第14話 提案、そして・・・
「君には2つの選択肢がある。」
村の解体が終わった次の日、ユウは手頃な岩に座ってアルと話していた。
「ひとつ目はこの地に新たに家を建て、このまま暮らすこと。思い出深い土地を離れたくないかと思ってね。小屋が1軒ある程度なら、以前ほど魔物は来ないだろう。」
だが、とアルは続ける。
「その場合は今回のように無理をしないと約束してくれ。君は何のために皆さんに守られたのかを思い出して、傷ついたらしっかり手当をし、疲れたらゆっくり休んで欲しい。」
村の皆と同じ温かく、本心での心配を含んだ目でアルは言った。
「そしてもうひとつは我々と王都に来ることだ。王都にはこういった事態用の避難民の生活区域がある。そこは期間限定だが無償で住めるので、そこに来ることだ。」
どうかな?と選択を迫られるが、その時すぐに答えが出せなかった。
だがアルを含めた騎士の皆は、この村にずっと留まっていることはできない。
騎士達が帰る以上、答えを出せないイコールこの村に残るということになってしまう。
「・・・分かりました。少しだけ考える時間を頂きたいです。皆さんはいつ出発する予定ですか?」
「早馬を出しているものの、今回の件は出来るだけ早く本隊に報告をしたい。今日の昼過ぎには答えを貰えると助かるかな・・・」
申し訳なさそうにアルは言った。
アルは何も悪くない。村の皆を弔ってくれた上に自分の気持ちを汲んで選択肢を与えてくれた。
そんなアルを、騎士団をギリギリまで困らせてはじいちゃんやバランさんに怒られるな。
ユウの答えはすぐに出た。
「俺は―――」
~~~~~
「ようやく半分くらいだ!少し休憩にしよう!」
騎士の誰かがそう言い、みんな街道沿いの野原に転がり寝転んだ。
ユウも村で見るのとはまた違う空をぼーっと眺めていた。
「ユウくんは剣を習っていたの?」
突然アルから話しかけられた。
「えぇ、バランさんに少しだけですけど・・・」
腰に差していた2本の剣を見せながら、アルに答えた。
ここまでアルの乗る馬に二人乗りをしてお喋りしてきたからか、かなり距離感が縮まった。
口調も騎士が使うものでなく、近所のお姉さんが使うような砕けたものになっている。
「ユウくんは冒険者になるんでしょ?だったら経験として少し・・・私とも打ち合ってみる?」
ニコッと邪気の無い顔をしながら問いかけてくるアル。
だが、現役の騎士団と手合わせできるのは確かに魅力的な提案だ。
「ぜひ!よろしくお願いします!」
こうしてわずかな休憩の時間は、貴重な稽古の時間に変わった。
~~~~~
「はあぁぁぁ・・・なんとなく気づいてたけど、ユウくん強いね」
ユウの傍に座り込む同僚達を見ながら、アルは感嘆のため息をはきつつ言った。
アルとの模擬戦は今までで1番充実していた。流石エリート職の騎士というべきか、魔物や、あの盗賊頭よりも強さを感じた。
だが今のユウの敵ではなく、10打もしないうちにアルの剣を飛ばして降参させた。その様子をみていた他の騎士たちが、俺も俺もと模擬戦を申し出て今に至る。
「いや・・・でも今まで戦った中では、皆さんが1番強かったです。」
この場の絶対勝者であるユウが言っても傷口に塩を塗り込んでいるだけなのだが、ユウ自信それに気づいていない。
だがユウは思う。実際騎士たちと本気で戦った場合、善戦はするだろうが最終的に負けるだろうと。
盗賊たち10人と騎士を10人では全く違う。統率が取れた実力のある相手を複数相手取る力は、自分にはまだない。
この先もし自分よりも強い存在や、自分と同じレベルの集団にであった場合。そしてそれを乗り越えなければいけない場合、自分はまた変換スキルを使用するだろう。
(・・・変換候補を考えておいた方がいいかもな。)
まだまだ自分は最強じゃないことに気付けた模擬戦の後に、アルの後ろでそんなことを考えていた。
そうして色々と物思いにふけっていると、アルがこちらを振り返った。
「見えたよ、王都ネグザリウス!」
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