第6話 ぐうたら少年と緊急依頼

蜂の街から帰って約一週間。東の方にあるギルシュ帝国にて膨大な霊力の動きがあったそうだが、計器の故障という事で片付けられた。

尚、これが本当の事だと分かるのは約一ヶ月後のことである。

シンは、依頼が無いのを良いことに、白昼堂々昼寝を敢行しようとしていた。

「起きねぇかシン!!」

「良いじゃねぇかフィール、依頼も無い、雑務も無い・・・寝ようぜ!!」

「ドアホ!!」

その昼寝をしようとするシンに、ラルラがもたれかかる。

「良いじゃん、寝よぉ~」

怒りでフィールは指をワキワキさせ、こめかみに血管を浮かべる。

「休むのも必要だよフィール、じゃあお休み~」

ユンナがラルラにもたれ、昼寝を始める。

フィールは何かを言おうと頭を抱え、上半身を前後に大きく揺らし、奇声を発する。


数分後、少し落ち着いたのかフィールの顔はいつもの顔色に戻り、三人の寝顔を眺める。

「・・・たまには、こんなのもいいのかもな」

そう言って、フィールがソファーに腰掛け、頬杖をつき、いざ寝ようとする。


「おいお前ら仕事だッ!!今すぐ支度しろッ!!」

クロウのガラスでも割りそうな勢いの大声で叩き起こされる。

「・・・んぇ!?な、何ですかボス・・・」

寝起き特有の呂律の回りきっていない声でシンが問う。

「この首都にて隷霊師の集団によるテロが発生した!!我々Re:Leがその鎮圧にあたる為、共和国より正式な依頼として受け取った!!いいかお前ら、俺達の仕事はその鎮圧だ!!」

クロウが事務所全域に響き渡る声で伝える。

「組員に告ぐ!!特派員、戦闘員に就く者は三人一組スリーマンセルを構成したので、その組で行動するように!!事務員等は戦闘員のバックアップ、通信指令、現在地点からのナビゲートといった事を任せる!!負担大きいが、頼んだ!!」

その堂々たる声、立ち居振る舞いから、組員全員が直立不動、敬礼を以て聞く。

「鎮圧組、三人一組書いた紙をここに置く!!各自確認!!」

戦闘員達はその紙を確認し、事務員達は事務所の奥から大きな箱を取り出す。

中から現われたのは、小型通話機関マイクイヤホンと呼ばれる不思議な機械。

耳元に音を聞く機関、そこから繋がった拡声機関と聞く機関にくっついたダイヤルより構成される機関からくり。ダイヤルを回す事で通話したい相手が変えれる。

「これで連絡を取り合うんですね、ボス」

「そうだ。コードは06・38・54・99だ」

全員がダイヤルのチューニングを始め、三人一組でまとまり始める。

「・・・全員、準備はいいな?では担当地区は通信で連絡する。解散!!」

クロウの号令で戦闘員が一気に走り出す。戦闘の開始だ。



「・・・んでボス、事件の概要を教えてくださいよ」

「ん?あぁそうだな」

シンは、クロウとフィールのグループに配属となった。燕進と跳躍を使って屋根の上を伝って現場へと向かっている。

「第三区、クリムリーにて隷霊師の集団がテロ、というか市街の破壊活動を行い、それの鎮圧に俺らが回された。んで多分三区のが一番強くて、そのお友達軍団が周囲に散ったんだろう」

「ではボス、今僕達が向かってるとこって」

「三区だな」

一瞬にしてシンの顔が真っ青になる。

「なぜ!!!!!面倒ごとを!!押しつけた!!」

「おいおい怒るなよ、可愛いお顔が台無しだぜ?」

憤慨し、顔に生気が戻ったシンに対してクロウは声をかける。

「今回の依頼で戦果を挙げた場合、無名武器をいつでも使って良いぞ」

「よっしゃやりましょう」

気合いが入る。

シンのやる気が、発芽した。

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