第3話 同期四人と蜂の街

「ねーまだ着かねーのー!?」

「ほんと遠いんですけどー」

「うるせぇ黙ってろ!!」

「・・・ぅるさぃ」

シン達同期四人組。彼らは今、荒野を歩いている。さっきまでは馬車に乗っていたが、ある場所からは危険域という事で馬車を降りて自らの脚で歩いている。

しかし街まではあと一キロ弱。ぐうたらが三人いるこのグループにおいて致命的な欠陥は飽きやすいという事だ。

元祖ぐうたら少年、シン。そして同期のユンナ・スピアスとラルラ・ミルト。彼女達もまたぐうたら、というか飽きやすい、そして常に眠たげなためフィールはさらに悩みの種が増えるのだ。

「つかれた・・・ねよ・・・?」

「黙って歩けこのコラア女子が!!」

コラアは南の方に生息する動物で一日20時間寝る。鳴き声が「コルァ!!」と聞こえる為その名がついた。

フィールは常にキレながら街へと進む。粒の粗い砂は容赦無く体力と機動力を削ぎ、疲労感と乳酸を生み出す。

「あーあーめんどくせぇ・・・!!全員、前方注意、警戒態勢で」

向かう先から、黒い何かが飛来してくる。

周囲に騒音と空気の振動をまき散らしながら向かってくるそれは、見ればすぐに分かる生物だった。


蜂だ。巨大すぎる蜂だ。大きさ約2.5メートル。複眼が人の頭くらいの大きさがあるバケモノ蜂だ。

現在向かってる街は、このバケモノ蜂に侵略された街だ。

「たった一匹、斥候か?」

突進するように猛進してくる蜂。シンは蜂と同じ高さ、約1.8メートルほど跳躍し、向かってきた蜂の面のど真ん中にティルヴィングをぶつける。

金属同士をぶつけたような澄み渡った高音が響き、蜂の頭部が真っ二つに割れる。

緑色と茶色を混ぜたような濁った粘液が滴り、蜂が地面に堕ちる。

「こんなバケモノがうようよいんのか・・・めんどくせぇ」

不吉な事を告げるかのように、曇り空に雷鳴が響いた。



「・・・こいつぁ、また・・・」

侵略された街は、見るも無惨な姿だった。街で一番高い役場を中心に大きな茶色い蜂の巣が街全体を飲み込み、周囲はあの蜂達がぶんぶんぶんとメルヘンさを微塵も感じさせない様子で飛び回っている。

「小池の周りにお花が咲いたっつーより、市街の真ん中人肉あるよって感じだな・・・」

虫嫌いのフィールの目には否が応でも飛びこんでくる巨大蜂は、フィールの精神を削ってくる。

その上、その蜂が咥えているのは餌となる街の人間だ。女性は生きたまま運ばれている。

シンはその豊かな発想力と今まで得た知識、主に成人向けの知識をフル稼働させた結果、この結論に至った。

「これ、男は餌で女は子作り用だな。俺達も捕まりゃ即アウトの」

瞬間、女子二人の顔が驚愕に引きつり、硬直した。

「オーマイゴッシュ・・・」

フィールも、神に祈りを捧げた。

シンは冷や汗を垂らしながら、巣を見上げる。

「捕まれば即アウト、生きるか死ぬかの瀬戸際・・・面倒だけど、燃えさせてくれるじゃねーの・・・!!」

未成年4人組。その戦いの火蓋は、切って落とされた。


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