2章1話 依頼探し
シオンは空中に浮かぶ画面とにらみつけるように見ていた。
集中のあまり、前かがみになって画面を注視している。だが、よく目をこらしてみても、シオンが欲しい情報が見つかるわけではない。
魔法空調がごうんと時々音を立てる以外は事務所は静かなものだった。まだ使えるが、古い魔具である空調だ。どこか壊れているところがあるのか、時々突然大きな音を出す。
シオンとフレイは二人、横に机に並んで空中画面を確認していく。
集中のあまりその間シオンとフレイの間に会話はない。
あまりに静かだったので、事務所の片隅に丸くなるフィンはよく眠れた。だがおやつの時間を思い出し羽根つきトカゲのフィンは自分に用意された屋根付きのベッドから這い出す。
クゥエ!
羽根つきトカゲのフィンが不満げに大きな声で鳴く。おやつの時間を忘れられている。
そして、シオンの肩に乗り、シオンの髪を引っ張る。フィンが甘えるとき、注意を引くときにやる癖だ。
フィンはそこにいたるまで、テーブルに乗って、シオンを見つめたり小さく鳴いたり何とか意識を向けてもらおうとはした。
だが画面を見つめるシオンは、生返事を返すだけ。
業をにやしたフィンがシオンの肩に乗ったわけである。
羽根つきトカゲのフィンは普段は猫ほどの大きさに縮んでいる。首輪を模した魔具がそれを可能とする。
それでも猫ほどの大きさはある。
重量のあるフィンが肩に乗ったことでシオンはやっとフィンに意識を向けた。
「フィン。今ちょっと忙しいんだけどな」
シオンがフィンの頭をなでる。
クゥエ!フィンは何かを主張する。だが悲しいかな、羽根つきトカゲには人間の声は出せない。そしてその小さすぎる前足では字も書けない。
だが人の心の機微に敏感なシオンはフィンの言葉も大体理解できる。
「おやつの時間だな。分かった、今出すよ」
シオンがフィンの頭をなでる。その場で凝り固まっていた首と肩をぐるりと回して伸びをする。まじかで画面を見ていたため目がかすんでぼやけている。
視力はたいていの場合は治癒魔法で治せる。
しかし、それにお金をかける余裕がないので、なるべく病院に行かずに済んだほうがいい。
シオンは、壁から目を離し、この仕切られた部屋で、一番遠くにある本棚に目を向ける。
そこにはフレイの蔵書であるルーンの呪文構築学関連の本が並んでいる。
その背表紙のタイトルを見て、目のピントを合わせる。そうすれば、少しは視力の調整になるのではという無駄な努力である。
クゥエー!羽根つきトカゲのフィンがせかすように鳴く。
「はいはい。今あげるからな」
シオンはフィンをなでながら席を立つ。
「フィンがおやつを催促する時間か。しかし今日は冷えるな」
フレイもフィンとシオンが動き出したことで画面から目を離す。事務所、というより仕事部屋にかけられた時計を見ると時間は二時ぴったりだった。フィンの腹時計は正確だ。
寒さを感じたフレイは魔法空調のコントローラーに手を伸ばし、空調の温度を確認する。
温度設定は十八度。
秋が深まり、気温はだんだん寒くなる季節だ。
もと倉庫であるこの事務所兼自宅になぜもともとこの空調がついているのかというと、中に温度管理が必要な商品を保存していたためらしい。
シオンとフレイは確認しなかったが十中八九食べ物だろうと思われる。
クラウドナインでは食品はすべて空路の飛行艇かポータルゲート転移門で運ばれる。そうした食べ物が痛まないように温度管理が必要だったのだろう。
「我慢できない温度ではないな」
フレイは温度を上げるべきか、考えた末に、何も変えずにコントローラーを机に置きなおす。
クラウドナインでは、魔力だけは安い。魔力の湧き出すパワースポットであるクラウドナインは常に潤沢な魔力を保有している。
だからこそ、魔具の作成を一大産業としてなりたっている街なのだ。
ただし、その反面、食品と家賃がとても高い。
フレイとシオンが元倉庫を使っているのも、その辺の事情がある。
