第12話

 小国アルバーティの歴史は戦いの歴史であり、長きにわたり周辺諸国より侵略を受けてきたがそのすべてに勝利してきた。


 それは初代国王である勇者とその妃、聖女の力によるものでありその力は弱まりつつあるものの現在にも引き継がれている。



 アルバーティ建国後すぐに国王が行ったのは共に建国に尽力してくれた多くの仲間達に力を与えることだった。


 

 アルバーティは当時未開の地であり今以上に強力で獰猛な神話級の魔獣が跋扈していたとされている。


 魔獣を利用し他国からの侵略を牽制することを目的としてその地を選び、勇者と聖女が中心となって魔獣を抑えつつ徐々に開拓を行い国としての形が出来上がった。


 しかし国を広げるにつれ勇者や聖女だけでは迫りくる多くの魔獣に対応することが難しくなってきた。

 そこで勇者と聖女は聖女に力を授けた神々の内の一柱、知恵と豊穣の女神ソピアから助言と許可を得た上で仲間たちに神から授かった力の一部を与え、その力により勇者や聖女がいなくても魔獣に対抗することが可能となったとされる。


 その時、勇者と聖者が与えた力が、レベルとスキルだった。



 レベルを授けられたものは魔力を体内に取り込み魔力と細胞が結びつくことで変異し肉体を強化することできる。

 身体能力を大幅に上げることが可能となった。

 更に内包する魔力を操作し体外に放出、具現化することで魔法と呼ばれる力が使えるようになった。


 スキルを与えられたものは個々が元々持っていた才能や技能がより明確に鮮明になり魔力と掛け合わせることによりそれらをより強化することが可能となった。



 レベルもスキルも勇者が作りだしたとされるステータスと呼ばれる表示方法によりその習熟度合いや強化具合が数値化されたものを確認できるようになった。

 それぞれ数値が上がるほどにより強力な力を持っていることになる。

 

 そしてそのレベルやスキルを高めるためには現在の状態よりもより濃密な魔力を取り込む必要があり、その唯一の手段が魔獣を狩る事にあった。


 魔獣の肉体は命を絶たれた瞬間、内包する魔力は霧散し分解され魔素と呼ばれる空気中に満たされているものに変化するといわれているが、レベルやスキルを与えられた生物は近くにいるだけで分解される前の魔力を自動的に己の肉体に取り込み肉体の持つ魔力の濃度を高めることが出来る。肉体が魔力によってより強化されレベルやスキルの数値が上がる結果となる。


 勇者や聖女もレベルやステータスを持つがそれとは別に祝福と呼ばれる特殊能力を神から授かっておりギフトとも呼ばれるその力こそが勇者と聖女の強さの根幹であり、他の物に分け与えることは叶わなかったが血脈として受け継がれることがあり王族にはまれに祝福を与えられるものが生まれ現国王である俺はその力を授かっている。



 諸国と比べ圧倒的な武力を得たアルバーティは栄え他国を寄せ付けなかった。

 しかし勇者や聖女が亡くなった後その圧倒的な力を使い他国を侵略し国土を広げるべきとする一派と勇者の遺言による争いのない国を目指すという国王派に大きく分かれてしまい結果、他国を侵略すべきと考える一派は国を離れ大陸の全土に散らばる。


 

そして国を離れた者の中に自身のレベルやスキルの一部を分け与えることのできるスキルを持ついくつかの者によりアルバーティ以外の土地でレベルやスキルを与え時間をかけ血脈により広がり大陸のほとんどの人間がレベルやスキルを保持するようになりそこから力をつけた他国からの侵略が加速していったとされる。



 しかし勇者や聖女に直接力を与えられた者の血を引く者と別の者から力を与えられた血を引く者とでは力には大きく差があり、さらに勇者と聖女の血が流れる王族の力は強大でありことごとく戦いに勝利することができ今日に至る。

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