第10話

 国王としての仕事がない日の時間を使ってたびたび森にきている。


 目的は魔物を狩り、戦闘訓練とレベルアップのためだ。


 今日は魔法を使わず剣のみでの訓練を己に課して臨んだ。


 誰にも言わずやってきたのは国王である俺が魔物退治するとなると話が大ごとになるからだ。


 ぞろぞろと護衛やら給仕やらが付いてくるのは想像に難くないし危ないとかなんとか言われて動きも制限されそうだし。


 移動する時間も俺一人の方が断然早いし。


 だから誰にも言わずにちょくちょく城から抜け出している。



 目的のAランクの魔物には残念ながら出会うことは出来なかったがそろそろ時間だからしょうがない。



 俺はまっすぐ山を下り森を抜け行きと同じように魔力を利用して加速し一気に王都の門の前までやってきた。


 王都は北に王城があり城より南側に扇状に建物が広がる城郭都市で王都全体を高く頑丈な壁で囲まれている。

 王都を出入りできるのは南側の門と西側の門のみとなっている。


 俺が付いたのは南側の門だ。

 門にはそれぞれゲートハウスが設けられ警備兵が四六時中詰めており、出入りする人間の検閲を常に行っている。


 王として国民の前に顔をさらす機会は非常に少ない為俺が王であるとはなかなか気づけないと思うのだがさすがに兵士となると別だと考え、身に着けている薄汚れた外套のフードを深くかぶり入り口の検閲待ちをしている商人や冒険者たちの後ろに並んだ。



 俺の番になりバックより取り出した金属プレートでできた冒険者証を提示して警備兵に通行の許可が下りたためそのまま街中を歩く。


 南の門をくぐり活気にあふれ多くの人が行きかうまっすぐ北に延びる街道を人々に紛れ進む。街の中央は広場となっており噴水の真ん中には、王族のご先祖様である聖女の祈りを最初に聞き入れたとされる神、智慧と豊穣を司る女神ソピアの像が立てられている。


 そんな広場の更に北側にある武骨で飾りっ気のない大きな建物に入る。


 この建物は冒険者を管理する冒険者ギルドで、中には多くの冒険者がいた。

 冒険者をかき分け奥のカウンターに向かった。



「こんにちは。本日はどういったご用件でしょうか?」


「魔石の買取りをお願いします」



 俺は冒険者証を職員に提示しつつバッグから魔石を全て取り出しカウンターに置いた。


 純度の高い魔石を沢山出されて驚いたのかギルド職員は一瞬固まったが提示した冒険証に目を通し納得したのか、鑑定に回しますと言って魔石を全て受け取り奥に部屋に入り数分して戻ってきた。



「お待たせしました。クロノスさん。全部で金貨一枚と銀貨二枚となりますがよろしいでしょうか?」


「ええ、それでお願いいたします」


「ありがとうございます。それにしても素晴らしい活躍ですね。Aランク昇格も間近ですよ。さすが国王様と同じ名を持つ方だ」


「いえいえ、自分には恐れ多い名ですのでいつ不敬罪に問われるかビクビクしておりますよ」とギルド職員と談笑した後ギルドの出口に足を向けた。


 

 さて、あとは急いで王都の外から避難通路で自室に戻るだけだな。


 

 しかしギルドを出ると正面に見知った顔があった。



「クロノス様!」



 いつも身に着けている白銀の鎧とは違い軽装を身につけ、長く綺麗な金髪をなびかせる美しい女性、レーネがいた。

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