第3.5話 おそろい後日談

 視界に映ったそれに、何となく見覚えがあったのだ。


「あれ、そのストラップ」


 その印象のままに口を開くと、つい数秒前にすれ違った同じ部活の同級生がゆっくりとこちらを振り返った。

 同級生の持つ黒の通学鞄。そこには、つい数秒前にも目を引いた、可愛らしいちんまりした犬のストラップがつけてあった。


「それさあ、前々からつけてたっけ?」と尋ねる。


「ああ、これ? 佐藤からもらったんだよ。カプセルトイで被ったらしくて」


「……へえ、ふーん?」


 ニヤニヤと笑みを浮かべると、途端に同級生は呆れたような表情を浮かべた。


 佐藤、というのは同じ部活の一つ下の後輩の名前だ。誰に対しても好意的な後輩だけど、目の前の同級生には輪をかけて懐いているという印象がある。

 ひっそりと応援している二人がついに進展したのかと思ったが、目の前の同級生の反応を見るに、本当に他意なくつけているらしい。色々残念だと思う。


「残念ながらそっちが想像してるようなことはないよ。……じゃあ、また部活で」



 そう言って相変わらずクールな同級生は踵を返して逆方向へと行ってしまう。

 スタスタと去っていく同級生の背を見ながら、ついさっき見かけた後輩の姿を思い出し、誰に聞かせるまでもなく呟いた。



「……さっき見かけた佐藤も同じストラップを鞄に付けてたって言っても、同じことを言えんのかな」

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