第15話
遼ちゃんを追い出すのと、あまりにも興奮しすぎてたせいで、結局、眠れたのは二時過ぎ。それでも会社は休みではないので、時間通りに起床。
鏡に見える私の顔は、最悪。
「これじゃ、子豚どころじゃない」
はぁ……と、ため息をつきつつ、スマホをチェック。
まさかの遼ちゃんからのメッセージ。
「バージンは僕がもらうから、大事にしててね?(^ε^)-☆Chu!!」
あ、あのやろぉぉぉぉっ!
ふつふつとこみあげてきたのは、怒りでしょうか。羞恥心でしょうか。
朝からパワー使いまくりで、疲れました。
この年にもなって、と思うかもしれないけど、地味に特に目立たず生活していれば、そんな出会いはあまりない。特に、中学校からずっと女子高で育った私は、男性といえば、一馬だったり、兄だったり、身内としかほぼ接触はない。
学生時代のバイト経験もほとんどなく、どうやったら男性と接点が持てるんだろう? と、いつも不思議に思っていた。
過去に一度だけ、高校の登校の途中に待ち伏せされて、告白されたことはあったが、丁重にお断りした(好みじゃなかったから)。
高校時代の友達に言わせれば、私は理想が高すぎるらしい。身近にいる男性がレベルが高いから。
正直、そういわれてもピンとこない。
確かに、一馬は小さい頃から人気者だったし、兄もバレンタインデーにはたくさんのチョコレートをもらって帰ってきてた。兄に言わせれば、全部、義理チョコだったらしいけど。
大学も女子大で、サークルも大学内の女子だけのサークル(図書館サークル)で、見事に接点なし。あっても、私よりもかわいい女子はたくさんいるので、なかなか私のところまでいらっしゃる殿方はいなかったなぁ……。
私と遼ちゃんは小学生の頃、よく遊んでいた幼馴染。といっても、二つ年下だから、そんなにしょっちゅうでもないか。特に、中学校にあがってしまってからは、ほとんど接点はなかった。
むしろ、一馬と遼ちゃんは中学、高校と一緒だったはず。まぁ、彼らも二つ離れているから、一緒にいた時期は短いだろうけど。
一馬からは詳しい話は聞いていないし、どうやったらあんなに変われるのか、不思議でしかない。でも、いわゆる成長期ってやつで、男の子は一気に変わるんだろうなぁ、とぼんやり思う。
そもそもが、あんなに美しい人たちのいる世界にいる遼ちゃんが、私に固執するのがわからない。
遼ちゃんが言ってた通り、撮影が始まったようで、まったく連絡がこなくなった。同じマンションの中で、台本とにらめっこしてるのか、まったく違うところでやってるのか、わからないけど。
とりあえず、私がドキドキする環境ではなくなったことだけは確かだ。
ちょっと寂しい気がしないでもないけど。
むしろ、私は私で、新創刊に向けてのキックオフイベントの準備に忙しくて、おかげで遼ちゃんのことを考える余裕がなかった。メインで動いてたのは、先輩二人なので、私はそのお手伝いをしてただけだけど。
実際、キックオフはうまくいっていた。
私も、次の機会があったら、うまくやってみせる! と心に誓った。
そして、キックオフの最後に、今回の雑誌のCMが流れ出した。
あっ。
彼女のウェディングドレス姿が大きく映った。
大きく背中のあいたドレスに、彼女を支えるように男性の大きな手が映る。
そして、そのそばに立つ男性は……相模遼。
二人の誓いのキスシーンを見て……ちょっと、胸が痛くなった。
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