つまり彼らにはぜいたくを言うほどのお金はないのだ。
「仕方がないよな。冬にはもっと設定温度を上げなくてはならないしな」
シオンが同意して言い、台所へ向かう。
事務所兼自宅は、部屋が壁によって分けられていない。つまりはリフォームをするお金さえないのだ。
そのため空色のちゃちな仕切りでもと倉庫を分割している。
事務所としている区域から、台所へ向かう道は、普段は隠している。
だが実際には仕切りを移動させれば遠回りせずに台所に行ける。つまり事務所と台所は隣同士でしきりがへだてているだけなのだ。
だから人がいないときは台所へのしきりを外して台所に向かうのがシオンの常だった。
ちなみにフレイは飛行魔法が使えるため、仕切りの上を飛んでいくことができる。
シオンはいつものようにしきりをずらして台所に入る。
細長く狭い台所だ。使い込まれた鍋や、フライパンがあり、フレイたちが自炊していることが分かる。
なんといってもクラウドナインでは食品は高く。加工品はさらに高くなる。
だから自炊せざるをえないのだ。
シオンが台所に出て左に折れる。一番奥の壁際に冷蔵庫がある。
シオンは冷蔵庫をあけて、皿にもられた肉を取り出す。
そして調理場であるテーブルに乗せる。
クーエー。フィンはそのおやつを見て残念そうな声で鳴いた。
「今日のおやつはとりささみだ。優良なたんぱく質だぞ」
シオンが言うが、つまりは脂身のない、ぱさぱさの肉である。
フィンは恨めしそうに皿の上の肉を見る。
「俺たち、あんまりお金に余裕がないから。ごめんな。俺たちも今日の朝飯は鶏ささみだったんだ」
シオンが言い添えると、なら仕方ない、とフィンは皿の上の肉をつつき始める。
「仕事でもうかったら、何か買ってあげるな」
シオンがご飯を食べるフィンの頭をなでる。
「そのためには、きちんと働いて食い扶持を稼げよ、フィン。魔物を倒せばいいものが食べれる」
フレイが隣の部屋からはっぱをかける。しきりで分けているだけなので、台所の声も素通りなのだ。
クゥエ!羽根つきトカゲのフィンが気合を入れるように、鶏ささみを食べる。戦をするには腹を満たさねば、という気合である。
「お金が入れば、フィンに果物でも買ってやりたいな」
シオンが申し訳なさそうに言う。
果物はフィンの好物だ。
だが野菜類などの食品と同様に、というよりも野菜類よりさらに果物は高いのだ。
そして、事務所のインターフォンが鳴った。
「アルト、か?もうそんな時間なのか?」
シオンが時計を確認したうえでとりあえず、入り口に向かう。アルトが来るにはまだ早い時間のはずだ。
それでも来客が依頼主ではなく、アルトだとすぐに思うのは、それだけシオンとフレイに依頼を持ち込む人間がいないことを意味している。
ただし、お客さんであることも期待して、台所から事務所を通って玄関に向かうまでに事務所と台所の仕切りを直して隠す。
わずかな期待をもってシオンが扉を開けると、そこにいたのはやはりアルトだった。
背中にやけに大きく、重そうなリュックを背負っている。
扉を開けると、外の空気が入ってくる。
冷たい秋の風。その寒さで、シオンは事務所の空調は一応は部屋を暖めていたのだと知る。あくまでも外と比べればまし、という様子ではあったが。
「シオンさん、お疲れ様です」
「おはよう、アルト。って言ってももう昼だけどな。俺たちは起きるのが遅いからついこの時間帯でもそういってしまうな」
アルトが礼儀正しくあいさつし、シオンがアルトを事務所に案内する。
「仕事が見つかりましたか?」
「ぜんぜんだ。アルトに期待している」
「頑張ります」
アルトが苦笑する。
「ずいぶん早いな。校舎はもう修復済みなんだろう?学校はどうした?」
フレイが時計を確認してアルトに言う。実際まだ時刻は午後二時ごろ。そして平日だ。高校生のアルトはまだ学校にいる時間のはずだ。
そう、シオンとフレイが情報収集に契約したアルトは、まだ高校生だ。
