BG市の財政事情

 アイビーが言うには、BRG祭にかかる費用がどこから出ているのかが不思議でしょうがないという。

「そりゃあ、個人の持ち出しに決まっているだろう」

 実際、ゴーダソンもBRG祭に参加する際は自費で服を買い、飾りつけをしている。

「衣装や自分の家あるいは店舗などの飾りつけまでは賄いきれるかもしれません。しかし、フロート車までつくるのには莫大な費用が掛かると思われます。BRG祭のSNSをチェックしたところ、毎年違うものが出回っているようですし」

 フロート車には毎年テーマがあって、コンテストまで行われている。人気投票を行って、フィナーレでは結果を発表しているのだ。つまり毎年違うものが作られているのだろう。

「さすがに今のご時世じゃ個人では出さないだろうが、商店街の組合に入っているところが作っているものじゃないのか」

 実際に祭に参加しているゴーダソンの目には、高校生でも作れそうな代物に映った。

「そこなのですよ。フロート車が誰が作っているか分からない。私もはじめは初めはBG商店街や商工会議所などが支援しているのだと考えました。ところが、どこにも協賛企業の名前が表示されていません。作った人や団体の名前が表示されないのはおかしくありませんか? ましてやコンテストも行っているのに。

 そもそもフロート車のみならず、パレードやコンテストを行うとなると交通規制や警備の強化、会場設営や来場者の誘導など、なにかと経費がかかるはずです。それを商店街の組合に所属する店舗が出しているというならば、普通出資者として団体名が表示されるはず。ところが出資者が誰なのかすら一切分からない。それでいてBRG祭が毎年行えるだけの資金が集まるというのも、正直信じ難いことなのですが」

「そういう人もいるだろう。BRG祭の素晴らしさに感銘を受けて、匿名で資金を出資してくれる人がいてもちっともおかしかないね」

 ゴーダソンはソファにふんぞり返った。どうせこの電子記録員はBRG祭のことを見くびっているに違いない。

「BG市の税収を調べました。あまり多いとは言えませんね」

 ゴーダソンは頭を抱えた。BG市の税収はあまり多いとはいえない。脱税している者がいれば話は別だろうが、その時点で捕まっているだろう。つまりそれだけ市民の貧しさが浮き彫りになってしまったのだ。アイビーはそれを見越してBG市の税収を調べたのか。

「し、市外にはいるかもしれない」

「BRG祭の人口増加率0.3%。経済上昇率0.16%。そもそも露店なども出していないでしょう」

「インターネットで金を集める――」

「そういった呼びかけをしているWebサイト等は見受けられませんでした。

 ゴーダソンさん、あなたなら、資金の出所を調べることができますよね?」

 アイビーにすごまれて、ゴーダソンは断りを入れて席を外した。闇金などと勘繰られてはBRG祭の動画は永久にこの世に出回ることはないだろう。しぶしぶBRG祭実行委員会の会長に連絡を取った。

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