じゃなきゃ今度はゴリ

「こんなのどう?」


「これ痔の座布団じゃねえか、これはちょっと……」


 フィット感はいいのだが買うときにどんな目で見られるか……

 男子高校生が痔の座布団をカップルで買いに来るとか店員さんからすれば気まずくて仕方がないだろう。


「じゃあ、こんなのはどうかなっ?」


「おお! これは俺に合いそうだ!」


「それはよかったー♪」


「ん?」


 ちょうどいいのが見つかったから気づかなかったけど今の声もしかして……


「あー! やっぱり佐藤さん!」


「あちゃー、ばれちゃったかー」


 俺が気づいてない間に忍び足で五メートルほど距離を取っていた。


「で、何の用ですか?」


「用も何もないよー、ただ買い物に来てたら面白そうな二人組が並んで歩いてたもんでついね?」


「はあー、もうからかえたでしょ 帰ってくださいね」


「えー、まだ会って少し話しただけだよー? もうちょっと一緒にお話ししたいなー」


「どうする未来?」


 俺は願い下げなんだよな……

 頼む未来さん、空気読んでくれよ。


「うーん、いいよー」


「えっ!?」


 なんで未来がデートの邪魔になるかもしれない佐藤さんと一緒にいることを了承するんだ!?


「佐藤さんといればつっくんが色々とドキドキイベントしてくれるから私はいいですよー!」


「そういうことか……」


 それ目的で佐藤さんを近くにいさせるのはだいぶ危険な気がするけど……

 前もランジェリーショップに連れていかれたし……


「よし! それでは同行させてもらおうかな」


「もうやることないんでそろそろ帰りますよ?」


 佐藤さんがいる限り安心して買い物どころじゃない、ひとまず俺たちから離れさせないとな。


「ひとまず俺たちから離れさせないとなって顔してるよ? 紗月君?」


「正直、俺は佐藤さんが怖いです」


 なんで普通に人の心が読めるんだ?


「私は紗月君こと好きだよ? もちろん師匠兼お隣りとしてだけど」


「未来落ち着けよ」


 未来は佐藤さんの話の途中から飛び掛かる体制をとっていた。

 未来も結構やきもち焼くんだな。


「なんか未来ちゃんを怒らせちゃったみたいだし私はお暇しようかな」


「え? あの佐藤さんがこんなあっさり?」


 そんな、もうちょっとくらいいいのに。


「紗月くーん、心の声とリアルの声が逆だよー」


「あ、すみません…… つい……」


「結構傷つくなあ…… まあ、次会ったらよろしくねー」


 そう言うと佐藤さんは足早に行ってしまった。

 なんか嵐みたいな人だな


「なんか嵐みたいな人だね」


「まったくだ……」


 未来も同じことを思っていたのか……

 よし、もう変な人と会わないためにさっさと座布団買って家に帰ろう。

 じゃなきゃ今度はゴリ


「よ! 買い物か?」


 ああ、もう最悪だ……

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