ネグザリウス王国編

第15話 第2騎士団長ノーツ

アルに見えたと言われて前を見ると、高い壁と大きな門が見えた。


想像していた通りの異世界の街並み、その外観である。


検問も予想通りあって、自分を指しながらアルが門番に何かを言って、5分ほどで入場できた。




「おおおおお…」


村を出たことがなかったユウにとって、王都は驚きの連続だ。




木じゃなくレンガで出来た家、たくさんの出店や露店販売、老若男女問わず闊歩する広い道、鎧を纏った歴戦の冒険者一行のすれ違いざまの鋭い視線。




阪東夕陽だった頃に読んでいた転生物の作品の一番ベターな世界観を、ようやく味わった気がした。




「どう?村より少しゴチャゴチャしているとは思うけど、良い街でしょう?」




アルが嬉しそうに聞いてくる。


俺が村を大好きだったのと同じく、アルもこの街が大好きなんだろうと思い返事をした。




「はい!凄く良い街です!」




するとアルは自分が褒められたかのように、にんまりとした笑みを浮かべた。




「ありがとう!王国騎士団として嬉しい!」




こうして騎士団一行は王都の中心、ネグザリウス王城の騎士団詰所まで進んでいった。






〜〜〜〜〜






「皆の者、まずはご苦労だったな!楽にしてくれ!」




騎士団詰所に着くなりガタイの良い中年の、明らかに身分の高い騎士が一行を迎えてくれた。




「斥候からすでに報告は入っているが、差異がないか確かめたい!誰でも良い、進言せよ!」




すると一行の中から1人の騎士が前に出て、今回の事を話し始めた。




(ねぇねぇアルさん、あの人って隊長さん?)




自分たちは後ろの方にいたため、ヒソヒソ声でアルに尋ねた。




(えぇ、私が所属する第2騎士団のノーツ団長だよ。)




第1騎士団が王の守護、第2騎士団が国内、第3騎士団が国外の問題を担当していると、バランさんから聞いたことがある。


ちなみにバランさんも第2騎士団だったはずだ。




そんなことを思い出していると、急にノーツ団長から自分までの間にいた人が左右に分かれ、ノーツ団長がこちらに歩いてきた。




「キミが・・・報告にあったユウくんだね?」


「は、はい」




穏やかだが荘厳な雰囲気に少し身構えたが、しっかり返事をした。


だが次の瞬間、ノーツは予想外の行動を取る。




「キミの大切な家族と村を守れず、申し訳ない。私がもっと早く、的確に動くべきだった・・・!」




騎士団の団長という肩書きを持つ人物が、田舎の村から出てきた子供である自分に深く頭を下げていた。


呆気に取られていると、隣にいたアルが先に反応する。




「団長!団長の責任ではありません!我ら小隊の責任です!事が起きる前に、我々が盗賊を討伐していれば・・・!」


「・・・いや、全ては団長である私の責任だ。ユウ君、すまなかったでは済まないだろう。だがどうか王国を憎まないでほしい。」




手遅れになったのは自分たち騎士の落ち度だと、この人達は本気で思っているのだろう。




だから自分の半分も生きていないだろう少年に向かって、この人は頭を下げ許しを得ようとしている。




伝えるべきことを伝えるため、ユウは口を開いた。




「・・・ここは素晴らしい国です。僕の村の皆もこの街の住人も、皆が幸せそうな笑顔で生活していました。」




ユウが話始めると、ノーツは顔を上げユウの目をしっかりと見て聞いている。




「そしてその笑顔は皆さんが作り上げて来たものだと思います。そんな素晴らしい方々に感謝こそすれど、恨むわけありません。」




ノーツにそれを伝え、次にアルを含めたこの小隊の皆に向けて言葉を出す。




「皆さん、僕を助けに来てくれてありがとうございました。僕はもう大丈夫です。」




誇りある騎士団の皆に、ここまで言えなかったお礼と気持ちを笑顔で伝えた。


言い終わると、アルを含め小隊の皆は全員敬礼を返してくれた。




「若くして・・・達観しているのだな、ユウ君。君が育った村に住む方々は、さぞ素晴らしい人達だったのだろう。」




ノーツが感心した顔で話しかけてきた。




「はい!皆優しくて温かくて、大好きな人達でした!」




ユウはそう答え、満面の笑みを見せた。それをみてノーツの顔も綻ぶ。




「そうか。・・・そう言えばユウ君。避難民用区画に住むのだったな。ならば後見人は私が・・・」


「いえ団長!ユウ君の後見人は私がなろうと考えております!」




ノーツ団長が話している最中に、アルが横から会話に入ってきた。




(ん・・・?後見人ってなんだ?)


ユウは自分に関係する知らない単語に戸惑うが、話は止まらない。




「うぅむ、可能だが・・・お前は大丈夫なのか?」


「はい!私はこの青年に期待しております!」




ほう。と、ノーツ団長がユウのことをじっと見つめた。敵意はないが相手を見極めんとする、鋭い眼光だ。




「確かに。早馬にて聞いてはいたが、精神だけでなく身体も傑物のようだ。」




ノーツ団長は少し笑みを浮かべて、その後アルに目を向けて言った。


「騎士アルよ!貴公にユウくんの後見人を任せる!清き少年に正しく豊かな生活を保証するのだ!」




そういって、ノーツは元いた場所へと身体を翻した。




はっ!とノーツの背中に向けて敬礼を行ったアルは、終わってからこちらにウインクをしてきた。




ゆっくり話を聞かないとなと思いながら、 避難民用の区域に案内してもらうために騎士団詰所をアルと共に出たのだった。

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