三十三

 泣きはらした顔を上げた子柳が、口を開こうとしたときでした。


「ううん、大丈夫。お礼なんかいいの。あたしたち、十分に楽しませてもらったから」

「そうじゃ。ワシらの退屈しのぎに付き合うてくれたしのう」

「ですね、姉さま。なかなか有意義な体験でした」

「また運気が向けば、長安で再会することもできるじゃろう。金は心配するな、いくらでも驕ってやるゆえな」

「無銭飲食ですけどね」

「あたしの別荘、輞川って言うんだけど、次会ったらみんなで行こうね」

「ははは、汝と共に消さん、万古の憂いを! ではな」


 三人の女仙たちは、さんざん好き放題を並べながら、笑い声を残して姿を消しました。呆然としていた子柳が我に返ると、すももの座っていた卓の上に、「賜金還山」と書かれた詩箋が一枚、ほのかな光を発しながら残されておりました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る