第8話

 この世界には人種とは別に魔獣とよばれる生物が存在する。


 人や地域によっては魔物とも呼ぶその存在は太古より人と争い、捕食し、される関係だった。今でもそれは変わらずある意味、人の歴史は魔獣とともにあった。


 人は強力な魔獣との戦いに生き残るため、武を高め、技を磨き、様々な武器を生み出した。


 人々は手を取り合い協力して魔獣に対抗するまでに至ったがその力は次第に人同士の争いを生み、以来、人は常に争っている。



 原初の時、神々の使徒エロヒムが大地に降り立ち神の啓示を人々に伝えたがそれを聞き入れなかった人々に怒り、大地に魔素をばらまき獣に魔力を与えた。



 濃密な魔力を体に取り込んだ獣たちは身体を変貌させ凶暴化し人々を襲いだした。


 その時の獣が魔獣のはじまりであると我が国の国教であるアドナイ教の聖典に記されている。


 ただ何千年前の話であるから正直誰も信じていない。



 信仰の徒である司祭たちも神を信仰する大事さを説く際の例として使う程度だ。



 他国で信仰される宗教の経典には、ある日空から降ってきたとか、地面から急に湧いてきたとか、獣に欲情した人間が獣と至り生まれた子が魔獣となったなんて気持ち悪いものまである。



 今日の魔獣はもちろん危険ではあるが人にとってその用途は多岐にわたる。


 魔獣の種によっては実に美味で食用としたり骨や牙、爪や皮などを利用して武具の材料にしたり、内包する魔石は魔道具の燃料として利用いたりと幅広い。



 そして強力な魔獣であればあるほど利用価値が高く魔獣討伐を生業とする冒険者と呼ばれる職業は古くから知られており己の武力のみで一攫千金を狙えるとあって未だに人気の高い職業ではあるのだが、非常に危険な仕事には変わりなく、個々の適性を管理しそれぞれの適性に合った討伐をランク付けして斡旋する冒険者ギルドと呼ばれる組織が世界に点在している。



 魔獣とは今や人々の雇用を生み経済を動かし糧となりうる存在であり、ある意味なくてはならない存在である。

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