第16話 後見人と冒険者登録

「ふぅ、頑張らなきゃなぁ・・・!」


今、ユウは宿屋の一室に居る。




あの後アルから後見人制度について聞いた。




後見人とは身寄りがない人の身柄を保証し、市民権と衣食住を与える制度のことだった。




つまり今こうして宿の一室で横になって色々と考えることが出来ているのも、アルがユウの後見人になってくれたからだ。




ただこの後見人制度はもちろん、誰彼構わずノーリスクで利用できるものではない。




まず後見人になるためには、それ相応の身分がいる。




◇一定以上の税金を納めているもの


◇国務に携わるもの


◇Sランク以上の冒険者




以上3つのどれかを満たさねばならない。


アルの場合は王国騎士団に所属しているので、2つ目に該当している。




そして身分の次に、経済的な問題がある。


今ユウは、避難民用の区画にある国営の宿におり、食事3食と生活に困らない程度の衣服を持っている。




その宿泊費、食費、衣服のお金は全てアルの給金から何割かを天引きされている。


つまりアルは今、ユウの事を養っているに等しいのだ。




そんな大事なことを先ほど言われて、正直申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


遠慮をしたがアルも譲らなかったため、こうしてユウは暖かい寝床で夜を迎えている。




「とにかく、明日は冒険者ギルドへ行って登録をしないと・・・」




ポツリとそう呟き、ユウは夜の静かな空間で目を瞑る。


思い出すのはやはり村の皆について。あっさりと出てきてしまったが、落ち着いたら墓参りに行こう。


もっと実力がついて自由にできれば、最初のアルの提案のようにあそこに住むのも悪くない。




でも、まずはアルへの恩返しだ。


赤の他人である自分によくしてくれて、姉のような存在のアルに恥じない働きをしなければ。




後見人制度は賞罰も関係する。


たとえばもしユウが人殺しでもした場合、ユウだけでなく後見人のアルも投獄されてしまう。


もちろんそんなことは絶対にしないが、自分は人一倍トラブルなど気をつけなければいけない。




ただ逆もある。ユウが功績をあげれば、それはアルの功績にもなる。


だからユウは、得た力を使って偉業を成し遂げようと思った。多くの人から賞賛される偉業を。




アルへ恩返しをして、あの村にもう一度いこう。


そう考えながら、ユウは眠りに落ちてった。






〜〜〜〜〜






次の日。


ユウは王都の中にある冒険者ギルドへ、アルと共に来ていた。




「やっぱり冒険者になるんだね。・・・無理しちゃダメだよ?」


そう言ってアルはユウの肩に手を置く。




頷きはいと返事をして、ギルドの中へ向かう。


美女のアルを連れている子供の自分が、ガラの悪い冒険者に絡まれる。というのがテンプレだが、果たしてどうなるか・・・




「86番でお待ちのライアンさーん」


「あぁ、俺だ」




中に入ってみると、冒険者ギルドは役所のように仕事を行っていた。


冒険者達も行儀よくとまではいかないが、それぞれのテーブルで談笑をしながら番号を呼ばれるのを待っている。




きょとんとしていると、アルがそれに気づいて説明してくれた。




「思ったより落ち着いててビックリした?」


「は、はい。イメージではお酒を飲んでいる冒険者の方々に絡まれることを想像してたので・・・」


「ギルド提携の酒場は道を挟んだ向かい側だよ。役所と酒場を一緒にするメリットはないでしょ?」




ふふっと笑って、アルはカウンターまで進んで行った。


自分もそれに着いていき、チラリと冒険者の方を見る。


子供である分、多少見られてはいるが、悪意ある視線は感じない。そして・・・




(みんな強いな・・・)




タイマンで勝てなさそうな人は多くないが、複数に囲まれるとひとたまりもなさそうな使い手がゴロゴロといる。




まだまだ世界は広い。無茶は禁物だ。




そんなことを考えながら、カウンターに着いた。




「今朝方申請を出したアルだ。この少年・・・ユウの冒険者登録に来た。」


「アル様ですね、少々お待ちください。」




アルが一般人に見せる騎士然とした物腰で話しかけると、受付嬢は奥に下がって行った。




受付嬢が居なくなったタイミングで、ユウ達に壮年の冒険者が1人、厳しい目付きで近づいてきた。




(これは・・・テンプレか?)


ユウは、いつでも動けるように身構える。




「騎士の姉さんよ。こんなガキ・・・しかも片目ケガしてるのを冒険者にするなんざどういうことだ?まだ若いから働き口はいくらでもあるだろ。考え直した方がいい。」




だが意に反して、冒険者の口から出た言葉は心配だった。よくよく見ればなんとなくだが、この冒険者からは面倒見が良さそうな印象を感じる。




「お気遣い痛みいる。だがこれはこの少年たっての希望でね。もちろん希望だけでなく、武芸の心得もある。それでも心配な場合は、良ければたまに面倒をみてやってくれないか?」


「・・・はぁ、分かったよ。まぁ死なないようにな。俺はオッドだ。困ったことあったら聞きに来い。」




そうユウに告げて、オッドと名乗った冒険者は元いたテーブルに戻って行った。


そのテーブルには数名の男女が座っており、全員が全員子供であるユウのことを気にかけているようだった。




(村の皆といい王都と人達といい、この世界の人達って良い人が多くないか?)




そんなことを考えていると、受付嬢が白髪の男と共に戻ってきた。

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