ある事件をきっかけに出会ったアルトに依頼の達成の引き換えにアルバイトに来てもらっらうことにした。
それは正規のアルバイトにお金を払えないシオンたちの懐具合と、高校生に情報収集を頼むほどの苦境を語っている。
「延期になっていた魔力測定の日なんです。魔力測定の日は、そのあと授業がないんです」
アルトが自分のコートをラックにかけながら説明する。
「魔力測定か。あの後ウィルはどうしている?学校にいられているか?」
シオンが心配顔で聞く。
アルトの寮のルームメイトであるウィルは、彼らの通う学校で大きな事件を起こした。
それがきっかけでシオンとフレイはアルトと出会った。
そしてウィルが学校を破壊しかけた理由が魔力測定だったのだ。
「大丈夫です。ウィルの父親が、息子のしでかしたことを公にされるのをおそれて、多額の寄付をしたそうです。理事長としては、旧校舎まで修復できて逆に喜んでいると思います」
「だが、学校を壊そうとしたことでいじめられたりしていないか?」
「それも大丈夫です。寮生たちみんなでウィルのバックアップをしていますから」
シオンの心配は杞憂だとアルトが言う。
「それは確かに。あの寮生たちを敵に回したくはないな。なんというか、団結力が固いというか。それを聞いて安心した」
シオンが前に魔物退治に協力までした寮生たちを思い出して、安堵する。
「それに、魔力測定が嫌いな生徒はかなり多いですから。同情する人も多いです」
アルトが言う。
「学校とかだと、魔力の高低は、スクールカーストに影響するしな」
シオンが深くうなずく。シオンは魔力なしだ。魔力が少ないどころかほとんどない。だからそういう気持ちはよく理解できるのだろう。
「そうなんです。仕方がないですが、生まれつき決まっているものだから覆しようもないですから。イケメンに生まれたい、ぐらい覆すのは難しいですよね」
「そういうアルトは魔力はどれぐらいなんだ?」
シオンが興味をもって聞く。
「中の中。人並ですね」
「なら、魔人になれる可能性だってあるだろう?」
シオンが羨ましそうに言う。魔力なしが魔人になることは決してないのだ。
「そりゃまあそういう期待をする生徒もいますけど。でも適合するかどうかも運みたいなところがあるじゃないですか。だから俺はあまり期待していません」
アルトが言う。
「魔人になれないのは別に構わない。でも魔力でなれない仕事もあるのは不公平だよな。別に俺は魔力格差是正主義者ではないけど。彼らの言い分も理解はできる」
「ハンターも魔法院の学校も、ある一定の魔力より低いものは入れないのは確かに不公平だとは思います。それでもシオンさんはハンターになっているじゃないですか?」
アルトがシオンに聞く。
「これは試験運用プログラムみたいなものだからな。俺たちがうまくやれば、もしかしたら、ほかの魔力なしにもハンターの仕事が開けるなら、いいなとは思う」
「なら、まずは仕事を探せ。このままでは食事にも困ることになる」
フレイが正論を言う。
「そうだな。アルト、頼んだ」
シオンが言い、アルトが頭にカバンから取り出したヘルメットのようなものをかぶる。
そして、カバンからさらに取り出したのは『アクセス』だ。
「アクセスを持ってきたのか?重かっただろう」
シオンがアルトがリュックから取り出すのを見て驚く。
『アクセス』はリンクの上位互換的存在だ。
携帯型端末であるリンクと異なり、据え置き型の端末だ。なぜかというと単純に持ち運ぶのが難しいほどに重い。
内蔵された魔力クリスタルが大きいためである。
リンクと同じくデータスフィアにつながるためのものだが、一度に出せる空中画面も多い。
「一応アクセスはこの事務所にもあるぞ」
フレイが口を挟む。
「でも、機能が低いアクセスだろうと思ったので、自分で持ってきました。ツールが違うだけでパフォーマンスもけた違いになるんです。とはいっても毎回運ぶのは難しいので、事務所においといてもいいですか?」
