第10話 成り行きで

「……所で、種族は?人間にしか見えんが人間が持たない魔力を持ってる。」

「九尾ですよ。ただ、この手錠が人間に変化させられる奴みたいで。……本当はもっと男前なんですよ?口調もこんなんじゃないんですけど……自力じゃ外せなくて。ねぇ、旅人……じゃ、ないか。え、えっと……なんて呼べば?」

「あー……もう好きに呼んでくれ。今はもう出来るだけ何もしたくないんだ、私は。あまりにも気持ち悪い物を見てしまったばっかりに、気力とSAN値を思いっきり削られてしまった。」


 帰ったらとりあえずシルアに甘えよう。きっと、何か良い案をくれるはず。


「……お名前は?」

「カルストゥーラ=ルエンティク。ここからかなり遠くにある妖零樹の森の……まあ、覇者で良いか。とりあえず、あの森の頂点に立つ者だとははっきり言える。」

「ああ、あの契約を決して違えない気高き蛇九尾の神様ですか。」

「……人によって呼び名も、印象も変わってるんだな。つくづく呆れるよ。」

「僕は九尾のルーザって言います。行く所もないので、連れていってくれませんか?」

「家は?家族は?私の所に来ると、2度と外界には戻れんが。」

「わあ、思ったより独占欲強いんですね。良いですよ、むしろ大歓迎です。僕はまだ生きていたい。でも、家も、家族も、あの愚王に焼き払われちゃって、行く所もないんですよ。」

「……子供の癖に、全く悲しそうじゃないな。」

「恨んでますから。……僕の家族、自分達が助かる為に僕を捨てた。捨てる前はまるで奴隷のように扱われていましたし、あんなのは死んだ方が良いですよ。……それに、貴方は僕よりも賢いでしょう?どうか、呪いについて僕に色々教えて下さい。……僕が、気に入らない奴を呪い殺してあげますから。」


 ……アハハ。


「……やっぱり、狂ってるくらいが丁度良い。」

「貴方も相当ですよ。」


 ルーザを縛る鎖を砕いてやるとルーザに頭や腰から黒い耳と9本の尾が現れ、今度ははっきりと男性だと分かるくらいに、しかもかなりの美形男子へと変化する。


「へ~……。」

「あ、その顔信じてなかったな。酷いな、ご主人様。俺は嘘吐いてないのに。」

「本当に口調変わったな。一人称も。」

「だってあの愚王、あの話し方しないと頭のねじぶっ飛んで気持ち悪い事しだすんだからしゃーねぇじゃん。俺だってやだよ。」

「……で?走れるのか?」

「無理です。」


 ……面倒くさい……。

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