第9話

 自室から秘密の通路で王都の外に出た俺は早速、山を目指して走り出した。


 王都の外には小麦畑が雄大に広がる農地となっており、区画整理により作られた用水路が複数、規則正しく引かれており非常に美しい。


 畔道を素早く駆け一直線に王都より東を目指し走る。


 王都からであれば西の山が一番近いのだがそこではブラス石の採掘の為に開発を行い鉱山夫の為の小さな町を設置したため人の行き来が多く北や南の山まではかなりの距離があるため東を目指すのが現実的だ。


 黙って城から抜け出してきたわけだから見つかる前に帰らないとな。


 急ぐか。


 両足の裏を魔力で覆い、一歩踏み出すたびに地面と魔力が反発し一気に加速する。


 すぐに農地を抜けその先の草原を通り過ぎ東の山のふもとに広がる森の前に立った。王都の影は目視できない距離だ。馬に乗った時の半分以下の時間で到着できた。


 足裏の魔力を解除し森に入る。

 魔物の気配を警戒しつつも足早に奥へ進む。

 たまに遠くで人の声が聞こえたりかすかに血の匂いを感じる。



 森の浅い場所ではたびたび冒険者たちが狩りを行っている。


 森は深く奥に行けば行くほど魔物は強力になり森を抜け山に差し掛かればさらに強力な魔物がいたるところを徘徊しその強さに対抗できる冒険者は国全体を考えてもほんの一握りしかいない為、自然と冒険者の数もほとんどいなくなってくる。


 冒険者と顔を合わせると面倒になる事もあるだろうから急ぎ足で山のふもとを目指す。


 途中いくつかの魔物が姿見て取れたが無視し、森を抜け山の麓までたどり着いた。



 さっそく来たな。



 剣を抜き強い殺気を発する方へ構えた。


 姿を現したのはパティータと呼ばれる二足歩行のカメレオンの様な魔物で鋭い牙と爪は非常に危険だ。背丈は二メートルほどで体を覆う硬い皮膚は厄介だ。



 冒険者ギルドは魔物をランク付けしており最低がGランクから始まりF、E、D、C、B、A、と続きSランクが最高ランクとなる。パティータはCランクの魔物だ。



 バティータは正面から襲い掛かってきたがその動きは早い。


 が、俺は落ち着いて剣を振りかぶり袈裟斬りをみまった。

一振りで魔物は真っ二つとなった。


 Cランク程度の魔物であれば今の俺には敵になりえない程に俺のレベルは高い。

バティータの胸部辺りにある魔石を剣でえぐり取ってから、バッグに入れた。



 そのあともCランクの魔物を中心に数体が俺を襲ったが全て一撃で切り伏せつつ、倒した魔物の魔石を回収し、俺は山を進んだ。


 奥へ進むと次第にBランクの魔物と遭遇するようになってきた。

 金属の肌を持つメタルリザードマンや二つの頭を持つ巨大蛇ネフシュタン、ゴブリンの上位種であるグレートゴブリンなどなど。


 一撃では倒すことができなくはなったものの苦戦することはなかった。

 暫く襲いくる魔物を倒しながら山を探索したが目的であるAランクの魔物が出てこない。


 もっと奥に進めば出現の可能性はあるが、これ以上はさすがに時間が足りない。


 名残惜しいがそろそろ城に戻らないとな。



 .....やっぱりBランク程度の魔物だとレベルが上がりづらくなってきている、か。

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