第17話 声に導かれて

 ―――やあ、久し振り。


「今度は……お前、か。」


 ―――やっと帰ってきてくれたね。ずっと、ずっと待ってたんだよ。


「私は……帰ってきた、訳じゃ……。」


 ―――そうなの?


 ベッドに横たわる私に何かが絡みついてくる。壊さないように優しく、寒さから守るように。


 ―――生きるの、辛い?辛いなら私の所においで。


「……私、は「カルストゥーラお嬢様!!」

「ルー、ナ……?」

「大丈夫ですか💦」

「主よ、これを。」


 ルーザに支えられながらルイスからココアを受け取る。

 ……味が、分からない。


「……味は?」

「……しない。」

「失礼致します、お嬢様。」


 額に手を置かれ、少し意識が朦朧とする。


「……風邪、ですか?」

「ええ……。お嬢様、お風呂に入りましょう。熱が出ていないうちに。」


 そこからはあまりよく憶えていない。ただ、気付いたらまたベッドで横になっていた。

 ルーナが優しく手を握ってくれる。


「ごめんなさい、カルストゥーラお嬢様。ゆっくり、お休み下さい。」




 ふと目を開ける。知らぬ間に裸足で幼い頃に1度だけ迷い込んだ森によく似た所を歩いていた。

 ……寒い。冷たい。これは……夢、じゃないのか。


 ―――おはよ。


 お前が……呼んだ?


 ―――うん、そうだよ。凄く辛そうだったし、思ったよりも近い所に居たからね。……ほら。


 傍に居た白くて赤い目を持った狐が鳴く。

 そして、森のような数へと膨れ上がる。


 ―――おいで。おいで。


 人の姿を象った狐達が私の手を引いていく。

 ……眠たいな。


 ―――おいで、おいで。


 ……お休み。

 謎の睡魔に意識を呑み込まれ、視界が真っ暗になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る