なあ未来、○○○にならないか?

「え? 二人ってそういう仲だったの?」

 

 うん、ヤバイねこの状況。


「そだよー」


 やりやがったな未来さんよお。


「えと、一応そうなんだ……」


 一方的だけどな、とは言わないでおこう。


「ふーん、そうなんだ」


あれ? 以外にも興味ない感じ? ここで私も好きだったの! 的な展開だったら男として最高なんだけどなあ。


「二人の邪魔したら悪いし、私は帰るねー」


「おう、また明日なー」


「うん!」


 なんかさっきよりも疲れた気がするぞ……

 それにしても未来には注意しとかないとな。


「なあ、あんまり恋人って言わないほうがいいと思うぞ」


「えー、なんでー?」


 能天気だな、おい。


「さすがに同棲がばれたら色々まずいだろ?」


「確かに!」


 今頃ですかい……


「とりあえず今日は帰ろう、また人に会うのはごめんだからな」


「りょーかーい」




「ご飯できたよー」


「今行くー」


 などと親子のような会話をしてリビングに向かう。

 この場合は姉弟なのか?


「今日は感謝も込めてつっくんの好きなカレーにしてみました!」


「女神様ありがとうございます」


「くるしゅーない」


 などといつもの会話をしているとふと気づいた。

 未来の私服姿めっちゃ可愛くね? と。

 確かに元の素材もいいのだがそれに似合う服を着ると別人に見えてくるな。


「服、似合ってんな」


 一応こんなこと言ってみたり。


「えっ! ほんと!? やったー!」


 凄い喜ぶじゃん、機嫌悪い時にでも使うか。




 夕食を食べ終え風呂に入り寝支度をしていると。


 プルルルルルル


 と電話がかかってきた、なんと編集さんからみたいだ。


「もしもし、海竜です」


 恥ずかしいペンネームとか言うなよ、名字と同音なだけだからな。


「海竜先生! どうなっているんですか!? 原稿が送られてきませんけど!」


「え……」


 俺は頭が真っ白になる。


「昨日の夕方に送ったはずなんですが……」


「来てませんよ! どうするんですか!? 海竜先生はいつも締め切りに余裕をもって書いて頂いているのでもう伸ばせませんよ!」


「少し待ってくださいね!」


 俺は慌ててパソコンを開きチェックをしてみる。


「ほんとだ……」


 そこには俺が送ったからと保存しなかった真っ白なファイルがあった。

 どうやら送れていなかったようだ……


「なんとか明日の朝まで粘ってみますので海竜先生! 書けますか?」


「ありがとうございます、今すぐ書きます!」


 そう言って電話を切る。

 俺はすぐさま書き始める、だけど到底間に合うようには思えない。

 昨日の今日だから内容は抜けてはいないんだが…… くそっ!

 今は夜中の十二時だぞ! 文庫本一冊分は到底無理だろ! 

 少しでも書かなくちゃな……



「あれ? つっくんどうしたの? こんな夜中に」


 なんで今来るんだよ! こっちはピリピリしてるっていうのに!


「無視はひどいよ……」


 すまない、けど今は集中したいんだ。


「ねえ! つっくんてば!」


「ちょっと集中してるから早く戻って寝てなよ!」


 強気に言ってしまった…… まあ仕方ない、誰でもこんな状況ならこう言ってしまうだろう。


「ひどいよ…… ん? 小説?」


 あ、やってしまった。 書くのに集中するあまり隠す気ゼロだった……

 そこで俺はとっさに言った。


「なあ、未来 小説家にならないか?」

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