二十三

「無論ある。古人曰く『先ず隗より始めよ』とは蓋し名言であるが、しかし」

「あの……なぜあたしの胸を見ているんですか?」

「これには期待できぬ。よって摩詰よ、そなたが適任じゃ」

「えええええーーー! イヤだよ、無理だよう! あたし仙人だよ? なんで人間の男の人と、その、そんなことっ。太白ちゃんがしたらいいじゃない」

「何を言う。ふわふわぽよぽよのそなたなら完璧じゃ。案ずるな、ワシが過不足なくプロデュースしてやるでな。大船に乗った気でいてもよいのじゃぞ?」

「ちょっと勝手に進めないでよ。いくら何でも自由すぎるよ」

「それはワシの専売であるゆえ、どうにもならぬ。それにな、見よワシのこの姿を。十歳の幼童じゃぞ? さすがにまずい。いろいろとまずい。天衣無縫と呼ばれたワシじゃが、こればっかりはないわー」

「天帝にお願いして、呪いを解いてもらったらいいでしょ?」

「それは確かにそうじゃがな。この姿では飲酒もできぬし。ちっ、天帝のヤツめ、ちょっとイタズラしたくらいで目くじら立ておって。あやつの幼女趣味だけはほんとキモくていただけぬ。ふん、酒仙から飲酒を取り上げるだけでは飽き足らず、下界追放までかましてくれたのじゃからな。恨み骨髄よ。……それと、ワシも仙人じゃから、そこ忘れるな」

「あたしは無理ですよ、姉さま。そんなに見つめたって、嫌ですし無理ですから」

「心配するな、おぬしのことは嫌になるくらいよく分かっておるつもりじゃから。まな板のようなそのお胸では、男を誘惑するには無理がある。荷が勝ちすぎよう、確かにそなたの言う通り。ふひゃひゃ、飽きもせずガツガツ食っておる割に、栄養がお胸に行かないのは残念よな」

「姉さまだってちんちくりんじゃないですか!」

「ふん。ワシの真の姿を忘れたのか? ボンボンでキュッキュじゃぞ?」

「忘れました。いったい何百年その姿なんですかね」

「もう、やめようよ、二人とも。また次回会ったときに、子柳君に聞けばいいじゃない。それで諫めてあげようよ。ね、ねっ」

「そうじゃな。もう夜も更けた。月も陰っておる。仕方あるまい、今宵はこれで散会としよう」


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