、遥希はこの事件のことを詳しく知らないので、俺が何をしたかは知らないようだった。

「俺の彼女だよ?」

「なにぃぃぃぃぃ!!!!!」

当然、いきなりやってきた可愛い転校生が彼女ということは、秘密にするつもりだったが、俺と親しい友達にはすぐにバレると思ったので、自分からカミングアウトした。その後、一部の男子からの視線が冷たくなった気がすることは気にしないでいる…

彼女はすぐにクラスに馴染み、友達もたくさんできたようだった。


だけど、彼女の秘密を知っている人はいない。俺と彼女の二十年の時を越えた恋物語を知っているのは、俺と彼女と、二十年前に俺と関わった人間だけだ。


きっとこれから、また新しい何かが始まっていくんだろう。でも俺たちなら乗り越えられる。

二十年前よりも随分と、建物が増え、夜が明るくなった世界で、俺と彼女は、二十年前と同じ言葉を誓った。


                               完

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君のいない今、君のいる未来 工藤銀河 @heart-of-time

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