シオンたちが持っているものが機能の低いアクセスであるというアルトの言葉は確かに正しかったのでフレイもシオンも反論できない。
アルトは『アクセス』を運び、事務所の広めのスペースが開いた場所に据える、そしてデータスフィアへの接続端末を起動する。
そして持ってきた重そうなヘルメットをかぶる。
「それは、『マインドカーソル』、か?そんなものまで持ってきたのか?というかアルトはそれを使えるのか?大人でも難しいと聞くぞ」
シオンが驚く。
「そうです。画面の情報処理ではかなり時間がかかりますけど、こっちのほうが意識を動かしてアクセスするので、情報処理に向いているんです」
アルトが自慢そうに言う。実際自慢できるだけの理由がある。
マインドカーソルはデータスフィアに意識だけでアクセスする端末だ。
脳に高い情報処理能力がないと使えない。人を選ぶ魔具なのだ。
「アルトは、別に魔力が中でも普通にすごいと思う」
シオンがしみじみという。
アルトが意識を向けてアクセスしたのだろう。事務所の部屋からクラウドナインの都市の立体映像が浮かびあがる。
シオンとフレイにもその地図の場所が分かる。この事務所周辺を示す地図だ。
「とりあえず、シオンさんとフレイさんから近い地点から調べていきます」
アルトが意識を向けると、いくつかの赤い点が現れる。それは魔物の位置情報を示している。
アルトが意識を向けて次々と周辺の魔物の情報を脳内に表示させる。
事務所の中心に現れた都市の空中にピンが動き回り、魔物の情報画面が浮かんでは消えていく。そのスピードたるや、フレイとシオンの読むスピードの比ではない。
そして、アルトはいくつかピックアップした魔物の情報を空中画面をシオンとフレイにふり渡す。シオンたちはその画面を読む。
「これはどうですか?」
「地上系の魔物だからな、広めの道路が近くにないとだめだ」
「なるほど、飛行系がいいんですね。これは?」
「魔物のランクが高すぎて受けられない」
「飛行系の魔物ですけどこれは?」
「それは、損害補償金が低い。つまりフレイが魔法をぶちかましたときに自分たちの報酬からひかれる」
「これは?」
「それは別のハンターが予約している」
アルトが次々に画面を飛ばすが、フレイとシオンに受けられるものはなかった。
そしてアルトがため息をついて、マインドカーソルを外す。
「条件が、厳しすぎる…」
「なんか、ごめんな?」
シオンが謝る。彼らにもその自覚はあった。
「つまりは、飛行系の魔物を倒したい。けれど飛行系の魔物は逃げるので強いのが多い。そしてランクが低すぎて高いレベルの魔物は倒せない。というより倒せるのにランクが低いのはどういうことなんです?」
アルトが嘆息する。
「つまり、ランクをあげるのには弱い魔物を倒さねばならない。でも俺たちに倒せる弱い魔物があまりいない」
フレイが事実を述べる。
「それでフレイさんの攻撃魔法が強力なのに、ランクが低いんですね。フレイさんたちが底辺のハンターな理由がやっとわかりました」
アルトの疑問が解けた。
フレイとシオンはアルトと出会ったあの事件の時。
レベル十の魔物を簡単に倒して見せた。そのことと、シオンとフレイのランクが合わなくて不思議ではあったのだ。
「というより、あの日の報酬は、どうなったんですか?」
アルトが聞く。あの時は最高位のレベルの魔物を倒して見せたのだ。もちろん報酬もそれなりに出るはずだ。
「借金の返済が間に合ったくらいだな」
シオンが目をそらして答える。
「困窮度が俺の思ったよりひどい…」
アルトは仕事を何とか見つけねば、と心の中で闘志を燃やす。フレイたちの未来はアルトにかかっているのだ。
「とりあえず。一度休むか」
シオンが立ち上がる。
「コーヒーなら、俺が淹れます」
アルトが立ち上がろうとする。
「いいよ。アルトは情報収集してくれて頑張ってくれている。だからコーヒーぐらい淹れる」
