第9話 巫女……?
それから数十分。
ルイスの使い魔からは攫われた6人のエルフの子等は人間の元ではなく、ここから65km離れた妖狐の国の、しかも王宮でそこの王と話していたと言う。
シルアの使い魔からはその王宮の牢獄に。
何方の証言も全く同じ意を含んでいる。つまりは、妖狐が人間に何らかの脅しを掛けてエルフの子等を攫ったと言う事だ。
で、あるならば。
「人間の所へではなく、お前達妖狐の所に行くのが通りであろう?」
つまりは、時間の無駄だった。
単身で堂々と妖狐の国の空中にあった結界をぶち破り、そのまま王宮の、王の前に重力が赴くままに飛び降りてやった。
あーあ。この天井、直すの大変だろーなー。
「な、な、な……!!?」
「やあ、妖狐の王。下賤で下等な人間を利用してまで手に入れた6人のエルフの子供、返してくれるよね?」
魂さえも凍らせるような勢いでニッコリと微笑んでやる。
こちとら仕事なんだ、とっとと返せ阿呆。
「な、何故それを……!?」
「あの地区のエルフは“全て”、私の庇護下なんだよ。もう契約の対価も払ってもらっているし、とっとと連れ帰って茶でも飲みながら読書をしたいのだ、私は。如何なる相手であろうと契約は契約。破るとうちの右腕もうるさいし、私自身も約束1つ守れん奴は大っ嫌いなのだ。……ああ、そうそう。そういえばお前と昔に契約を交わしたな。ん……あ、不可侵だったな。100年程前のお前の先祖と交わした契約。確か……永久の不可侵を。ちゃ~んと書物として残した物もあるはずだが、もはや捨てた訳ではあるまい?それに、王になる時に先王から聞かされているとも思うが。60年程前に、1度オークの軍を追い返してほしいと言う願いも正当で相応の対価と引き換えに叶えてやったが。」
「……。……!!?お、お前が、あ、あの邪王なのか!?」
何だそれは。
「……邪王?それが私の呼び名か?随分と皮肉な名を賜ったものだな。私は契約と対価さえしっかり守ればちゃんと願いを叶えてやったし、交渉されれば快く受けてやったと言うのに。」
「う、うるさい!あ、あの子等はあいつに必要なんだ!!」
「あいつ?」
まーた変なのが現れたな……。
「あれは、巫女に捧げる!!我等妖狐の繁栄の為に!!」
妖狐の繁栄、ねぇ……。
「へ~……。で、その巫女ってのは?」
「貴様に知る「もう良い。」
火を点け、骨も残らない程燃やし尽くす。
阿呆の話なんぞ聞きたくもない。
「おい、そこの女。」
「ひっ。」
……あれ、人間?ここは妖狐の……あれ、猫又も居る。……まさか。
「……あの王、女ったらしか?」
女共(何故か王の間なのに6人も居る。何故護衛じゃないんだ)は焦ったように頷く。
……うーわ。遊女かよ。
「……さっきの話に出た巫女とやらの情報を持っているか?持っていれば教えてくれ。代わりにこの国から出してやる。」
あー……。気持ち悪い事を知ってしまった。この記憶を消してしまいたい。
ルイスとシルアの情報通り、6人のエルフの子等は地下牢で睡眠薬を飲まされて眠っていた。とりあえず影の中に放り込み、女共に(勿論先に国の外に放り出した)聞いた秘密の道を通っていく
……巫女、ねぇ。
『そこに……誰か、居ますか?』
少し驚いて足を止め、耳を澄ます。
『この匂い……ここら辺でしない、草木の匂いがします。誰か分かりませんがどうか、どうかここから僕を連れ出して下さいませんか?僕は、僕はもう誰も殺したくないんです。どうか、お姿だけでも。』
「……ハァ。」
私は……甘くなったらしい。
「扉から離れていろ。」
扉から気配が離れたのを確認すると手加減なく扉を思いっきり蹴り飛ばす。
あー、何かちょっとだけスッキリした。
「……わあ、凄くお強いんですね。」
声の方を見ると部屋の端にある布団の上にちょこんとお行儀良く座る十二単を着せられた少年とも少女とも見れる幼い子供が居る。
……どっちだ?それに、種族は……人間?いや、でも魔力が……。
「……お前か、呼んだのは。」
「はい、僕です。良かったぁ……。ここの王様、すっごく怖いんですよ。それにとっても気持ち悪くて。僕、男の子なのにこんな服着せられちゃって……。」
ああ、やっぱり男なのね。
「……それには強く同意する。」
「あ、もしかしてあの王様に会ったんですか?……あれ、でも血の匂いが……。」
「殺してきたのさ、あの愚王を。あまりにも不愉快でな。なんだ、不満か?」
「いえ全く。むしろ、感謝したいくらいですよ。」
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