未来、好きだありがとう

「……くーん、つっ……ん、つっくーん」


「んん、あと五分……」


 頭に柔らかい感触を感じながら心地よさに負けて体が勝手に寝ようとする。

 特に逆らえるわけでもなく俺はまた眠りの世界に入ろうとしている。


「もう三時間たったよー、起きてー」


「今何時ー?」


「もう一時だよー」


「そっかー」


 んー? 一時だってー?

 ん!? 俺が寝たのって何時だっけか!?


「悪い未来、寝過ごし」


 俺が急いで上体を起こすと何か柔らく温もりのあるものが二つほど頭に乗った。

 寝起きの頭で気づくまでに五秒ほど時間がかかったが俺は自分の頭に乗っているものが何か気が付いた。

 

「ご、ごめ」


「う、うん」


 というか未来はずっと俺に膝枕してくれていたってことか!?

 頭を上げるまで心地いいと思っていたがまさか未来の太ももとは……


「あ、あの…… また今度もお願いしていいか……?」


「え!? あ、うん! いいよ」


 はっ! 心地よすぎてつい頼んでしまった!

 我ながらなんと恥ずかしい……


「目も覚めたみたいだし、そろそろ行く準備しよっか」


「そうだな、わざわざ長い間膝枕してくれてありがとな」


「つっくんの寝顔見てたらお昼過ぎてただけだよ! あんまり気にしないでね!」


「また恥ずかしいことを…… 急いで準備するから少し待ってな」


 ここまで待たせてしまったこともあるしあと一週間は未来のしたいことをさせてやろうかな。

 そのぶん執筆のネタにさせてもらうけどな、俺も悪よのう。

 はあ、寝たのに深夜テンションのままだな……


「よし、もう行けるぞ!」


「じゃあ、いつものモールにしゅっぱーつ!」


「お、おー!」


 二人してテンションが変だがまあ楽しもう!



「で、来たはいいが何か見たいものでもあるのか?」


 ここのモールは過去に水着やら下着やらと色々男子高校生に悪いイベントが起きているからな……

 前みたいに先輩が助けてくれるとも思えないし注意しなければ。


「えーっとね、今日は座布団を買いに来たの!」


「え? 座布団?」


 なんでまた座布団なんだ?

 うちはリビングはソファーだしご飯を食べるときに使う椅子もクッションがついてるやつだしな、一体何のために買うんだ?


「そう! つっくんいつも椅子に座りっぱなしで疲れそうだなーって思って!」


「未来、好きだありがとう」


 あ、嬉しくてつい……


「も、もう! 突然すぎ! それに場所も考えてよね!」


 未来は不意打ちにやられたらしく頬を真っ赤に染めて悶えている。


「わ、悪かった」


 そんなに俺のことを考えてくれていたとは……

 俺もいい彼女を持ったな。


「そういうのは家で言ってよ……」


「ん? なんか言ったか?」


 こういう時のセリフってなぜか聞こえなくなるよな。

 まあ、未来の場合大方予想は着くがな。

 多分、私も! 的なことだろう。


「じゃ、じゃあ売り場に行こっか!」


「お、おう!」



 俺はこの時点で気づくべきだった。

 このあと俺らに厄介ごとを撒きに来る悪魔がいることに。


「買い物に来ただけだったけど面白そうなことになりそう♪」


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