第4話 誉れ高きユニークホルダー・・・のはず
バランに打ちのめされるたびに、ユウはこの世界のスキルについて思い出す。
この世界で人は4つに分かれる。『シングルホルダー』『ダブルホルダー』『トリプルホルダー』、そして『ユニークホルダー』だ。
そしてスキルには『戦術スキル』『魔術スキル』『学術スキル』の3種類がある。
まず基本的に多くの人間は1種類のスキルしか持っておらず、シングルホルダーと呼ばれている。
『戦術スキル』を持っているなら戦士職、『魔術スキル』に秀でているなら魔法使いというように、スキルの系統によって職業を決めるのが一般的だ。
その戦術スキルの中にも剣術や槍術などが枝分かれして存在し、戦術スキルの剣術を持っているなら剣士、魔術スキルの回復魔法を持っているなら白魔導士と、そういった選び方をする。
そしてスキルは生まれながらにして決まっているもので、鍛えることは出来ても増やすことは出来ない。
自分の持っていないスキルの職業を選んでも、成功することは無いのだ。それを揶揄する「大商人、剣に生きる」ということわざもあるほど、スキルと職業を合致させることは当たり前のこととされている。
また稀に2種類のスキルを持っている優秀な人間が生まれ、そういう人はダブルホルダーと言われて専用の職に就く。
バランが以前務めていた騎士という職業も、学術と戦術のスキルを持っていないとなることが出来ないエリート職である。
となればユウが勝てないのも仕方ないのではと思うが、実際それは言い訳にならない。スキルは加齢とともに消失するからだ。
今やバランは元騎士であって、騎士時代にできた多くの事を、今やできなくなっている。本人曰く、その辺のシングルホルダーと変わらない程度の強さしかないらしい。
そしてそのダブルホルダーと一線を画すのが、トリプルホルダーと呼ばれる化け物だ。3つのスキルを全て使いこなし、様々な偉業を成し遂げてきた。
割合で言うと100人に1人がダブルホルダー、1万人に1人がトリプルホルダーだ。トリプルホルダーだった時点で、貴族などが囲い込みを始めるらしい。
そして最後に『ユニークホルダー』だが、ユニークホルダーはそれぞれ独自のユニークスキルをもっている。
『何故か分からないが出来てしまう』という、概念そのものを捻じ曲げられるのがユニークスキルであり、ユニークホルダーは総じて他とは比べ物にならない有用さを持っている。
例えば軍略に異常なほど特化した場合もあれば、総合的な格闘術に長けている場合もある。また、勇者と呼ばれている存在もユニークホルダーだそうだ。
そんな誉れ高きユニークホルダーであるユウが、なぜバランに手も足も出ないのか。それはユウ自身が、ユニークスキル“変換”の効果をまだ把握していないからだ。
日々の生活やこうした稽古によって判明することを期待しているが、半年経った今でもこのスキルはうんともすんとも効果を見せないのだ。
いったい変換とはどんなスキルなのか?何を変換するのか?さまざまな考察をしたが、全く予想ができなかった。
足は多少速いが、ユニークスキルの効果はこんなものでは無いと信じたい。もしそうであれば、前世と同じく使いっ走りしか出来ない人生になってしまう。
そんなことを悶々と考えていると、バランから再度声がかかった。
「・・・まぁ冒険者などにはなれずとも、多少剣が使えれば儂のように小さな村を警備する程度なら出来るじゃろうて、そんなに落ち込むでない。」
痛みからか悔しさからか、毎度の事ながら涙を滲ませるユウに対してバランはそう言った。
もしかしたらユウがバランを好きでない理由は口の悪さだけでなく、この世界に来て初めて厳しい現実を突きつけてきた存在であるからかもしれない。
「しかし、剣を振る前の動きは俊敏で良いものなのに、肝心の剣術がからっきしとは・・・やはり警備でなく使いっ走りが向いとるのかのう?」
・・・・・やはり口の悪さが純粋にムカつくんだ。そうに違いない。
そう考えてユウは立ち上がり、この世界で生き抜くための剣の稽古を今日も続ける。
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