第2章 新入社員の私に人気俳優の彼
第9話
私、
妖艶王子(またはオカマ)の遼ちゃんとは、あれから何度かL〇NEのやりとりしかしていない。たいがいは、たわいのないこと。
彼が映画の撮影に入ったからだ。
おかげで直接会う機会もなく、テレビの画面の彼の姿を見ては、いい思い出だったのよ、と思うようになっていた。
「神崎! 本社の会議室、抑えられたか?」
上司の
「あ、はい。十一時時半から抑えてます。」
「その時間からだと、お弁当の手配はもうしたのよね?」
メガネの奥の瞳をキランとさせて私を見ているのは、向かい側に座る三年先輩の
「あっ!」
ああ、まだだったっ!
「す、すみません!これから手配します!」
「よろしくね」
ニッコリ笑顔で言ってくれる本城さん。ス、ステキすぎる……。ほ、惚れてまうやろ……と、ほけーっと見惚れてると、
「ほら、早く電話しないと、本気で本城に怒られるぞ」
隣から、大きな身体を小さくしながら言ってくれたのは本城さんと同期の
「はい!」
二人とも、年の近い兄や姉がいない私にとっては頼りになるお兄さんと、お姉さん。お互いにいい感じで競いあってる姿が、憧れで、私も、あんな風になれたらいいな~、と思ってる。
私のいる部署は、販売企画部の中のなんでも屋的な役割をする統括チーム。総務のような会議室の手配はもちろん、スケジュール調整もすれば、部内の経費・原価の管理もする。
本城さんや笠原さんは、どちらかというと経理的なお仕事をしていて、私は総務的なお仕事。
私が入社するまでは、私のお仕事も本城さんがやってたという。
……やっぱり、ステキだ。惚れる。
「さてと、そろそろ行くか」
黒いスーツで、これから葬式ですか?みたいな格好の楢橋さん。
ニコチン中毒ですか? みたいなヘビースモーカーで、そばに行くと、いつもタバコの匂いがしてる。かっこよく言えば『大人の男』……のはずなんだけど、いっつもヨレヨレの雰囲気があって、なかなか決まらない。
「いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃ~い」
「おう~」
片手をあげて、フロアから出て行く姿は……酔っ払い……?
あれでも課長さんなんだけどな……。
「ねぇ、今日の会議ってさ」
パソコンの画面を見ながら話す、本城さん。
「例の新創刊のやつだっけ?」
「ああ」
「どうなんだろうね。後発で今さらって思うんだけど」
「まぁ、多少の勝算はあんじゃねぇの?」
「そうじゃなきゃ困るけどさ」
……大人な会話だ。入社して三か月の私には、まだまだ知識が足りない、未知の世界。
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