シオンが手を振って笑っていなくなる。
「とりあえず、ニュースでも見るか」
フレイが事務所のホロスクリーンを起動させる。
画面はニュース番組だった。
シオンが珈琲の豆を挽く音が響く。あまりアナウンサーの声が聞き取れず、フレイが音量を上げる。
ニュースはちょうどアートボマーのことを伝えていた。
イケメンと言われてファンの多い男性アナウンサーがトップニュースとして伝えている。
『魔法院のアートボマーの調査に進展があったと今日発表されました。魔法院はアートボマーに使われている魔法爆弾の魔力クリスタルが以前空中バスの車庫より盗まれたものである可能性が高いと結論付けました』
「最近よく聞きますね。アートボマー。裕福なエリアで魔法爆弾を爆発していて。俺たち寮生はあまり関係ないけど生徒の中でも裕福なエリアに住んでいる人たちには注意喚起はありました。でも注意したからといってよけられるものでもないですけど」
アルトがニュースを見ながら言う。
『ごぞんじの通り、アートボマーは魔力が少なくとも、魔力クリスタルがあれば魔法は使える。そのことを示すために、爆弾を仕掛けていると声明を出しています。ゆえにこれは爆弾テロでなく、アートなのだ。とモットーをかかげています。魔法院はその声明をもとに、魔力の低いものが犯人である可能性が高いと調査を進めているようです』
「アートボマーには魔力クリスタルを盗めたはずがない。そんな力があるなら、魔力格差是正主義に傾倒しないはずだ。ならば、闇市で魔力クリスタルを買った、ということだろうな。それなら魔法院は魔力の低い裕福なものを調査するはずだ」
フレイが自分で分析する。
「魔力格差を是正したいなら、その人が裕福である可能性は低いんじゃないですか?魔力による職業の制限を直したいなら。稼ぎのいい仕事につけていないから不満なんじゃないですか?」
アルトが矛盾点をつく。
「そうなんだ。そこが疑問だ。それで魔法院としても調べがなかなか進んでいないらしい」
珈琲の乗った盆を手にシオンが事務所に戻ってくる。
「シオンさんたちは、ニュースになるような仕事はしないんですよね?」
アルトが聞く。
「そうだな。俺たちは一応訳アリだからな。俺は魔力なしで、フレイは未認可の魔人だ。できるだけニュースになるような仕事は受けたくないのは本音だ」
「なら、あの仕事はダメですね。シオンさんに向いている仕事だと思ったんですけど」
アルトが一人納得してうなずく。
「いや。だけど今は仕事を選べる身分じゃない。一応どんな仕事か聞いていいか?」
シオンがアルトの言葉に期待して聞く。
「これです」
アルトは頭の中でマインドカーソルにアクセスし空中に画面が表示される。
それをシオンとフレイの両方のリンクに送った。
シオンはその内容を読む。
「…確かに俺に向いている、かもしれないな。それにニュースに関係はあるが直接的ではない」
シオンが先に読み終えてうなる。
「いつの間にこんな依頼を見つけたんだ?」
フレイがアルトに聞く。
「さっき近隣の依頼をばーっと見た時に、意識にひっかかったんです。それを思い出したので」
アルトが簡単そうに言うが、それはつまり一瞬流し読んだ依頼を覚えていた、ということだ。
「アルトって、案外頭がよかったりするのか?」
シオンがアルトの記憶力に戦慄する。
「あのクラウドナインの学校、アカデメイアは、結構な難関校なんですよ。俺は一応は特待生です」
アルトが胸を張って言う。
「なんで頭がいいのに、いつもあんな無謀な行動をとるんだ?」
フレイが失礼な疑問を口にする。
「よく言われます。頭いいのに行動が残念だって」
アルトが照れたように言う。
シオンとフレイは自分たちが雇った高校生が、ただ者でないようだ、と思い知ったのであった。
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