第2話 かおりちゃん《天使を凌駕した存在の引き立て役》
交通系ICカードを叩きつけ、駅の構内へと飛び込んだ。
階段を駆け上がり、電車待ちの方々の中から制服姿の二人を見つけたので声を掛ける。何故か知らんが、天使を凌駕する存在は頬を膨らませてて。かおりちゃんは、呆れた表情になっていた。
理由を聞いても、自分の胸に聞きなさいと言われるばかりで。俺様は半端なく何がなんだか分からなかった。
そして何が一番まずいって、百合の色が真っ黒になっている。クロユリの花言葉は呪いなんだが、うちの妹は誰かに呪いを掛けることなんてしない。
だが、半端なく怪訝なのは半端ない。どうにかして機嫌を直して貰おうと、俺様はある提案をしてみる。
「……ふ、二人ともパフェ食いたくないか?」
「ぱへ⁉」
やはり食いついたのは天使を凌駕する存在の方だった。真っ黒になった百合の色は、みるみるうちに黄色へ変化をとげた。黄色い百合の花言葉は陽気、これで妹の機嫌はどうにかなったようだ。
と思ったのも束の間で。ハッとなった妹は可愛らしく、かおりちゃんの後ろへと隠れてしまった。
俺様よりかは全然小さいが、彼女の背は百合よりかは若干高い。かおりちゃんも妹の行動が意外だったようで、どうしたのって感じの顔をしていた。
「……かおりちゃんにも!」
「……え?」
百合の言葉に呆けた声を出したのは、かおりちゃんの方だった。
「かおりちゃんにも可愛いって言ってあげなよ。お兄ちゃん」
「……っ」
予想外の台詞に、言葉に詰まってしまった俺様が居た。何でわざわざ、この俺様が今更かおりちゃんに。わざわざ、敢えて口にする必要なんて無いだろうし。
「それに……百合に言われたから言うのって、なんか不誠実じゃないか?」
「可愛いとは思ってるの?」
百合の言葉に、思わず頷いてしまった自分が居た。かおりちゃんが嬉しそうな瞳をこっちに向けたから、これ以上は半端なく彼女の顔を見れなくなってしまった。
というか妹と一緒に居るんだから、百合以外を見る必要なんて無いな。うん。
妹の色を見るとピンクになっていたから、思わず顔が綻ぶのが自分でも分かった。この国でいうと、ピンクの百合の花言葉は虚栄心。
だけど妹の場合、この色だけは西洋の花言葉、優しさや暖かさっていう意味になる。何があって今そんな感情になっているのかは分からないが、この色を持っているときの百合が一番魅力的なんだよな。
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