第193話 使節団の編成
「しかし、
「
「それ以上の行軍になるとは考えたくないけど……。航空戦力、できればギガンティアを派遣できれば悩むことはないんだけどねぇ」
「さすがに、ギガンティアの派遣はやり過ぎでしょう。属国にしたいわけではありませんので、最低限の外交儀礼は必要かと。垂直離着陸ができるのであれば、一考に値しますが」
「私も同意見よ。たとえ同じ国力同士でも、あんな戦略兵器を頭上に飛ばされたくはないわね。うーん、そうなると、地上移動型の動力炉搭載機を随伴させるしか無いのかしら」
レブレスタへの使節団。
この編成に、
彼女らは、必要な電力を自前で賄うことが可能である。
食事量は増えるが、大食いという範囲で済ませられるレベルである。
ただ、戦闘能力は著しく低下する。
戦闘機動を行うには補助演算装置が大電力を必要とするうえ、
マイクロ波給電が可能であれば悩む必要はないが、地平線の向こうは範囲外だ。
「核融合炉搭載の大型の電源供給車を随行させる必要があるでしょう。また、少数行動用に小型の電源車も必要でしょう」
「レブレスタ内で燃料供給できるんだったら、内燃機関搭載型で長期行動が可能になるけどねぇ」
さすがに、石油技術が広まっていないこの大陸で、それを望むことは出来ない。
であれば、何らかの方法により、独自に動力を確保する必要がある。
「宇宙発電で直接上空から供給できればいいんだけど」
「不確定要素が多すぎますので、実現には数年ほど必要です」
この
宇宙開発は特にその危険性が不明で、十分な防衛戦力を整えないと手出しできない、というのが現在の結論である。
具体的には、多量の航空戦力及び海上戦力を整えた上で、本拠地から数千km以上離れた場所から実行したいのだ。
「うーん、電源車を開発するしかないかしらね。あるものを使うってことなら、例の燃石を燃料にしてもいいわ」
「……そうですね。計算しました。小型の発電機用途であれば、石油燃料よりもエネルギー密度は高いと結論できます。
「核融合炉搭載は可能かしら?」
「横幅を大きくするのは難しいと思われますので、前後に装置を配置するとなると、そうですね、おおよそ40m程度の長さは必要になります。多節連結型になりますが」
随行機としては些か大げさにはなるが、他国への派遣部隊としてはそこまで突飛でもないだろう、と
「多脚は見栄えの問題もありますので、多輪型ですね。熱機関型は不整地走行を考え、多脚としたほうが良いでしょう」
「まあ、長期作戦だし、物資もたくさん必要よね。うん、食糧その他生活必需品ということでごり押しましょう……」
こうして、レブレスタに派遣される部隊の編成が決まっていく。
対外用の
多脚戦車に、大型電源供給機。
物資用に、多輪輸送車。
これらを中核に、<リンゴ>は細かい編成数の計算を開始した。
◇◇◇◇
大型の水陸両用飛行艇を使用した空輸である。
かなりの量の資材だが、燃料搭載を必要としないマイクロ波給電の恩恵を十分に活用し、1機の輸送機でも大量に搭載できる。
使節団の制御に関しては、独立型AIが新たに製造、搭載された。
U級AI<ローチェスター>、およびE級AI<ヒース>である。
どちらも、光回路
これらに、可能な限りのバックアップ体制として、
接続は衛星を使用するため、マイクロ波給電と違って地平線の問題はない。
これは、<ザ・ツリー>勢力圏外へ派遣するための保全措置だ。
万が一、護衛戦力が壊滅して部隊を放棄することになった場合、
<ザ・ツリー>製のAI達にとって、これは死と同義であり、可能な限り避けるべき事態だ。
光回路製であれば凍結および即時バックアップが可能な構造であるため、データ送信ないしブラックボックスへの退避によって
保全されれば再起動の可能性は残るため、現地派遣組は、基本的に全て光回路製が用いられている。
最終的に、
多脚地上母機、<プランター>。E級戦術AI<ヒース>が搭載される。
全幅を狭くするため、全体を設計し直した新型だ。
搭載機を減らす代わりに医療ポッドを増設し、外交カードとしての使用を想定している。
護衛用多脚戦車3機。艦載用のMLT-E-04、<ホッパー>を使用。これは、通常タイプに比べて小型であるということで選択された。通常移動時の消費エネルギーが少ない、というのも大きい。
そして、核融合炉搭載電源車、<リトルホエール>。U級戦術AI<ローチェスター>が搭載される。
部隊全体の電源供給を担当する。無補給でも5ヶ月程度の行動が可能な燃料を搭載した。
自衛用の近接武装も搭載しているが、基本的には有事の際は護られる存在だ。
最後に、物資輸送車が2台。全長13mほどの自走式多輪輸送車を2基連結したモデルである。
武器弾薬、および各種燃料を搭載する。
2足歩行型護衛機や、燃石型の小型電源車も格納する。
もしレブレスタ側の交渉、ないし馬車等の移動手段に同乗する必要がある場合は、リトルホエール搭乗の複数人が対応する。その場合は、何らかの形で護衛機を同伴させる予定だ。
当然、当初はこの部隊が派遣されるということで難色を示したレブレスタ側だったが、その移動速度、不整地走破能力を見せつけたことで拒否できなくなり、渋々といった体で受け入れを了承した。
実際、最も横幅が大きいリトルホエールが、13mである。これは、アフラーシア連合王国で使用される一般的な馬車が2m程度であることを考えると、とんでもない大きさだ。
ただ、幸いなことにレブレスタ側の主要街道はおおよそ10m~15m程度の幅を確保しているようで、難所も両側が崖で物理的に通れないなどというわけでもない、と確認できた。
リトルホエールも、走行輪は多少変形が可能な構造であり、移動速度は遅くなるが、タイヤをロックして多脚のように歩行させることも可能なのだ。
最悪、迂回して道を切り開くことも考える必要はあるだろうが、多脚戦車の力を確認したレブレスタ大使は、これならば問題ないと太鼓判を押していた。
彼らの口数が少なくなっていたのは、気の所為ではないだろうが。
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