03 準備 (2)
名前が決まった後に渡されたのは、装飾が綺麗な腕輪と青の宝石が付いた指輪だった。
見た時はサイズが合わずとても大きかったが、装着すると腕と指にピッタリと合っていた。
あ、もちろん右手の人差し指ですよ? 左手の薬指には羨ましいですが絶対に着けてませんからね?
まぁ、少し寂しいので左腕に腕輪を付けましたが。
「指輪には容量無制限の時間停止能力が付いた収納能力があります。手に触れてから中に入れと念じると、物が指輪の中に収納されます。逆に、出ろと念じれば外に出ます。宝石の部分に触れれば中に何を入れたか確認できます」
「ほう、便利ですね」
「しかし、ここにはこれといって収納するようなものは無いので、使い方はお任せします。ですが、肌身離さず、ずっと付けていてください」
収納するものが無いのなら何故渡したんですか? もっていて損はないとは思いますが、筆記用具くらいは入れて常備してたいですね。
「腕輪の方は、この空間の者である認識具です。さらに、ここに来る者のデータがその腕輪のガラス部分から投影されます。魔法、魔術、法術と、呼ばれますが、ここでは魔法と呼びましょう。腕輪は魔法の発動体でもあるので、指輪同様、手放さないようお願いします」
「わかりました」
指輪よりも腕輪の方が便利且つ重要ですね。ここに来た人達に奪われることがないようにしなければいけませんね。
次に案内されたのは人一人が生活出来るような部屋だった。
「普段の生活はこちらでお過ごしください。水や電気の心配はありません。扉が開く瞬間に流れてくる膨大なエネルギーで賄っておりますので。食料も既に指輪の中に入っているのでご心配なく。1週間に1度、この箱の中に1週間分の食料品が支給されるので、バランス良く食べれば飢えることはありません」
指輪、そんな使い方していいんですか。
指輪さん、先程は腕輪の方が便利且つ重要とか言ってすみませんでした。指輪さんも重要です。
そしてその箱が、私の食料源ですか。お米、味噌、醤油が来るのを期待しています。それがあればもう他は何でもいいです。……お酒は来ますか?
「ここには電子機器はありませんから、冷やすのも燃やすのも自力でお願いします」
「魔法、でしたっけ? それでやればいいんですね?」
「はい。《記憶保持》がありますから、魔導書を1度見ればすぐに使えると思いますよ。魔力のコントロールもすぐに出来るようになると思います」
そうホイホイと使えるようになっていいんですか? 特訓無いんですか? いや、嬉しいですけどね。
沢山練習してやっと使えるようになった、という人に申し訳ないな、と思いまして。
そんなユージンをまるで見なかったように無視し、フェレイルは無言でまた別の扉を召喚して開けた。
「次が最後です。さあこちらへ」
ユージンはフェレイルの後を追い、扉の中に入った。扉の先にいたのは、カルギエドだった。そこは、教会の祭壇に似たところであった。
椅子はありませんが、かなりだだっ広いところですね。
……光が丁度カルギエド様の後ろにあるからでしょうか、神々しくて神に見えます。
あ、神でしたね。
「貴様また…!!」
「黙秘させていただきます」
「本当に貴様は無礼だな!!」
「カルギエド様、そんなことはいいですから、さっさと残りのものを差し上げてください。説明が出来なくなります」
「そ、そんなことだと!? フェレイルも貴様も余に辛辣過ぎないか!? 余は神様なのに!!」
「
「余、後で泣いていいか?」
「「どうぞご勝手に」」
ハモりましたね!
カルギエド様が、まるで酔っ払った友人にそっくりだったもので、ついそれと同じように対応してしまいました。そいつ、絡み酒でとても面倒なんですよ。とてつもなく。
「っぐはっ! ……では、残りの特殊能力を、授ける」
心のダメージから何とか持ち直したカルギエドから、新たに《鑑定》《思考解析》《異次元の扉》《
「では、特殊能力について説明しましょう。《記憶保持》の方は既に大体は説明しましたね。これの便利なところは、記憶したものを辞書のように引き出し、目の前に表示することです。もちろん自分自身しか見えません。更に、相手の記憶にも干渉し、自身についての記憶を消すことも可能です。それ以外は消せませんが」
「と言うことは、ここに来た人が扉をくぐり抜ける時に私の記憶を消すんですね」
「話が早くて助かります。その通りです。ここでの記憶は抹消しておかないといけませんから」
その後に「同族には効果が無いんで消せないんですがね」と聞こえましたが、誰か抹消しておきたい方でもいらっしゃるんですかね。
後で聞くと、私も半分神──半神になっているらしいですよ。ハーフですって。身体が変わった感じはしませんけど、いつの間にか変わってたみたいです。
「次に《鑑定》ですが、これは相手のステータスを見たり、対象を解析をしてくれます。転移してくる者──特に勇者となる人間には必ず使用してください。もし危険な能力があったら《能力抹消》でサッと消してしまってください。《能力抹消》は、その名の通り能力を消し去る力ですから」
「危険なものの基準は…」
「例えば《記憶抹消》や《隷属》など、犯罪に最も向いているものでしょうか。どんな悪事を犯しても記憶を消してしまえば無いものと同じですし、隷属などを持つ勇者など論外ですから。ほとんどの世界では勝手に奴隷にすることは違法となっていますし」
「まとめると、向こうで犯罪を犯せそうな能力を消せ、ということですね」
「もちろん攻撃能力は消さないように」
「そんなことしませんよ。そしたら、もし勇者になる者のを消してしまったら、ただの一般人になってしまいますから」
お互いに黒い笑を浮かべながら笑いあっていましたが、その後ろでまたも変にいじけているカルギエド様がいたのに声をかけなかったのは、決して面倒だったからではないんです。…多分ですが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます