第1話 永い眠りのち堕天使

『―――!!―――!!』


 ……何だ、騒がしい。どうせ愉しい事じゃないんだから、起こさないで。


『―――!!―――!!』


 ルイスまで……。何、王国軍でも攻めてきた?あんな連中、2人で―――


「主、堕天使がっ!!」

「だ、堕天使!?」


 堕天使。

 それは元は天使で神の使いとして存在し、死者を天界に連れていく為にしか地上に現れないのだがその際に翼をもがれたり、人間から穢れを受けて2つある白い翼の内片翼を黒く染められ、死んでも天界に還れず、朽ちるのを待つしかない、哀れな天使。

 さっき述べたように、死者を天界に連れていく為にしか降りてこない為、捕獲が難しい。

 ……なのに。


「だ、堕天使ってどういう事だ!?」

「わ、分かりませんわお嬢様💦と、突然屋敷の中庭に落ちてきまして……💦」

「とりあえず空き部屋にて治療を行っておりますが……如何致しましょう。」


 ……そういえば。


「ルイス、堕天使の羽って高く売れた気がする。」

「ええ、それは物凄く。……嗚呼、成程。捕らえて羽が回復する度に売り払うのですね?」

「成程!そういえば、近頃は迷い人が居なかったので財布の中も寒くなっておりました。」


 さてさて、どうしてくれようか。

 これは面白そうな事が舞い込んだ。


「ルイス、その堕天使の性別は?」

「女にございます、主よ。……しかし、どう致しましょうか。半永久的にその翼を売って、かつ苦しめたくはありますが……。」

「とりあえず、優しくしてやると良い。……飼い慣らすか、首輪を着けるかは後で決めるようとしよう。」


 そうだ、まずは生きてもらわねば。


「状態は?」

「あまり良くありませんね。どうやら、狩人に鳥とでも間違えられて射られたのでしょう。背中に何本も矢が刺さっておりましたので応急処置は致しましたが……。」

「なら、本格的な処置をしてやりなさい。私はこれからの事を考える。それと……ルイス、食事を。どれだけ眠っていたかは知らんが腹が減った。」

「54年と23か月と4日でございます。」


 かなり眠っていたな……。


「嗚呼、愉しくなりそうだ。」

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