二十四

 それからというもの、子柳は花街通いに夢中になってしまいました。どっぷりはまって抜け出せなくなったのです。初めて抱いた蓮の葉の柔肌を忘れることができません。まるで吸い付くようだったのです。頬を染めて恥じらう姿が、脳裏にちらついて消えないのです。四書五経を開いても、詩作をしようと字書を引いても、全く頭に入りません。気晴らしに絵筆を取ってみれば、あられもない裸体を描く始末。夜は寝付くことができず、ひたすら寝台の上でまろび続けるばかりでした。


 花代も馬鹿にはなりません。初めこそ仕送りをやりくりして捻出していましたが、やがてそれも苦しくなりました。会えないときほど、会いたい気持ちが募るもの。今こうしている間にも、他の男の腕に抱かれて、などと想像すれば、叫び出したくなるほどの痛苦に苛まれました。


 そして子柳はとうとう友だちの翔鷹に金を借りるようになったのです。初めは少しだったものの、借りる額はどんどん膨らんでいき、到底返せるような金額ではなくなりました。翔鷹の支援者は皇帝の第八王子という身分だったので、彼自身はまるでお金に困っていませんでした。子柳が申し訳なさそうに無心すると、いつも笑顔で気前よく用立ててくれたのです。


 実は翔鷹には狙いがあったのです。それは、借金のカタとして、子柳が隠し持つ宝物をせしめてやろうというものでした。


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