第10話 レイからの密告と忌々しきカクエンス

 ……夜12時、校長室……


 やっぱり、“あの子達”は……。


「……。」

「ナルウミ……?」


 ソーナが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。


「ソーナ……。」

「……大丈夫か?」

「シュウ……。」

「やはり気付いてなかったか。」

「えっ……?」

「私達、何度も声掛けたけどナルウミ、応えてくれなかったよ。」

「!」

「……何かあったのか?」

「実は、少し気になってる子が居るの。“13人”。」

「「“13人”!?」」

「“その内1人”、ちょっと危ない子……と言うか気を付けないといけない子が居るのよ。」

「名前は?」

「ファレムよ、赤髪の。」

「ふーん……。」

「でも曖昧だから断言は出来ない。あっ、それと“レイ”から連絡があった。」

「!」

「1年後。1年後に今の生活は終わりを迎える。」

「「!」」

「チッ、クソ……。」

「後たった1年、なんて……。」

「レイの話では“何人かの居場所がバレてる”らしい。」

「「!!」」

「でも私達はギリギリ見つかってないらしいわ。」

「そうか……。」

「……。」

「ソーナ、大丈夫だ。お前は俺が守る。」

「私も居るわ、だから大丈夫。ここには居ないけど、“皆も”同じ気持ちだから。」

「……うん。」


 コンコンッ。

 校長室の扉を叩く音が響き渡る。


「「「!?」」」

「は、はい💦」

『ナルウミ、お前の友達?って奴が来てるぞ。』

「えっ……?」

「シュウ、どうしよ!?」

「落ち着け!……ナルウミ、お前の部屋借りる!」

「ど、どうぞ。」

「“蒼渓清あおけいせい”……?」

「!」

「えっ、蒼―――」

「ごめん、フェイ!急用が出来たからまたね!皆を連れてきてくれてありがとう、じゃあお休み!」

「えっ?いや、ちょっと待っ―――」


 バンッ!校長室の扉が強く閉め、慌てて鍵を閉め、“皆”と共に寝室へ向かう。


「「!!」」


 ソーナとシュウは恐怖の顔で硬直するも私の顔を見てホッとしてくれたらしい。


「ナルウミ、か。驚かさないでくれよ……。」


 ソーナは恐怖でシュウの後ろに隠れていた。


「ごめん。でも、私もびっくりした……。」

「「え……?」」


 私の後ろには空天翼くうてんよく妖夢幻ようむげん幽羅陰ゆうらいんが立っている。


「なっ、何でここに……!?」

「私達の居場所がバレたの……。」

「「!!」」

「なっ、そ、それじゃあ……!?」

「シュウ、ソーナ。まずは落ち着いて、空天翼、妖夢幻、幽羅陰。まずは中に入って。」


 3人は大人しく部屋に入る。


「幾つか質問をするわ。まず初めにどうしてここが分かったの?」

凍氷冷とうひょうれいがここに行けって……。」


 お姉ちゃん……。


「次に輝光皇きこうこう雷電彩らいでんさいは?」

「輝光皇は固岳晶こがくしょうと一緒だ。」

「次、雷電彩は私の事、蒼渓清と呼ばないで。」

「私達の事がバレちゃう!」

「悪い……。」

「ごめん……。」

「はぁ~……ここに居るなら幾つかルールがあるわ。1つ、私達以外の人間。つまり私とソーナ、シュウ達以外には姿を見られない事。2つ、本名で呼ばない事。3つ、お互い渾名で呼ぶ事。4つ、部外者とは声を交わさない事。良い?」

「「「了解。」」」

「渾名は私が決める!幽羅陰はユウ!妖夢幻はゲンム!空天翼はクウ!」

「「「りょ、了解。」」」

「ちなみに蒼渓清はナルウミ。奏碧奈そうりょくなはソーナ。俺、朱緋蓮しゅひれんはシュウ。凍氷冷はレイだ。覚えとけ。」

「……ゲンム、レイ達はいつ来るの?」

「う~ん、レイは“カクエンス”に居るからな……。」

「「「何っ!?」」」

「何で、レイが帝国に……!?」

「「「レイが情報を流すって……。」」」

「「!!」」

「っ……!」


 立ち上がり、出口へ向かむもシュウが私の腕を掴み、ゲンムが行く手を阻む。


「ナルウミ、何処へ行くつもりだ?」

「レイ……。レイの、所へ……。」

「今行けばレイの荷物になる。それに全員帝国に捕まる。」

「でも……!」

「ぐっ……。」

「退け……。そこを、通せ……!」

「ナルウミ、落ち着いて!このままじゃ“あの姿”に戻っちゃう……!」

「ぐっ……!」


 諦めない。諦めたくない。


「クウォーン!」


 ゲンムの手から白い球が現れ、私の顔の前で煙になった。


「……げん、む」

「悪い、ナルウミ。今、お前を行かせる訳にはいかない。」

「……ばー、か」


 私の意識は睡魔に攫われた。

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