現実を見ろ俺……

 「おかえりなさいっ! さ、紗月!」

 

 俺の家の玄関に制服にエプロン姿の未来がいた。


「なんで未来がここにいるんだよ! っていうかなんで俺んちの鍵を持ってるんだよ!」


 俺はパニックになり少し強気な口調で言ってしまった。


「ご、ごめんなさい」


 彼女のしゅんとした顔に我に返った。


「あっ、ごめんな急に未来が家にいるからびっくりして…… とりあえず中で話をしよう」


 俺は部屋に荷物を置きリビングに向かう。


「急に家にいてびっくりしたよね…… ごめんね、紗月……」


「それはもういいよ、それよりなんでうちに?」


「それはね、紗月の」


 プルルルルルル


 と俺のスマホが鳴った。


「悪い未来少し待ってな」



俺は自分の部屋に行き電話に出る、相手は母さんみたいだ。


「もしもし母さん? 急にどうしたの?」


 スマホから馴染み深い声が聞こえてくる。


「あ、紗月よかった出てくれて、突然なんだけどね母さんとお父さんで海外に出張に行かなくちゃいけなくなったの! それでね紗月の面倒を見てもらおうと思ってみーちゃんに鍵渡しちゃったから仲良くね」


 俺はまたもや思考停止していた。


「ちょっと待ってくれよ! 出張はいいとしてなんで未来に鍵を渡すことになるんだ!?」


 あきれたようにため息をして母さんが言う。


「だってあんた家事全部できるの?」


「はい、すみません」


 そうなのだ、俺は生粋の不器用なのだ。

 なんか悪いかよちくしょう。


「あ、そうだ! みーちゃん今日からうちに来るみたいだから色々教えてあげてねー」


「は!? え、今なんて言った!?」


 ブツッ


 おいおい嘘だろ、母さんは高校生の男女が2人きりで問題ないと思ってんのか?

 俺は比較的理性が利くほうだからいいけど間違いがあったらどうするつもりなんだ?

 と、とりあえず未来に帰ってもらうように言ってみるか。 俺が家事をすればいいだけの話だろう?

 そのくらいは頑張ってやってみるか……



「おまたせ、話は聞いたよ。 でも未来には迷惑はかけられない、送っていくから今日はもう帰っていいぞ」


 そう言うと彼女は複雑そうな顔で


「あのね…… 私の家なんだけど老朽化が進んで取り壊しになっちゃったんだ……」


「え……」


俺は思わず息をのんだ。


「だからね今日引っ越してきちゃったんだ……」


母さんめ、来るって引っ越してくるってことかよ!


「だからね、今日からよろしくっ!」


「ああ、よろしく。 じゃなくて未来はいいのかよ! 俺なんかとひとつ屋根の下で!」


「私はむしろ嬉しいよ? 紗月と一緒に住めるなんて夢みたいだもん!」


 夢みたいはこっちのセリフだ。


「わ、わかったよ。 ただし俺たちはあくまで家族として接しような!」


 じゃないと俺が持たないんだよ……


「うんっ! よろしくね、つっくん!」


 うわ、幼稚園の時のあだ名じゃねえか すっごい恥ずかしいんだが……



 こうして未来との同棲生活一日目が始まった 。

  って勝手にまとめようとすんな俺よ! 現実を見ろお!

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