第7話

 書類仕事を終え執務室をでると俺の警備名目で扉の前に待機していた近衛騎士団長のレーネがいた。



「お勤めご苦労様です、陛下。昼食の準備が整っているとのことです。お供いたします」


「ありがとう。でもこの前も言ったけど警備は他の騎士に任せていいよ。レーネもいろいろ忙しいでしょ?」


「な、なりません!...ごほん。失礼いたしました。陛下の御身をお守りするのが近衛騎士団団長の務め。それは何よりも優先されるべきなのです!」


「そ、そう?じゃあお願いするよ」


「ありがとうございます!」



 普段と変わらず佇まいは凛としていて、きりっとした顔をしているのだが、レーネのいう団長の務めができることがよっぽど嬉しいのか鼻歌でも歌いだしそうな雰囲気が全身から溢れていた。



 マークスはヤレヤレと呟いていた。



 まぁ、あの勇者のわがままに付き合わせられていたのだからうれしいのも納得か。



 レーネに勇者の警備にあたるように命令した時もよっぽど嫌だったのか普段忠実な彼女から猛反対されたが諫めてしぶしぶ了承させた。


 先日よりレーネが俺の警備にあたっている。


 先日勇者を牢にぶち込んだので勇者の警備はお役御免となった。


 別にレーネに警備してもらう必要もないと思っていたのだが本人たっての希望だったので苦労かけさせたこともあり承諾した。



 マークスとレーネを連れ立ってダイニングルームに向かい準備されていた昼食をとった。



「マークスこの後は何か予定って入ってたっけ?」


「本日は特に予定はございませんよ」


「わかった。じゃあこの後、自室でひと眠りするから誰も部屋に入ってこないようにお願いするよ」


「...かしこまりました。あぁ、ちょっとレーネ団長に伝達事項が残っておりますので陛下をお部屋までご案内した後すぐに会議室によろしいですか?」


「...承知した」



 そして自室に戻りレーネと別れ、部屋に待機していたメイドにもひと眠りすることを伝え部屋を出てもらって 人の気配が廊下になくなったのを確認した後部屋の鍵を内側からかけた。


 部屋に設置してある本棚の一番下の段の本を取り出し棚の奥に手を付けて魔力を少し流すとカチッという音とともに本棚が真ん中で観音開きの様に開き、その先に人一人がぎりぎり通れる大きさの通路が現れた。


 真っ暗な入り口に一歩足を踏み入れると一斉に通路の壁に灯りがともり淡い光で照らされた。


 通路の入り口すぐにおいてある大きな袋をあけそこから服を取り出した。


 街で買った平民がよく着ている服だ。


 手早くそれに着替え、今着ている服を代わりに袋に詰めた。


 壁に無造作に立てかけてある古びた皮の鞘に収まるショートソードと置いてある小さなバックを手に持ち通路を進んだ。


 ここは王族の緊急避難用の通路で城内の外に続いている。


 通路の存在は城内のほんの一部の人間しか知らない。


 くねくね曲がっていたり階段を下りたり上ったりと暫く歩いていると突き当りの壁に梯子がかかっている。


 梯子を上り天井を強く推すと天井がはずれ外に出れた。


 王都を囲む防壁の外に俺は降り立った。



「よし!今日もやりますか」

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