あの野郎!! 余計な事しやがって。
岐阜県
趣味のバイクで色々な所を駆け回っているがそんな所知らないぞ。なんだかまた都市伝説的な奴に会いそうだなぁ。まぁ良いか。メリーさんと仲良くなって人を刺さなくする様に出来たし。花子さんは元気にしてるかなぁ。待って。思いっきり忘れてたけど、最近家のトイレにお引越ししたんだっけ。
とりあえずここに来たのも縁だ。歴史的な価値がありそうな町だし見ていくか。綺麗だなぁ。何枚か写真に納めておくか。ん? あれ? あんな所に高台があるなぁ。少し町を巡ってから行くか。それから何ヶ所か周り何百枚と写真を撮った。そろそろ夕方。良い感じの写真を撮れそうだ。えーっと。あっちか。
しばらく走っていると、人が居た。居た!? なんかすごく寂しいところだと感じていただけに人が居てビックリし過ぎた。なんか違和感があるなぁ。よく見てみよう。カメラを取り出しワインダー越しにその人を見る。赤い着物に白いコートを着て、赤いベレー帽とサングラス、マスクをつけ、白いブーツを履いた女性が立っていた。手には赤い傘。
「うわっと。クセが強い格好してんな」
そう呟いた瞬間に気付かれた。
こっちに向かって歩いて来る。軽く頭を下げると彼女も下げた。そのまま近付いて来る。サングラスを外し
「ねぇ。私綺麗?」
と聞いてきた。
「お綺麗で」
と瞬発的に答えてしまった。目はキツネっぽく、声はネコの声の様だ。待って。まさか。マズイマズイ。このパターンは。
「これでも?」
そう言って彼女は、マスクを外す。耳まで裂けた口が嫌でも目に映る。
時既にお寿司。違う。時既に遅しだ。パニックになりかけたけど、『時既にお寿司』とツッコミ本能のお陰で何とか冷静にはなれた。対処方法の1つは『普通だ』と言う事だ。
「き…綺麗…です…」
どうやら自分の口は正直らしい…
予想通り襲おうとしてきた訳で。メットを後ろの2人目用の席に放り込んでアクセルをかける。速い。流石は100mを5秒程度で走れると言われるだけある。バックミラー越しに後ろを見ると走りながら傘を開いていた。風に流され後ろへと倒れる。それを無視するかのように無理矢理上に向けると軽く飛んだ。…………。軽くじゃなかった!! 思いっきり飛んてんだけど。字のごとく。
なんか傘で飛ぶなんて事も聞いてはいたけど、まさかのソッチ!! メリーポピンズ式じゃないの!! バッチリ航空力学使いました的な感じの飛び方してんじゃん。その傘は翼だったんか!! まぁ確かにそっちの方が圧倒的に効率が良いのは事実だし、口裂け女の足が速い事も事実だから、その選択肢はあるけれども。と言うか、傘頑丈だなぁ〜。
いや、そうじゃなくて!! どうやって逃げる。ここはしばらく直線道路。バイクなら逃げ切れ無くはないが…。あっ…待って。確か知り合いに…。ブレーキをかけ、急停止する。ちょうど滑空に入ってた口裂け女が驚きのあまり姿勢を崩したのかそのまま数m先で墜落。ヘッドスライディングしたようだ。それでも尚、立ち上がって襲って来ようとして来たので、ちょうど第2の目的でもあったヨーグルトを取り出す。最近巷で有名なめっちゃ美味しいヨーグルトらしい。
「ヨーグルト食べる?」
と聞くと彼女は、コクンと頷いて手を伸ばす。何か知らないけどあの時衝動的に2個買っといて良かった。って待って。デジャブだ…凄くデジャブだ…。花子さんの時みたいな事になってる。立場が逆になってる奴やん。とりあえずこれで一時的に身の安全は確保出来た様だから本題に入る。
「その口、治したくない?」
「え?」
「俺の友達に、そういう系の医者やってる奴が居てさ。そいつに頼めば何とかしてくれるとは思うんだけど…」
「私綺麗になれるの?」
「口が裂けて無い分良くなるよ。それに、元の顔も良さそうだし綺麗になれると思うよ」
「私、治したい」
「家までは高速道路を走らなきゃいけないから、ヘルメットがもう1つ要るなぁ。土地勘ある?」
「ま…まぁ」
「じゃあ近くのバイク関連のお店までガイド頼む。メットは後ろの席のフルフェイス被っといて。サイズ合わなかったらゴメンだけど」
「うん」
それから自分の用のヘルメットを買って帰路についた。本当なら近くで1泊する予定だったんだけど良いか。時間的にはかかって5時間。11時までには家に着くし。さてと。どうすっかねぇ。とりあえず、ご飯にするか。
「なんか好きな物とかある?」
「ハンバーグ。あとヨーグルトとボンタンアメとべっこうあめ」
「おぉ…。ハンバーグか。作った事あったかなぁ。ま、いいや。やってみるか」
「材料ある? わたし作るよ」
「あ、ありがとう…………。って、え!!」
「何?」
「意外と家庭的だなと…」
「元々そう言うのは得意だったし、何より私の事を怖がらずに向き合ってくれたのあなたが初めてだから」
いや、赤面すなや!! と言うか生で見たら怖かったわ!! なんか慣れてきたけど!! 花子さんとメリーさんのお陰で耐性付いちゃったけど!!
