第6話

「りょ~~~~う~~~~!」


 地の底から這いあがるような声が、聞こえてきた。


「ひ、ひーっ!」


 地の底から現れたのは、目の座った一馬だった。


「おめー、美輪に何してやがる!」

「まだ、何もしてないよ~!」

「何かするつもりだったのかよっ!」

「ふ、ふふん、どうかなぁ?」


 いつの間にか、二人のギャーギャー言いあって追いかけっこしている姿を見てたら、ドキドキも収まった。

 どっちが保護者か、わからないな。思わず苦笑いしながら、時計を見ると終電間近。


「一馬! そろそろ帰るよ!」

「えー、帰るの~?」

「おう、帰ろう!」


 二人の声が重なった。ふふ、結局、この二人は仲がいい。


「今日は楽しかったです。ありがとう。お金は?」

「いいよ、ここは奢り。久しぶりに美輪さんとも会えて楽しかったし」


 遼ちゃん、王子様キャラ復活。


「当然だ。お前は稼いでるんだしな」


 偉そうに言う一馬に、私は苦笑い。

 まだ残るという王子様遼ちゃんに後ろ髪をひかれつつ、私たちは店を出る。

 同じように駅に向かう人の流れにのって、終電に間に合うように、少し速足で駅に向かう。


 ブルル


 マナーモードのスマホ。L〇NEの着信。

 終電だけに混みあっていたけれど、電車に乗り込んでから、確認すると『RYOTYAN』からだった。いつの間にか、一馬と私と遼ちゃんのグループができていて、そこに遼ちゃんからメッセージ。


『今日は来てくれてありがとうね~。またね~!』


 オカマ遼ちゃんを想像して、思わず笑みがこぼれた。


『こちらこそ、貴重な経験、ありがとう~。おやすみ~!』


 そう返事を書くと、すぐに私個人宛にメッセージが返ってきた。


『今度は、一馬くん抜きでご飯でも食べに行きましょう。』


 ……!?


 遼ちゃん、勘違いしちゃうからやめて。

 うれしい気持ち半分、自分がバカをみそうな気がして情けない気持ち半分。

 きっと社交辞令なんだよ、俳優の相模遼が、そんなこと言うわけないじゃない、と、自分に言い聞かせる。


 さすがに、既読は相手にもわかってるだろうから、「いつか行けるといいですね」と、無難に返しておいた。


 あ、なんだか、どよーん、だ。


 一馬もスマホをいじりながら、L〇NEの返事をしているようだったので、覗きこもうとしたら、白い眼で見ながら「……えっち」と、言われてしまった。


 えっちって、なんだよ、えっちとは。言われたことが恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてたら、


「変なこと、想像したでしょ。やっぱり、えっち」


 一馬、覚えてなさいよ。


 変わらず真っ赤な顔で、拳をにぎるのであった

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