食事をしながら、あの場所の事などを聴く。今も昔も実在しない彼女が怪異化した事でうまれた町のようだ。じゃぁ、怪異化したきっかけはなんだろう。
「そう言えばなんで怪異化したの?」
「メリーさんに襲われてその時に抵抗したら口を裂かれて、それで親に顔を見せられなくなって家を出て気が付いたら…。って、あれ? どうしたの?」
メリーさんの名が上がった瞬間頭を抱えてしまった。あのバカ!! 新たな怪異を作るんじゃねぇっての!! 後で説教タイムだな。はぁ…ったく。あの野郎余計な事しよって。
あ。今日辺り俺の事刺しに来そうだしついでに説教と彼女への謝罪と別の怪異化に関わってないか尋問しなきゃな。逃げれない様にアレ使える様にしとかなきゃなぁ。トイレに行って、あの子に声をかける。『子』と言うのもどうなのかと言う感じなんだが。何せ出て来るのは30代前半のスレンダーな女性だからだ。
「悪い花子さん。ちょっと手伝って欲しい事があるんだけれど」
「何?」
「とりあえず来てくれ」
「ん。わかった」
「ありがとう」
「まずはお互いの紹介からかな。こちらが、花子さん。『トイレの花子さん』で有名な花子さん。最近家のトイレに引っ越してきた同居人(?)。で、こっちが口裂け女。何やら怪異化の影響で自分の元の名前を思い出せなくなってるらしい。で、花子さんに頼みたいのは、彼女の口の縫合後の経過観察と先々の社会復帰とかの手伝いをして欲しい」
「その言い草だと彼女は、元は人間だったって事なのよね」
「流石だね。そういう事。で、怪異化する原因になったのが『メリーさんに襲われた事』だから、今日はあいつを抑えて色々終わるまで身動きをとれないようにして欲しい」
「わかった。妹とか弟とか呼んだ方が良い?」
「じゃあ2人くらい頼む」
「オーケー」
花子さんとその家族、口裂け女に対怪異性BB弾の入ったハンドガンを持たせ、花子さん'sに物陰に隠れて貰って待機。対怪異性BB弾は名前の通りだから説明は略。なぜかメリーさんにだけ効くことがわかってるって事だけは言っておくけど。そっからはいつもの流れ。途中逃げ出そうとしたけど、怒りの口裂け女とスナイパー花子のお陰で脱出される事無く謝罪まで漕ぎ着けた。だいぶボコボコにされてるんだけど。まぁこの部分に関しては一件落着。後は、口の縫合手術のみ。
まぁもっとも、手術もそこまで気にする必要は無いんだけどね。頼む奴はそう言うのが得意な奴だから。それにこっちの仕事をしながら今の仕事の勉強をしてたから、理解もあるし話が早いだろう。『元は人間だった』タイプの怪異を人間に戻して社会復帰させるってのが俺らの目標ではあったからな。その点でもあいつはありがたい。
朝海りくさんからリクを頂きました!!
ありがとうございます!!
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